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政治経済エッセイ

内部留保は結局「悪」なのか?

作者: 中将

筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


 今回は「内部留保」を詳しく深掘りをしていこうと思います。



◇内部留保は“特定不能”



質問者:

 高市さんが内部留保の使途の明細を明らかにする規定を創設という事を自民党総裁選の公約に掲げているのですが……。



筆者:

 僕は中小企業の支援業務をやっているので、規模は小さいながらも会社の「内部留保」が何たるかを理解しているつもりです。


 まず高市氏が少し勘違いしているというか実態と乖離していると思えるのが、


 「内部留保は特定不能」


 ということです。



質問者:

 どういうことなんでしょうか?



筆者:

 前提のお話として、内部留保と言うのは言わば費用を払って残った利益から税金を払った残りの金額のことを言います。

 簿記会計上では「利益剰余金」と言われるものです。


 以下の図はmanaboxと言うサイトから引用させてもらった図なのですが、


挿絵(By みてみん)


 何となく皆さんのイメージだと現預金として残っていると思いがちですが、

 「費用にならない出費」というのが多くあり、そんなに現金が多く残っていないところが多いです。

 実際のところはこのように設備投資や有価証券に多くは変換されています。

 


 更に、「利益がどの金額である」と特定することは困難なんですよ。

 利益の金額分のみを口座ごとに分けるということは無いですからね。


 つまり利益の特定が出来なければ「使途を明細にする」という事は困難であると言えるのです。



質問者:

 しかし、政治資金については使途を公開していることについてはどうなんですか?



筆者:

 政治資金は税制上の優遇面が多く、普通の収支とは違い別個に扱わなければ後で不正に使われたかどうかの審査することが出来ないからです。そのために収入(ほとんどが利益だろうが)と支出を特定しておく必要があります。


 政治資金の不透明なお金が批判されていることを踏まえて、

「使途を明瞭にすることが良いことだ」と思って高市氏は発言されているのかもしれないのですが、実情とは乖離していると言わざるを得ません。


 貸借対照表を厳密に見て増えた金額を見れば追えないことは無いと思いますけど、その増えた金額は別に利益の代わりに増えたとも限りません。

 そのために、仕訳を一つ一つ追わなくてはいけなくなり仕訳数が多い会社であればあるほど大変な手間になります。


 つまり、この案と言うのは事務の業務量を増やすだけの「生産性の無い仕事」が大企業に増えるだけだと僕は考えます。


 

◇内部留保「そのもの」は悪ではないし、累積していくのは当然である



質問者:

 内部留保は累積していくと日本にとって良くないのでしょうか?



筆者:

 内部留保が毎年更新され(今年は539兆円)ていることが何だか新聞では問題視されている感じがするのは違和感があります。


 「内部留保がマイナス」になる事態と言うのはかなり会社にとってマズい状況です。

 赤字になるという事ですからつまり資産の減少を意味するわけです。


 これに課税しようという案が巷にあるようですが、それは問題外です。

 先ほども言いました通り、現金で存在しているとは限らず他の投資などに向かっている可能性があるために、「税金を払うために黒字の工場を売り払う」などと言った恐ろしいことになりかねません。


 また内部留保は「企業価値を評価」にとってプラスの役割を果たすこともあります。


 そして一番の重要な役割があります。


 それは不景気への対応です。



質問者:

 どういうことですか?



筆者:

 新型コロナの状況でも全く企業を救済しなかったんですね。

 そこを内部留保が企業を破産に追い込まなかった要因の一つでもあります。


 大企業ほど恩恵が薄い支援金のみだったことから、リスクを踏まえて現預金を持っておくという事も理解はできるということです。


 万一に備える現金はどの程度が適切なのかは業界にもよりますし、


※例えばゲーム開発業界ではハードウェアが失敗した場合のリスクに備えて任天堂などは現預金が非常に多い業界もあります。

 

「使途の公開」と言う無駄な手間を取った上で、基準を決めるのも大変な上に「追及をする」ことになるであろう高市氏の案と言うのは賛同できないという事です。



◇内部留保に至る“過程”が非常にマズイ



質問者:

 そうなると内部留保って一体何が問題なんでしょうか?


