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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と希望

 魔力が身体に巡らされていく。既に強化している目を除く、全ての感覚が魔力によって強化されていく。それに気付いた大柄のゴーレムは腕を下げて重力負荷の空間を解き、狼型のゴーレムの介入を待つが……


「気付くのがおせぇよ」


 ウィーは強化されたあらゆる感覚によって、まるで曲芸の如き動きで狼のゴーレムの攻撃を躱し、触手の間を通り抜け、大柄なゴーレムの胴体を蹴りつけて跳ね上がると、空中でにやりと笑ってこう言った。


「『超感覚(オーバーセンス)』」


 瞬間、強化されていた感覚の全てが一つの術式化に統合され、通常の伝達能力を超越した処理で瞬間的に刺激を知覚させる状態に入った。


「ハハッ、全部見えてるんだよッ!」


 ウィーは空中で飛来する触手を躱し、掴み、ロープのように利用して更に避ける。着地した瞬間を狙って飛び込んで来た狼のゴーレムは振るわれる石の鉤爪を完璧な角度で蹴って無力化し、それからくるりと地面に着地した。


「これが、治の教えた術か……凄まじいな」


「感覚強化は単なる身体強化と同じ単純に魔力強化で……術式の方はそれを管理……最適化する……」


 感心を通り越したような、強い視線でウィーを見ているアシラに、ぶつぶつと何かを呟きながらじーっと観察するナーシャ。

 視線をウィーに戻すと、トーテムポール型のゴーレムが本気を出して数十本となった触手と、体内に貯めた魔力を消費して更なる加速を得ている狼のゴーレムに猛攻を仕掛けられていた。


「そっちも本気って訳か?」


 だが、それでもウィーは常に敵の攻撃を紙一重で避け続ける。


「もう、当たる訳もねぇけどな」


 そこに走って来た大柄なゴーレムが蹴ろうとしたが、ウィーは寧ろその足に飛び乗ってそのまま肩まで飛び移った。


「さぁ、行くぜ」


 魔力が身体全体に行き渡る。身体強化だ。しかし、前回とは違って術式に追加の魔力をつぎ込んで一時的に処理能力を向上させている為に、気絶はしていないようだった。


「処刑の時間だ」


 ウィーの手刀が、大柄なゴーレムの頭に直撃する。それだけで、頭から股の辺りまでに大きな亀裂が走り、一拍遅れて全体にも罅が入り、ウィーが大柄なゴーレムを足場に地面に跳ぶと、その体は耐え切れずにボロボロと崩れ落ちた。


「さぁ、次は……」


 殺到する触手の波。その中を掻い潜り、そこに飛び込んで来た狼のゴーレムにウィーはアッパーを食らわせた。それによって頭が弾け飛び、胴体だけが残る。


「っと、コアはそれか」


 ウィーは残った胴体に手を突っ込んで中に埋め込まれていたコアを握り潰して砕いた。


「まぁ、ぶっちゃけ今のおれなら掴まれてもなんだって話だけどな……」


 ウィーは懐からナイフを抜き出すと、殺到する触手を切り裂きながらトーテムポール型のゴーレムの方へと猛進し始めた。


「折角なら、ノーミスだよなッ!」


 壁のように立ち塞がる触手の全てを切り開き、そして移動能力に乏しいトーテムポール型のゴーレムの下に辿り着いたウィーは、そのナイフを突き出して……


「コアの位置も、余裕で見えんぞ」


 たった一撃で、コアを貫いて破壊した。


「っし、これでおれの勝ちだなっ!」


 崩れ落ちるトーテムポール型のゴーレムに、ウィーは僕らの方に自慢げな笑みを浮かべて振り返り、超感覚や魔力強化状態を解いた。


「うっ、げ……やべぇ、さっきとの差で気持ち悪ぃ」


「あ、そうだよ。超感覚を切った後は、ギャップで物凄く気持ち悪くなるらしいね。慣れたら大丈夫だと思うけど」


 ウィーははぁと溜息を吐くと、何度か深く深呼吸をした後で僕の方を向き、そして若干やつれたような顔に無理やり笑みを浮かべ直した。


「お、おれの勝ちだぜっ! どうだよっ!?」


「うん……まぁ、そうだね。僕の負けかも」


 若干納得出来ない部分もあるが、僕は一先ずは頷いておいた。別に、これは単なる試作品というか実験体というかであって、本当に僕が本気で作れば、ウィーだってきっと勝つのは難しいゴーレムが作れる筈である。超感覚+身体強化の状態のウィーに……それも、今後訓練を重ねてその扱いが上手くなっていったウィーに勝てるかは、完全に確信を持ってまでは言えないけど。

 いや、まぁでも耐久に優れた持久戦タイプにすれば、魔力切れを狙って勝てるかな。仲間相手に完全にメタ張って作るのもかなり情けない話ではあるけど。


「ほらな、どうだよっ! おれ、めっちゃ強くなっただろ!」


「あぁ、本当に強くなったよ。見違える、という言葉では済まされないくらいに」


「私も早く使いたい。治、教えて欲しい」


 いつもの如くがっついてくるナーシャに僕が苦笑いを浮かべていたのとは対照的に、アシラは真剣な表情を浮かべていた。


「……この力を、僕ら全員が習得すれば魔族にも勝てるかも知れない。いや、勝てるだろう。確実に」


 その表情に浮かぶのは、希望や喜びというよりも、より強い覚悟のようなものであった。

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