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最終話 闇夜を照らす輝き

 

 戦いは終わった。


 トトが乗ってきた最後の『アーレの光』はサラとリブナによって自爆した。

 これにより、メタリア人の機体は全て破壊されたことになる。


 カーラ・マーラたちはGA(グラン・アーレ)の首都グローリアに向かい、フランク・マクドネルの救出に成功。副司令だったフランクは司令となることを固辞したものの、混乱を避ける為に指揮系統を握って全軍に停戦命令を出した。ザイドロフの命令でライガルリリーやシルワールで残党狩りをしていたナイトレイダーたちも帰路に就いていった。


 その後、各国は条約を結び直して未来に向けて進むことに合意した。これにより惑星アーレに2隻の戦艦が墜落したことによって始まった二つの戦乱は収束したことになる。フランクは軍事政権を解体し、GAは民主主義国家として生まれ変わっていく。


 レイヴンはナナやサラと共に人々の前から姿を消してアルタカトへ移り住んだ。それを知るのはジルなど僅かな者だけだった。その後情勢が落ち着いたのを確認して故郷へ、そこで余生を過ごした。


 レイヴンが身を隠していた頃、リードロイアで『アーレの光』の破壊に尽力したレイダーたちが相次いで行方不明となる事件が発生していた。これは依然として強い力を誇るGAの差し金によるものだった。バレロ壊滅の責任を全てトト・インサニアに押し付け、それを解決したのもGAのナイトレイダーであると発表された。


 GAは被害に遭ったクシャラを中心に見舞い金を配って各国議員を買収。メタリア人の細胞によって意識を支配されたザイドロフ司令の起こした戦争時のことも書き換えられていった。


 時代は進み、改竄された歴史は事実として受け入れられていく。


 そして時は流れた。


 …………


 ヤーブロム星系では、ある1隻の宇宙船が旅していた。


 その船にはハマト皇国の母星に向かう惑星アーレからの留学生たちが搭乗していた。彼らの多くはこれからのアーレを担う若者たちだ。故郷を離れ、親元を離れて宇宙を旅する彼らは希望と不安で一杯だった。特に6歳になったばかり少女はそれが顕著で落ち着きがない。ただ、付き添いの先生の話す物語を聞いていると自然と興味をもって聞いてくれた。


「ねえねえ、そのあとレイヴンはどうなったの?」

「うん。レイヴンたちは平和に暮らしてたんだけどね。また戦う事になったのよ」

「どうして?」


「復讐に燃えるリタ・ミストリアがテロリストとして暴れまわったの。彼女にとっては世界の全てが敵のように見えたのかもしれないわね。GAだけじゃなく世界中が混乱したわ」


「あっ、分かった。それをレイヴンが止めたんでしょ」

「正解。彼は皆を守るために立ち上がったのよ」

「すごいな~、かっこいいな~」


 その時、年上の男の子たちが少女の横を通った。


「そんな法螺(ほら)話信じてるのかよ。教科書にも歴史書にも1ページだって載ってないぜ」


 少女はムッとして睨み返した。


「嘘じゃないもん。この本に書いてあるもん」

「絵本じゃん」


 そして笑いながら去っていく。

 少女は涙目になりながら先生に抱きついた。


「先生、嘘じゃないよね?」

「ええ、もちろんそうよ。ほら、もうすぐ見えてくる頃ですよ。外を見てごらんなさい」


 ハマト皇国の母星からは、船を歓迎するようにホログラムが映しだされていた。


「とっても綺麗だね……でもちょっと暗くて怖いかも」


 先生は優しく微笑んだ。


「あらっ、あなたの好きなレイヴンだって真っ黒よ?」

「……うん! それなら怖くないね!」



 ………… 



 彼はライバルとの決着をつけた後、表舞台に姿を現すことはなかった。


 リタ・ミストリアを倒した時も静かに姿を消した。

 家族や仲間と共に穏やかに過ごす事を望んだ。

 名声は残らず、手柄は全てナイトレイダーのものになった。


 そうしてGAは再び権力を強め、広大な領土故に各地域が独立するまで権勢を誇った。


 だが人々は忘れない。

 歴史の裏で戦った者を。

 苦しみながらも、立ち上がった者のことを。


 その者は欺瞞に満ちた光の中でも暗闇から人々を照らし続け、畏敬の念を込めてこう呼ばれた。


 漆黒の翼と。

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