 

筆者:

 僕は内部留保の「存在」に問題があるのではなく形成までの「過程」に問題があると思ってます。

 

 利益が原資である内部留保は本来給料になってもおかしくは無かったのですが、


 労働分配率は23年度は過去最低を更新しています。


 かといって国内投資は2019年の水準に戻っただけ「企業が利益を上げてもトリクルダウンが起きていない」状態にあります。


 労働分配率が高かったり国内設備投資をバンバンやって内部留保が増えているのであれば全く問題は無いのですが、現実は全くそうなっていないという事です。


 現金で寝かせていれば株主から批判が来ますから「日本の利益は海外投資をしている」ことがほとんどだと僕は考えています。



◇ではどうしたらこの状況が是正されるか?



質問者:

 なるほど、大企業が儲けてもこの10年以上経済は発展していませんからね……。


 ではどうしたらこの歪んだ構造が是正されるんでしょうか?



筆者:

 結局のところ国内投資に内部留保が投入されていないのが最大の問題だと思っています。


 国内投資を利益増加分の一定割合分より投資しなければ追加の法人税を課すぐらいのことをしてトリクルダウンを促進させなくてはいけません。

 海外に投資する分が課税されるぐらいなら……という事で国内に投資させるという事です。


 こういう行動を制限するための増税は本来あるべき税の役割を果たしていると言えます。


 現在は「設備投資で減税又は補助金」と言う状況なので、これは海外に流れるのを防げないので、あまりよろしくないと言えるでしょう。



質問者:

 法人増税で給料は増えるのでしょうか?



筆者:

 「法人税を支払うぐらいなら従業員の待遇を上げるか」と言うマインドが出てくるので給料は増える可能性はあると思っています。


 ただし、企業の設備投資の面では不安が出てきます。日本国内投資における設備投資においては金利が限りなくゼロになるなどのそう言った融資方法が無ければ長期的に見れば日本は良くならないのでは? と思います。仮に行うとするのであれば複合的な政策が必要でしょう。


 ただ、この社会が狂っているのは給料をロクに上げず、内部留保を国内投資しない上に「消費税増税をして社会保障の維持を」と声高に訴えている経団連が存在していることです。


 消費増税は輸出企業であれば還付を受けられるので「ノーダメージ」に近い上にライバルである中小企業が消えてくれる可能性が上がるために大企業は「推進し得」の状態なのです。


 消費増税をやるぐらいなら先に法人増税をやった方が良いに決まっています。


 しかし僕はどちらも長期的に停滞する日本にとってみれば良くならないと考えています。


「どちらも増税しない」という事で庶民側も大企業側もまとまって「税は財源では無い」と主張することで国に対抗して欲しいように思いますね。

 特に消費税は減税ないしは廃止するべきですけどね。



質問者:

 しかしどうして「内部留保が悪」のようなイメージが付いて回っているのでしょうか……。


 

筆者:

 ここからは完全に憶測ではありますが、「内部留保は悪」としているのは「全て現預金」だと思い込んでいる「勘違い」である可能性があります。


 

質問者:

 確かに全部現金なら批判されそうですけど、そんな会社はそうそう無さそうですからね……。



筆者:

 後は外国などの投資家が「更に配当金に充てろ」と暗に新聞社などに圧力をかけている可能性はあります。


 配当金の金額は32.4兆円と20年前の5倍、10年前の2.4倍と増加の一途をたどっていますが投資家から見るとまだまだ足りないのでしょう。



質問者:

 人間の欲望は底なしという事でしょうか……。



筆者:

 一つ高級な商品を手に入れてしまうと「それに合わせて」買い続けちゃうってことなんでしょうね。


 という事でここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回は内部留保は存在そのものは良いことであり「その過程」に問題があるので、設備投資を国内に行うための税制を行うべきであり、法人税や消費税は上げない(消費税は減税)するべきだという事をお伝えしました。


 今後もこのような政治・経済、マスコミの問題について個人的な考えを述べていきますのでどうぞご覧ください。

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― 新着の感想 ―
「内部留保」という詐称 「内部留保=現金の山」だと思ってた人、手を挙げてください。はい、私です。 なんとなくモヤモヤしてたけど、ちゃんと言葉にできなかったことを、 めちゃくちゃわかりやすく、しかも…
[一言] 内部留保は本当に給料に使って経営者などへの異常な配当もやめるべきだとは思いますね。確かに経営者は責任はあるでしょうが替えの利くべき存在にしておいたほうが円滑に回るのも事実なので。 個人的に…
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