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116話 やるべきこと

 

「レイヴン、おはようございます」


 サマヤートゥ号の医務室で目が覚めたレイヴンの目の前にはナナの顔があった。驚いて思わず起き上がる。レイヴンはそこで自分の体に違和感を覚えた。


「これは……機械の体? それにこの場所は……」


 レイヴンの失われた肉体は遥か未来の技術でも戻ることはなかった。その代わり、ナナがレイヴンのために考案した義手や義足が取り付けられている。


「俺は助かったのか……っ!! サラは? ナナ、皆はどうなったんだ?!」

「レイヴンは皆を守って倒れました。それから――」


 ナナはレイヴンが倒れた時の事を語った。レイヴンがリリの魔法の助けを借りて、自分たちを助けてくれたこと。サラやエッジたちが多くの仲間を引き連れてリードロイアの兵器を破壊するために旅だったこと。レイヴンの体を癒すために現在アルタカトにある宇宙船に乗っていること。そしてレイヴンの出自のことを。


「それなら俺も……」


 レイヴンはリードロイアに行かなくては感じた。自分の生まれがどうなんて今は考えられない。だが体は思うように動かない。まだ手術が終わったばかりで順応できていないのだ。起きたばかりなら当然だ。いくら高度な技術によって救われたからといえ、すぐさま自由に動けるようになるほど万能ではない。レイヴンが自由に動くためにはリハビリが必要だった。


「レイヴンが以前のように戦えるには7日は必要だと思われます」


 それはレイヴンが厳しいリハビリを乗り越えることを前提とした日数だった。リードロイアにある『アーレの光』の次の発射までに間に合わない。


「今の俺が行ったところで、ただの役立たずか……」


 肝心な時に役に立たない自分に腹が立った。


「サラを信じてないのですか?」


 レイヴンはナナの問いにドキッとした。


 信じていないわけではない。それでも必ず戦闘になるはずだ。サラが目的を達成できるだろうか。いや、生きて帰って来れるのだろうか。疑問だった。


「サラは自分がやるべきだと感じたことをやりにいったのです」

「そうか……」


 レイヴンはサラが随分遠くに行ってしまったように感じた。今までどこに行くにも一緒だったのに、大人になったような……。彼女は既に14歳となり、自分の力で働いている。それなのに急に寂しく感じた。


 サラは自分の命をかけてでも、リードロイアに向かった。だったら自分が今やるべきことはなんだろうか。レイヴンの覚悟は決まった。


 そんなの一つしかない。一刻も早く自分の体を自由に扱えるようになることだ。


「ナナ、俺はこれからリハビリに向かう。手伝ってくれないか」

「もちろんです」


 ナナはレイヴンにこれ以上戦ってほしくなかった。それでも目が覚めたらすぐにでも戦地に向かおうとするのは分かっていた。だからレイヴンを支えるために、これまでと同様の肉体を用意しようと思った。


 ナナはレイヴンの治療後すぐに、肉体の一部を義体化できるような部品を作り上げた。これまで見てきたレイヴンの動きなどから強度を計算。さらに金属化した時と同様の硬度になるように宇宙船のコンピュータの助けを借りて設計した。


「まだ全身の金属化はできないか……」


 レイヴンの体は『アーレの光』によって多くのメタリアルを失っている。体内で精製されるのにも時間がかかる。そのため現在はハーフレイダーだった時のように胸や背中の辺りしか金属化できなかった。


「(学生時代みたいだ。少し懐かしいな……)」


 そしてレイヴンは思い出した。子供の頃に描いた理想の自分の姿を。鳥のように羽を広げ、自由に空を飛びまわる。あの時は担当教師だったイオスからメタリアルが足りなくなるからと止められた。元々他の生徒に比べて多量のメタリアルを持っていたレイヴンですらできなかったことだ。


 だが今ならできるかもしれない。肉体を失い、それを補うために装着した義体は金属化した時と同じような硬度を持つ。それによって現在は逆にバランスの悪さを感じているが、全身を金属化できるようになったら、義体部分は覆う必要はなくなるはずだ。ということはメタリアルが回復すれば、以前よりも守るべき表面積は少なくなっている。それは他の部分に集中的に使えることを意味している。そのまま全身を強化してもいいし、余りあるメタリアルで翼を作れるようになるかもしれない。


 現在、レイヴンとナナを乗せてきた小型航空機は再び充電中だ。多くの電力を冷凍睡眠装置の維持に使用しており、再び飛べるようになるのは時間が必要。


 仮に空を飛んでいけるなら、リードローアでの戦いに間に合うかもしれない。わずかな希望が見えたレイヴンは、ナナに感謝を告げてリハビリに向かった。


 …………


 レイヴンがリハビリに励んでいるのと同時刻、サラを連れたリリやエッジたちはリードロイアに近づいていた。休憩は最低限に、それでいて到着後にしっかりと戦えるように体調管理しながら道を進んでいく。彼らの半数以上がハーフレイダーであり、戦力的にはGAのレイダーたちに勝てる可能性は低い。


 だが勝算がない訳ではない。目的はあくまで『アーレの光』の破壊であり、ナイトレイダーに勝利することではない。敵を施設から引き離すことが目的だ。その間にリブナを殺害するか、兵器を自爆させれば良い。まもなく始まる戦いに戦士たちの緊張感は高まっていた。


 一方その頃、GAの首都グローリアでも事態が大きくを動こうとしていた。

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