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こけしん坊

作者: 青空あかな

 あんたさ、“こけしん坊”って知ってる?


 いや、“こけし”じゃなくて、“こけしん坊”だよ。

 ……ああ、やっぱり聞いたことない?。

 まぁ、こんな山奥の村にしかないだろうね、そんな変な物は。

 言ってしまえばただの“こけし”なんだけど、普通の“こけし”と違うのはね、頭の後ろにも顔があるんだよ。

 ほら、こんな風に。

 ……はは、気持ち悪いだろ。

 昔は村の特産品にしようって話もあったんだけどね、なるわけないだろっての。

 誰も買わないよ、こんな気持ち悪いの。

 思った通り、外から来た人間は一人も買わなかったね。

 買うのはいつも貧乏な村人だけ。

 そんなんじゃ続く物も続かない。

 そのうち一軒二軒と工房も消えて行ったよ。

 今ではこの辺りでも作ってる人はいないんじゃないかな。

 十年くらい前までは、爺さん婆さんがろくろ回してるの見たことあるけどさ。

 名前の由来はそうだねぇ……“こけし”と“辛抱”をかけた……うん、言葉遊びみたいなもんだよ。


 どうして顔が二つもあるのか?

 そりゃあ、表と裏で二回楽しめるからだよ。

 そのまんまだね。

 浅ましいって言う人間もいるけど、俺はお得だと思うよ?

 だって、子供が新しいのねだっても買わなくていいじゃん。

 反対側の顔見てなさい、飽きたらまた表の顔見なさい、そうすればずっと楽しんでいられるでしょ? ってね。

 そうすりゃ子供も逆らえないだろうよ。

 実際、そうやって言いくるめられた子供はたくさんいたな。

 うまく作られてるよねぇ。

 昔ここに住んでた人間は、子供の駄々が面倒なことをちゃんとわかってたんだ。

 おまけに色塗らない分節約もできるよね。

 子供の駄々は誤魔化せるし、金も浮く。

 まぁ、俺が言うのもなんだけど、せこい人間が多かったんだろうよ。

 そこら辺からも村の風土がわかるんじゃないかな。


 ただ、裏の顔は服着てないんだけどね。

 そう、“こけしん坊”の。

 裸のまんま。

 木が剥き出し。

 ……うん、これもそうだし、それもそう。

 うちにあるのは全部服着てないね。

 というか、“こけしん坊”は表しか服着てないと思うよ。

 他の地域で作られてるのは知らないけど。

 ……意味?

 あぁ、意味はちゃんとあるよ。

 いや、意味というか願いだね、願い。

 暑くても寒くても辛くても、どんなときでも辛抱できるように……って、願いが込められているんだと。

 ここら辺は昔から貧乏だからさ。

 子供に服を買ってやることもできない家が多かったんだよ。

 今でもそうなんだけどね。

 だから、どの家にも必ず一つはあったよ、“こけしん坊”は。

 兄弟姉妹がいるとこは、むしろこういうおもちゃがあって良かっただろうね。

 喧嘩しなくて済むから。


 俺ん家も九人兄弟だったんだけど、不思議とおもちゃの取り合いはなかったな。

 雨の日とかはずーっと、みんなで“こけしん坊”見てるの。

 貧乏な家でも、“こけしん坊”を見ていると辛抱できる気がしたんだよね。

 そう思うと、この辺りに古くから根付いているんだなって、感じるよ。

 

 色々と好き勝手言ってきたけど、なんだかんだ“こけしん坊”には助けられてるね。

 こう見えても毎日生きるのに必死でさ。

 仏滅が来る度一個ずつ増えるんだよ。

 ……何がって、“こけしん坊”に決まってるでしょ。

 そこの倉庫なんか、もういっぱいだよ。

 それでさ、あんたの後ろにも“こけしん坊”がたくさんあるだろ。

 朝起きるとさ。

 見てんだよ。

 俺を。

 ずらーって並んでさ。

 裏側の服着てない方で。

 

 きっと、服着たいんだろうね。

 生まれてから一度も着たことがないんだから。

 暑くても寒くてもずーっとそのまま。

 いや、俺だって何度も色塗ろうと思ったよ。

 そうしたら消えてくれる気がするしな。

 画材やらなんやら揃えたよ。

 でもさ、怖くて色なんか塗れないんだよね。


 この生活に辛抱できなくなる気がしてさ。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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