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漆黒の翼は闇夜に輝く  作者: 犬猫パンダマン/yama(小悪党の部下B)
4章 魔法王国の崩壊、そして……
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71話 思惑

 

 魔法王国の政治中枢とは別にGA総司令グレイク・マッダスとの交渉を成功させたフレッド・スカイには戦争終結に向けて、密かにやらなければならないことがあった。


 戦争に突き進もうとするスカイ家とケプロス家の魔導士抹殺である。


 彼はグレイクにも伝えていない事があった。それは魔導士が魔法を使うためにアクセスする巨大な水晶は2つ存在している、という事実だった。


 多くの魔導士たち(貴族と平民)がアクセスしているのは首都エウレルにある巨大な水晶だが、実は両家だけは別の場所にある水晶にアクセスして魔法を使っているのだ。それは一族の者以外誰も知らない秘密であった。


 彼らがアクセスする水晶は空の上、衛星軌道にある人工衛星の中に存在している。現在の技術力では発見できたとしても破壊する事はできない。2000年以上前から存在する遺物である。


 そういった理由があり、例えエウレルの水晶を破壊しても主戦派が魔法を使えるという状況は続いてしまう。彼らが敗戦後にテロリストになり、各地で暴れまわる可能性もある。魔法を使えなくなった元魔導士たちの立場がさらに悪くなってしまうだろう。


 だからこそ、フレッドたちは両家の主戦派を抹殺、あるいは所持する魔水晶を全て破壊しなければならないのだ。自分たちの持つ魔水晶の破壊は世界の行く末を見てからでも遅くはない。フレッドはそう考えていた。


 そうして戦後も魔法が使える事を隠しながら、同胞たちを見守り続ける。事が露呈すれば同胞からの非難も免れない。皆の魔法を消しておきながら、自分の手元には魔法を残すなんてことは許されないだろう。戦後は姿を消し、元魔導士たちを陰から助ける。それがフレッドの決意だった。


 何度かの交渉を経て、未来を見据えるグレイクならばこの話を受け入れてくれるかもしれない。そのような手ごたえは掴んでいた。遥か未来の技術力によって発生する魔法のプログラムは今後の科学発展に大いに寄与するからだ。


 将来的な宇宙進出を目指すグレイクの方針にはフレッドも賛同する。異星からの侵略者がいつやってくるかも分からない状況だ。


 だが今後も秘密を伝えるつもりはない。グレイクのことは信用できても、彼の後継者はどうするかが分からないからだ。これまで魔導士たちが過去にしてきたことを考えれば、魔法を失ったからといって、すぐに受け入れられるはずがない。戦争に負けたとしても、抑止力としての魔法を失うわけにはいかないのだ。世代を超え、魔導士の時代を知らない者が増えてくるのを待つほかない。


 フレッドの決意は固まっているものの、頭を悩ませることは他にもあった。中でも重要なのが戦力面での心もとなさだった。


 5大貴族の両家の抹殺は自分たちだけで進めるべきこと。戦後に向けてグレイクに借りをつくり過ぎるのも良くないと考えていた。


 だが自分たち反主流派だけで事をなすには手駒が少なすぎた。徹底抗戦を唱えるケプロス家とスカイ家。二つの貴族に対応するには全戦力を向けてもまだ足りない。特にカイル・ケプロスと戦うとなると相当な戦力が必要となる。


 襲撃タイミングはGA軍がエウレルの大水晶を破壊する直前。魔導士を殺すには拳銃一丁あれば充分だが、万が一にも逃すわけにはいかないため、魔法の力を使う必要もあるだろう。そして同族殺しが公で魔法を使う最後の機会となる。


 フレッド自身はその戦いに参加する事は出来ない。逃げられることを想定して各地で同時に襲撃する必要があり、自分は親殺しという業を背負う覚悟を決めていたからだ。徹底抗戦を唱える父エルジュを逃がせば、例え魔水晶がなくともGAに対して牙をむく。フレッドはそう確信していた。そして考えに賛同してくれたとはいえ、まだ若い姪のリリ・サルバンにその役目を任すわけにはいかなかった。


「やはりレイダーの手を借りるしかないか……」


 レイダーならば魔導士相手に大人数で対応する必要はない。いきなり共闘することはできないだろうし、任せきりという訳にはいかないが、戦いのお膳立てぐらいなら弱い魔導士でもできるだろう。それで戦力的には間に合うはずだ。


 フレッドの頭に浮かんだのは、先日出会った黒衣の青年だった。

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