表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/125

118話 エッジの実力

 

 リードロイアに向かったクシャラチームを中心にした部隊は規模を大きくしていた。『アーレの光』を使用されたことを知った他の2国からも僅かばかりだが合流したのだ。その数は決して多いとは言えないがレイダーたちを勇気づけた。


 住民たちの家は壊され、町は要塞化が進んでいる。常に東側国家に照準を合わせて脅すためであり、許せることではない。


 そしてGAのナイトレイダーたちとの交戦が開始された。


 数の上では勝っているが、個人の質は劣る。

 彼らはそれを破るために部隊を分けた。


 まずリードロイアにいるナイトレイダーを分散させるべく挑発を繰り返す。

 ハーフレイダーたちが中心になり、警戒を外に広げて精鋭部隊が突入する。

 それが彼らの作戦だった。


「ナイトレイダーの動きが悪いな……」


 エッジは戦場から少し離れた場所で狙撃を繰り返しながら呟いた。

 ナイトレイダーにしても宣戦布告無しの砲撃には動揺したのだろう。

 自国の正義を疑ってるのかもしれない。

 怒りに燃える部隊を相手に尻込みしているような気もする。

 だがそれもすぐに元に戻るだろう。


 彼らは百戦錬磨のナイトレイダーであり、一時的な混乱があろうとも鍛え上げた精神力で持ち直すはずだ。元々の実力は自分たちを越えている。エッジはそれまでの間に1人でも多くの敵レイダーを倒すべく狙撃を続けた。


 ふと、エッジの手が止まった。


「あれは……ヒメタン?」


 周りを鼓舞しながら必死に戦い続ける同級生。なんとなく昔の面影がある。

 エッジは訓練学校を卒業してからも少しだけヒメタンと手紙のやりとりをしていた。


 レイヴンたちの情報は全て彼女を通して知った。

 それが師匠と出会い、消息を絶ったことで疎遠になってしまった。


「ったく、男勝りなところは変わってないな」


 ヒメタンはリードロイア警備隊の副長となっており、それにふさわしい戦いぶりを見せていた。警備隊は彼女を中心に立て直しを図る。そこに襲い掛かるはサラを少し離れた場所に降ろしてきたリリ・サルバン、最後の魔導士だった。


 昔の仲間には死んでほしくない。エッジはそう思いつつも自分のやるべきことに集中していた。


 その時突然辺りが暗くなった。

 雲一つない快晴だったはずなのに。

 エッジは空を確認するよりも早くその場を離れた。


「あらぁ、随分勘のいい子ね」


 彼の前に現れたのはリードロイア警備隊長であり、レイヴンの上司でもあったカーラ・マーラだった。エッジはその姿に驚いた。蝶々のように羽ばたき、空を飛ぶ姿。カーラはメタリアルを極限まで薄めて作った羽を背中から生やしていた。彼女は3度目の手術を受け、それによって余ったメタリアルで羽を再現していた。そして器用に動かして空まで飛んでいる。


 エッジはムキムキの体で空を飛ぶカーラをちょっとだけ気持ち悪く感じた。

 それを表情から感じ取ったカーラが攻撃を仕掛けてくる。


「この美しさが分からないなんて修正よっ!!」

「ッ?! こいつは化け物か!!」


 カーラの姿のことではない。彼女が放った蹴りの威力のことだ。先程までエッジがいた建物が斜めに切り取られるように落下していった。


 エッジは飛び降りて身を隠す。

 高所での戦いでは圧倒的に不利だ。

 カーラが上から追ってくる。


 カーラとしても遠くから射撃するエッジの右腕を見ていたので距離を取るのは良くないと感じていた。粉塵に紛れて移動したエッジを探し出す。


「見つけたわっ!!」


 そして狙いを付けられないように蛇行しながら降下。

 エッジが遅れて振り向いて右腕を向けた。


 何かがおかしい……


 カーラはエッジの姿に違和感を覚えた。


「もしかして、その腕?!」


 エッジは狙撃銃の形をしていた右腕を散弾銃に変形させて弾を詰め直していた。遠距離ならば狙撃銃。近距離なら散弾銃。二段構えの作戦だった。カーラが羽を広げてくれるなら狙いもつけやすい。


「喰らえっ!!」


 カーラはそれを紙一重で躱した。

 意表をついたと思ったのに反応だけで躱されてしまった。

 銃弾だって無限にあるわけではない。

 どうやってカーラを倒せばいいか、エッジには想像できなかった。


 一方で、対峙していたカーラも迷っていた。


 相手はたった1人のハーフレイダー。

 ちょっと小突いて終わりにするつもりだった。

 こうなっては羽は閉まって全速力で迫ったほうがいいのかもしれない。


 カーラは警備隊長としての責任感から、ふと他の戦場に目をやった。


「何なのよアレ……」


 目に映ったのは戦場で笑いながら暴れまわっているリリ・サルバンの姿だった。


 空を飛ぶ彼女に近づける者はなく、複数の魔法を使ってナイトレイダーを無力化していく。GAは魔法は全て消し去ったと思っており、念入りに土魔法対策をしていたのはもはや昔の事。このままでは全滅すらあり得る。彼女を放置することはできない。唯一空を飛べる自分が対処しなければいけないとカーラは感じていた。


 カーラはエッジが次弾装填している隙に付近の瓦礫を吹き飛ばして視界を奪った。エッジを放置すれば狙撃される恐れもある。だがそれ以上に魔導士を放置するのは危険だ。カーラは空を飛ぶリリの遥か上空に舞い上がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