第二話
視界いっぱいに広がる海を眺め、もしや自分は異世界に来てしまったのではないだろうか?
という可能性と、思い当たる一つの話を振り返ってからというものの、僕の考えが真実であるのか否か、ひたすら答えを求めて行動した。
それは簡単な頬っぺたつねりから、少し高いところから落ちてみるだなんて危険なこと、はたまた特殊な力が使えたり?なんて思ってあれこれやっていると、まさかの事実に気が付いた。
みんな知ってるゲームのお約束にして異世界物での定番の言葉。勘のいいひとなら既に気づいたと思うんだけど...そう、「ステータスオープン。」だよ。
一目見ただけで自分の体の状態や能力値、種族や年齢なんて言った個人の情報までが分かる万能のやつだ。
いちどは言ってみたかったんだ!
どうやら僕の周りには生物の気配が感じられなかったし、頭に浮かんだ瞬間からすごく言いたくてうずうずしてて...だから言ってみた!
そしたら出た!
しかもご丁寧に台座付きでね。
いやぁこの世界の神様はすごく丁寧な方なんだね。
こんな自分でもよくわからない存在のためによくここまでしてくれるね(上から目線)。
まぁともあれ、まさかの事実っていうのはそのステータスにあったんだ。
それがこれ
種族:神の見習い(人間)
年齢:10歳
性別:男
攻撃力:25
防御力:10
体力:10
魔力:無限‐1
スキル:治癒ex、建築ex、裁縫Max
パッシブスキル:言語理解、自由、神々の愛
称号:異世界よりの冒険者
ほら。
なんか内容がとんでもないの。
攻撃力や防御力はまぁいいとして、魔力:無限‐1って何よぉ。
スキルもパッシブもめちゃくちゃだよ。
それに、僕はなかなかに身長もあったと思うのだけれどなぜか小さくなっている。
どこかで鏡の代わりになるものでも見つかればと思うけれど...
誰がこんなステータスにしてんだろうか?
いや、こんなこと考えたって仕方ないよね。
僕はまだこの世界に来たばっかりなんだから、そんなの考えたって答えなんかでやしない。
それに、どこかの神様は僕の願いを聞き入れてくれた。
それゆえに今の新しい人生があるんだ。
だから僕は精一杯生きよう。
前世で悩んだ数々と、僕はきっと今無関係だ。
このステータスが何の誇張もない現実であるならばぼくはきっとその悉くを解決できる。
もう悩んだりはしないさ。
さぁ、ここでいつまでも海を眺めているのもいいけど、まずは食べ物を探さなくちゃ。
実はさっき、自分が異世界に来たのかどうかを確認するための一環で、少し背の高い山があったから上ってあたりを見回してみたんだけど、少し大きな町が見えたからそこに向かって歩いて行こうと思う。
ただまぁ、僕ってば方向音痴だから全く知らない場所にたどり着くかもしれないけどね。
それでもいい。
僕はこの世界の初心者なのだ。
だからとりあえず歩いてみようと思う。
体を動かせば、景色を眺めれば、いずれたどり着く街へ向けて思いを馳せれば。
訳も分からず流れ続けるこの涙は、寂しさに震えるこの心は
いつかとまってくれるだろうか?
ルカはそんなことを考えながら街へ向けて歩みだすのであった。