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107話 サラの不安

 

 初戦でGAが敗れたことはすぐさま大陸中に広まっていった。


 圧倒的な戦力を持つはずのGAが大敗を喫する。そんな状況を予測できたものはほとんどいない。レイヴンのように5年前にGAを脱出した元ナイトレイダーたちもGAの大勝利を確信していた。


 東側3か国政府も当然のようにGAが勝利するものと思っていた。レイヴンの所属するウルバスマインは、先日GAとの不戦条約延長に成功したばかり。以前から申し込んでいたものが漸く認められたと思ったら、まさかまさかの敗戦スタート。GAが勝利すると賭けたからこその判断だったのに、上層部はさっそく下駄を外したくなっていた。このままGAと運命を共にしてもいいのか。決断したとはいえ、早速不安が表面化していた。


 そんな政府中枢とは別に一般国民は自分たちとは関係ないと考えているようだ。今までと変わらない日々を送り、他人事のように戦争のことを話す人々。それどころか戦争特需で一儲けできるかもしれないと息巻く商売人もいるくらいだ。楽観的な人々とは対照的にレイヴンたちの周囲では緊張感が増していった。


 一般人と違いレイヴンたちには能力がある。戦力的にはレイヴンの力を必要としないかもしれないが、最大の特徴である隠密性は十分に利用価値があるだろう。国同士が軍事協力を約束したわけではないが、GAが不利になれば要求してくるかもしれないし、再びメタリア人の遺産の解析を頼んでくるかもしれない。


 サラは戻ってきた自宅で新聞を読みながらそんなことを考えていた。


「まさかGAがいきなり負けるとはね……」

「ああ、ライガルリリーは鉄獣だけじゃなく、新兵器も用意していたんだな」


 レイヴンとサラは2人ともGAの勝利を疑っていなかった。確かに大量の鉄獣の存在は脅威だが、GAにはそれを上回る戦力があり、戦場慣れしたレイダーや兵士の数でも圧倒している。それが西側連合軍の新兵器によって覆されてしまった。その事実は大きな衝撃を与えた。


「やっぱり、私たちが考えてる以上に軍の上の人ってのは色々やってるんだね」

「正直ここまでとは思っていなかったな……」


 これらの情報は現在グローリアで勤務している新聞記者たちから毎日のように列車から送られてくる。大陸東部での戦いについて、現在昼夜を問わず速報が送られ報道されていた。


「だがGAもグローリアに近づかれるわけにはいかないだろう。どこかで勝負に出るはずだ」


 レイヴンの予測に対して、届いたばかりの情報を見ていたジルが異を唱えた。


「どうやらGAはそういうつもりはないみたいだぜ。連中は一旦後退してるみたいだ。もしかしたら軍の再編成が必要なのかもしれねえな」


「GA軍はそこまで酷いの?!」

「GAが持ちこたえられないのか?」


 ジルにしてもそこまで知るわけではなく、彼の言葉はあくまで報道からの推測でしかない。


「……分からねえが、反攻作戦に向けて今頃どっかで集結してるかもな」


 GAとしては宇宙船のあるグローリアには近づけたくないという気持ちが強いはず。


 このような考え方はジルだけでなく、南大陸に住む者ほぼ全員がそういった認識を持っていると考えていい。


「初戦で負けたとはいえ、強大な戦力であるレイダーを生みだすグローリアの改造手術装置は守る必要があるしな」

「レイダーの存在がGAにとって生命線だもんね」


 西側連合軍もグローリアを狙って進軍している。宇宙船と共に改造手術装置は大きなターゲットの1つだ。いつ起動できるか分からない宇宙船よりは、現在進行形でレイダーを増やしている改造手術装置の破壊の方が重要度は高いかもしれない。だからこそ陽動を出しながらも連合軍の目的地は明確だ。


 それだけにGAが戦線を後退させていることに2人は驚きの表情を見せていた。GAにとっては多くの犠牲を払ったとしても守らなくてはならないものだ。


 ならばGAが後退したのにはどのような意図があるのか。ただ単に相手の新兵器によって劣勢になっているだけなのか。あるいは何かの策を用いているのか。策があるならばいったいどのようなものなのか。


「(やはりあの装置なのか……?)」


 2人の頭の中に浮かんできたのはリードロイアで見た巨大なメタリア人の装置である『アーレの光』だった。


 あの巨大な砲身の解析がどの程度済んでいるかは分からない。研究所で出会ったリブナの解析能力はサラに劣り、別れた時もスランプ状態。ならば今回の戦争でいきなり起動できないだろうという憶測が頭の中を飛び交う。


「(それなら私が感じている不安は一体何なの?)」


 サラは装置に手を触れた時に感じた発射イメージを思い出して震えはじめた。起動すれば多くの人々が死ぬのは間違いない。一般兵だけでなく、鋼鉄の肉体を持つレイダーですら殺戮できるだろう。それでもまだ解析に時間が必要なはずという希望はある。これまで多くの時間を掛けても解析できなかった事実。



 だがサラの不安はまもなく現実になろうとしていた。



 GAは既に連合軍のいる西方地域に向けてグローリアから『アーレの光』の移動を開始。まもなく予定されている場所に到着する。後退も西側連合軍を誘導する手段に過ぎない。初戦の敗北による一時的な劣勢は結果的に敵軍を引き込むための罠として有効に活用されていく。対する連合軍は勝利によって士気高く、GAの遅滞戦術にてこずりながらも順調にグローリアに向けて進軍していった。

先日2月3日に完結と書きましたが、1月29日完結に変更します。

2月4日の大規模メンテが気が付きませんでした。

<m(__)m>

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