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9話 魔導士の国で

 

 魔法王国ゴアは2000年以上前に北大陸に建国され、大陸中に領土を拡大させていった強大な国家である。


 王国を名乗ったのは魔法を尊いものとし、魔法を使えない民を隷属させるための方便に過ぎない。支配者としての正統性を示す手段でしかなかった。しかしながら実際に権力を握っているのは国王ではなく、それを支える五大貴族であることは当時から公然の秘密であった。


 そして五大貴族の一つスカイ家では、当主エルジュに対して17歳の嫡男フレッドが厳しい意見をぶつけていた。


「父上!今、軍を動かさなくてどうするのです。このままでは我らはGAにすり潰されてしまいます!」

「口を慎め、フレッド。だからこそ魔導士を鍛え上げる時間が必要なのだ」


「それでは間に合わないと申し上げているのです!今すぐにでもグローリアに攻め込み、例の船の奪取、もしくは破壊を試みるべきです。例え多くの魔導士の命を失ったとしても……」


「その結果、魔水晶を失った者たちはどうする?これから永遠に魔法を使えなくなるのだぞ!」

「受け入れてもらうしかありません。そうでなければ敗北するだけです」


 ゴアの民は生身で魔法が使えるわけではない。ゴアの首都エウレルの地下にある巨大な魔水晶にアクセスすることで魔法は発動できるのだ。アクセスするために必要なのが各家庭に配られている親指サイズの魔水晶だった。それは貴族であっても同様だ。貴族は一般人よりも規模の大きい魔法を使うことが認められているが、仕組み自体は変わらない。


 そして魔水晶が壊れたならば一生魔法が使えなくなってしまう。生産する能力がないからだ。彼らが存在した時から魔水晶もまた存在し、魔法を操ってきた。そんな彼らにとって魔法とは常に隣にあるものであり、自らが他者よりも優れていると示すものであった。


 よって、一部の革新的な家庭を除いて、配られた水晶以上の家族を増やすことはなく、多少の幅はあるものの基本的に人口は水晶の数で頭打ちとなった。反対にGAは人口増加を是とし、また戦力も増強していった。


「ならん!魔法の無い生活など()()()()我らが民がそんなことを認めるはずがない!」

「…………」


 父の言葉にフレッドは同意せざるを得なかった。自分たちがいつまでも優位な立場にいると過信している、現状が見えていない多くの民を自分の目で見てきたからだ。だがここで引き下がるわけにはいかない。彼とて国のためを思って意見具申しているのだ。


「ならば、せめて講和の道を模索するべきです。ここで足踏みしてもGAの戦力増加を招くだけです!」


「誇りを失い、そこまで堕ちたか!もうよい、貴様の顔など見たくない。今すぐ出て行け!」

「ぐっ。失礼します」


 そうしてフレッドはスカイ家を追い出されることになった。だが諦めたわけではない。フレッドが家を出ようとすると、遊びに来ていた親戚の女の子リリ・サルバンが声をかけた。


「フレッドおじたん。おでかけなの?もうお外真っ暗よ?」


 3歳の姪のおじたんという言葉にガックリしたが、気を取り直し視線を合わせて語りかけた。


「おじさんはこれからお友達を探しに行くんだよ。一緒の道を歩んでくれる友達をね……リリも一緒に来るかい?」


 リリが首を横に振るとフレッドは微笑んで空高く舞い上がっていった。

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