全知全能と興味
そうして、僕はリビングで晩御飯を食べた後、自室に戻ってから裏世界へと飛んだ。ソラやスイとも出来る日は挨拶程度に話しておきたいし、ラクリオにもゴーレムについて色々と相談して作りたい。明日は日曜だから、今日で原型を作って、明日で完成させるって感じでも良い筈だ。
尤も、ユモンの話を聞くにそろそろしっかり目に襲撃かけられそうで怖いけど……また徹夜して、そのせいでユモンに体を貸すようなことになるのも良く無いしね。一応、信用してはいたけどアレはリスクだった。
「と、言う訳でやって来たヨ」
僕が神樹の方に向かっていると、スイを見つけたので手を上げて挨拶をかましておいた。
「もう、緊張も無くなったみたいで結構ね」
「あはは、流石に慣れて来たみたいだよ。僕もだけど、木人の皆も」
異国というか異世界というか、そんな場所だから僕も最初の方は里の中を一人で歩くだけで緊張していた。木人から怯えられたり、恐れられたりみたいな部分もあったしね。ちょっと、僕も肩身を狭くしていた。
「確かにそうねー……まぁ、治がそんな感じだから、皆も畏怖の念とかあんまり無くなったんでしょうね」
「それなら良かったよ。正直、距離を感じてたから……出来るだけ、気楽に接しようって思いもあったんだよね」
やっぱり、造物主だの創造者だのが普通に自分の目の前を歩いてると怖いとは思われていたようで、距離を感じることも多かったのだが、少しずつ皆も普通に話してくれるようになった。何より、機嫌次第でどうとでもされる創造者というのはソラだって同じ立場である。だが、彼らはソラに対して愛を持っているし、信仰すらある。
勿論、信仰して欲しいとは思わないが、ソラのようにこの里というか、木人の全員に親愛を持ってもらえる存在になれれば嬉しいといった所である。
「で、どうするの? ご飯でも用意してあげましょうか?」
「あ、あはは、ご飯はもう食べちゃったんだよねぇ……」
「ふふ、知ってるわよ。大体、この時間に来た時はそうだものね。一応、聞いてみただけ」
こっちで振る舞われるご飯は実際美味しいから、食べたい気持ちもあるんだけど……僕がここに来る時は、大体全ての用事が終わった後の最後のフリーの時間なのである。異世界での冒険は夜になるまでにじゃないと出来ないし、現実では学校やら色々と用事がある。だから、しょうがなくいつもこの時間に僕は裏世界に来ているのだ。
「それじゃ、今日もソラ様と……」
「うん、話に来たよ。最近は色々あってね、話の話題も十分蓄えてる」
「それは良かったわ。で、その後はまたラクリオと土弄りでしょう?」
「そう、正解」
僕が答えると、スイは若干呆れたように笑った。
「好きねぇ、あなた達も……」
「ロマンだから、ゴーレムは。あと、今はそれだけじゃなくて実利的に必要だけど」
「あー、なんか言ってたわね……手伝ってあげましょうか?」
「ん、スイもゴーレム作れるの?」
そう尋ねると、スイは悩んでいるような声を上げた。
「んー……まぁ、作れると言えば作れるわよ。でも、ラクリオみたいなのは無理ねー」
「そっかぁ……」
僕がそう返すと、スイはふっと小さく笑って僕を睨んだ。
「今、じゃあ役に立たないじゃんって思ったでしょう?」
「い、いや、思ってないけど?」
「嘘吐きなさい。まぁ、心配しなくとも、手伝うってのはただゴーレムを作ること全体の話じゃないわ。私はラクリオよりもずっと魔術には長けてるから、そういう面で手伝えたら手伝ってあげるって意味よ」
「あ、なるほどね……安心したよ」
僕が言うと、スイはやっぱり思ってたんじゃないと目を細めた。
「そういう訳だから、私もラクリオの工房で待ってるわ。話が終わったらさっさと来なさいよ」
「はーい」
僕はスイに手を振り、神樹の方へと歩いて行った。
「さて、と……」
僕は神樹に手を触れて、見上げた。神秘的なオーラが滲み出し、圧倒的な生命力を感じるその樹から、僕は誘われるようにして……意識が吸い込まれていった。
そうして、入れ替わった視界には真っ白い世界が広がっていた。暖かな光で満ちているその世界には、当然のように女神の如く美しい女性が立っていた。
「や」
「待っていた。今日も」
琥珀色の瞳。完璧なまでに整った輪郭に、透き通るような白磁の肌。まるで彼女から光が溢れ出しているかのように、その姿は輝かしく見える。
「いやぁ、今日も色々あったよ……ソラは大丈夫? 退屈してなかった?」
「退屈は、していない。今日も、この世界を眺めていた」
ソラは遠くを見るような目をして、そう言った。
「最近は……木人達のしていることを、見ている」
「へぇ、楽しい?」
「……今までは、何の興味も無かった」
だけど、とソラは続ける。
「今は、見ていると楽しい……かも、知れない」
ソラの成長……というか、内面の変化に僕は微笑んだ。




