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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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201/207

全知全能と一線

 そうして、日も落ちて来たので解散した僕ら。直ぐに宿に帰り、そのまま地球へと帰って来た僕はそろそろ新たなゴーレムを作らなければと闘志を燃やそうとしていたところだった。が、出鼻をくじかれるように僕は部屋の中で姿を消して待っていたユモンに呼びかけられた。


「おい、治」


「ユモン、いきなり出てくるの止めてよ。ビックリするから」


「んだよ、扉から入って来ればいきなりじゃなくて満足するか?」


「それはそれで、家族にバレそうで嫌だね」


 そう返した僕にユモンは呆れたようにハッと息を吐いた。


「そうかよ。ま、んなこたぁどうでも良いんだけどな。ちょいと報告があるんだよ。緊急って程でもねぇっちゃねぇが……割と、大事めな報告だな」


「うん、聞くよ」


 僕はベッドに腰かけて、視線で僕の椅子に座るように促した。ユモンはどさっと椅子に腰を下ろし、キャスター付きの椅子なので、その勢いでぐるりと椅子は回転する。


「何だこの椅子……いや、とにかくだな、オレ様が話したかったことは、魔石を買いに田宇神の方にあの不良女と出てた時のことなんだが……」


 田宇神。前に、爆発事故だか何だかのニュースを見た気がする。殆どゴーストタウンみたいな場所だと思ってたんだけど、魔石が買える場所なんてあるとは……人気が無いから、裏の商売をするには持って来いってことなのかな。


「ま、端的に言えばその時に襲撃をかけられた。先ずは、田宇神に入るくらいの時だな。十人以上の敵に包囲されて襲われた」


「ふぅん、敵は強かった?」


「おいおい、ちょっとは心配くらいしねぇのかよ?」


「いや、だってユモンだし。それに、茜さんも強いからね。よっぽどの相手には遅れを取ることは無いでしょ。それに、もしそのレベルの相手が来てたならもっと深刻な態度で話してる筈だし」


 僕がそう言うと、ユモンはつまらなそうに舌打ちをした。


「そりゃそうだけどよ……ったく、話し甲斐が無い奴だぜェ」


「でも、興味はあるよ。どんな相手が来たのかとか、ユモンがどうやって戦ったのかなんかはね?」


 ユモンの戦闘に関しては、僕も結局のところまともに見たことは無いのである。一応戦ってたのは、安堂さんとの模擬戦くらいだろうか。アレも、全く以って本気は出して居ないだろうけど。


「敵は数はそこそこ居たが、まぁ全員ぶっ殺しておくことにした。オレ様だけでも余裕だったが、あの不良女もそこそこ使えたからな。オレ様は殆ど戦わずに、さぽーとに徹させて貰ったぜ。オレ様ァ、出来る男だからよォ」


「ユモン、意外と勿体振るよね。なんか、大胆に適当に全部薙ぎ倒しちゃえって感じの雰囲気なのに」


「オレ様のイメージどんだけ雑な奴なんだよ……向こうで一人前の悪魔だったオレ様ァ、簡単に力も正体も見せやしねぇくらいのことは常識として身に付いてんだよ」


「そうなんだ……」


 確かに、悪魔は口が上手いイメージがある。悪魔と悪魔の化かし合いの上では、簡単に真実ばかりを見せてしまう訳にはいかないんだろうか。


「秘密は多い方が良い、懐は晒さねぇに越したことはねェ。こんなの、悪魔の中じゃ常識だぜェ?」


「まぁ、一応は参考にしておくよ」


 悪魔の常識なんて知った所で、人間の僕にとってどの程度役に立つかは知らないけどもね。


「んでまぁ、見えない剣だの傷の悪化だのの魔術を食らったりもしたんだが、オレ様が傷を治したり、防御に寄ったバフをかけた後は、あの赤い不良女が炎の鞭で電撃をバチバチ放ちながら、バッタバッタと敵を薙ぎ倒して終わりだよ」


「ん、あんまり強く無かったの?」


「んにゃ、不良女が言うにはそこそこ程度の連中みたいだな。少なくとも訓練は積んでるし、連携もそれなりに出来てるってとこだ。けどまぁ、あの不良女やボスの男くらいの実力は全然ねェな。飽くまで、一兵士ってくらいに見えたぜ、オレ様にはなァ」


 なるほどね。逆に言えば、兵士と呼べる程の練度はあったってことか。ただ魔術を使えるだけの一般人とは……拳銃を持ってる方がマシみたいな魔術士では無かったってだけでも、十分に強いだろう。魔術は拳銃なんかと比べて汎用性や応用力がある分で優れているから、単に戦闘能力で拳銃の上を行っていればそれは相当の強さと言っても良い。だって、銃ってそもそもめっちゃ強いし。


「でな、ある程度数を減らしてら逃げ始めたんで、不良女と手分けして追撃しつつ、遠くからこっちを見てた敵の男も情報引っこ抜きつつぶち殺した」


「う、うん……」


 まぁ、仕方ないんだけど、めっちゃ殺してるなぁ。正当防衛……それも、自分より大幅に弱い仲間が狙われてるから、そのリスクを消す為に殺害のラインを超えられたのかな。流石に、そこら辺の不良に自分が襲われただけじゃ、殺しまでは出来ない……と、思う。


「どうやら、監視役っぽくてな。多少は情報も持ってたんで、向こうの狙いはこっちの戦力の調査で、あわよくば殺すつもりだったってことも分かったぜ」


「そっか……」


 結局のところ、ユモンにとっての不可抗力の殺しというのは、ユモンの価値観に寄ってしまう部分が大きいのだ。ここと比べれば殺伐の極みのような異世界を生き抜いて来たユモンにとって、殺すしかない線と言うのは低い場所に存在しているのかも知れない。

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