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113話 決戦の地、リードロイアへ

 

「アルタカト? そんな場所にいってどうするっていうんだ?」


 アルタカトの事はクシャラでも知られていた。

 その森に入って帰ってきた者はいないと。

 ナナはエッジを無視してサラに問いた。


「私は……」


 自分が一緒にいても恐らく何もできない。

 それでも側にいたい気持ちがある。

 サラは迷っていた。


 一方、ナナに無視されたエッジは仲間と共に決意を固めていた。故郷のバレロは先程の光で焼かれてしまった。ほぼ全ての住人が死亡し、町は瓦礫の山となっている。残っているのはレイヴンがいた後方の建物のみ。地面は(えぐ)れ、自分たちが生きているのも不思議なくらいだ。もはや一刻の猶予もない。準備が不十分でも行くしかない。


「目的地はリードロイアにある敵施設。すぐに無事な仲間を集めろ!! 他の国にも声を掛けて来い!!」


 宣戦布告もせずに攻撃されたことを考えれば、味方に付いてくれる者もいるかもしれない。そんな淡い望みに賭けるつもりはないが、それでもやらないよりはマシだろう。誰かが立ち上がらなければ世界はGAの恐怖政治に支配されてしまう。


 そしてこの地でも1人の少女が手をあげた。


「私も一緒に行かせてくださいっ!!」


 サラは迷った挙句、レイヴンの元を離れる決意をした。


 これまでずっと一緒にいた頼りになるお兄ちゃん。

 自分たちを守るためにボロボロになってしまった。

 側にいて手を握っていたい。


 それとは別の気持ちも沸いてきていた。


 自分には他にできることがあるかもしれない。

 レイヴンが無事だったなら絶対リードロイアに向かっていただろう。

 だったら、代わりに行くべきじゃないか。

 確かに戦う力は全くない。

 それでも自分なら『アーレの光』を破壊することができるかもしれない。

 以前に触れた時に得た情報を使って装置を自爆させる。


 リードロイアには間違いなくリブナもいるはずだ。

 彼がいなくなれば、もう2度と使えなくなる。

 少なくとも次の適正者が現れるまでは。


「君は戦えるのか?」

「戦えません。でも私にはメタリア人の機械を動かせます!」


 その告白は下手をすれば周りにいた者たちを刺激しかねない発言だった。状況を考えればバレロが狙われたのは彼女の存在が原因ともいえる。当初から彼女が狙われていたのが分かっていても、被害に遭った現在の状況を考えれば、サラ自身に怒りの矛先が向いてもおかしくない。例え理不尽な理由であろうとも。サラはそれを理解しつつも手をあげたのだ。


「私があの兵器を自爆させます」


 エッジはサラの目を見て動向を許可した。そして仲間たちに振り向いた。


「これで勝利までの道筋は見えたぞ!! 後は俺たちが彼女を無事に送り届けるだけだ!!」

「そうだ! 俺たちがやるんだ!」

「うおおおぉぉぉぉ!!!!」


 動揺しかけた仲間はエッジの喝をうけて咆哮をあげた。

 恐怖に抗おうと必死に自身を震えたたせていた。


「エッジさん? 恐らくGAはまた撃ってきます。連合軍の時と同じように。でもすぐには撃てないと思います。もう少しだけ時間があるはずです」


 サラは前回得た情報と西側の戦争情報から答えを導きだしていた。エネルギーのチャージには3日かかる。それが制限時間だ。


「聞いたか、お前ら! すぐに行動を開始しろっ!!」


 出発までの間、サラは再びナナと話すべく彼女の元に向かった。


「ナナちゃんはどうやってお兄ちゃんを運んでいくの?」

「問題ありません。既に迎えは手配してあります」


 よく分からないが、ナナが言うのなら大丈夫なのだろう。詳しく聞く時間はなさそうだ。


「サラの方こそどうやってリードロイアまで行くのですか?車は壊れてしまいました」

「……どうしたらいいかな?」


 サラは移動手段の事を完全に失念していた。エッジたちに運んでもらうわけにはいかないし、彼女は戦えないので別行動で密かに潜入する必要がある。


「だったら、私が連れて行くわ」


 救いの手を差し伸べたのは、いつのまにか空から降りてきたリリだった。


「1人くらいだったら私が連れて行ってあげられるわよ。私の魔法でね」

「いいの?」


 確かに申し出は嬉しいが、それではリリの正体がここにいる全員にばれてしまう。彼女はそれを理解しつつも同行すると言っていた。


「そんなこと言ってられる状況じゃないでしょ。私だってGAの奴らがやったことは許せないわ」


 いつもの腹を減らしている彼女とは違う表情は真剣さが垣間見える。サラは頭を下げてお願いした。


「それじゃあ、さっそく行くわよ」


 リリはサラを抱え込むと風魔法で舞い上がっていった。エッジたちは空飛ぶ彼女を見て呆気に取られていた。何故魔導士がいるのだろうか。彼らは魔法を使えなくなったのではないのか。混乱する仲間を見てエッジは考えるのを止めた。


「お前ら優先順位を間違えるなよ。今はGAの兵器を壊す。それだけを考えろ!!」


 正直彼自身も頭を整理しきれていない。だからといって残された時間はそれほど多くない。移動時間と現地での戦闘時間を考えればぎりぎりのはずだ。


 エッジに続き、GAに裏切られてレイヴンに命を救われたトスターたちもリードロイアに向けて出発していった。


 ナナはその様子を眺めながら、レイヴンの頬をさすっていた。

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