表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/125

1話 レイヴン・ソルバーノ

 

 鉱山の街ヴァイスマイン。


 ここでは男女関わらず多くの者が働いている。採れた資源をせっせと中央に送り、代わりに生活必需品を送ってもらう。それが枯れた大地で生きる人々の生活だ。そんな中、大人に混じって働く黒髪少年の姿があった。


 レイヴン・ソルバーノ、まだ5歳の少年である。


 5歳にしては立派な身体つきをしてはいるが、大人たちと同じように採掘作業ができるわけではない。大人が掘った鉱石を背中に担いで、鉱山の入口に停まっている輸送用の蒸気トラックまで運ぶ。これがレイヴンの仕事だった。


 鉱山の中には当然電球が貼り付けられて周囲を照らしているが、これがしょっちゅう切れる。そのおかげでレイヴンは夜目が利くようになった。暗闇の中でもスイスイと進んでいくので、困ったときには大人たちも頼りにするほどだ。


「よーし、皆。そろそろ交代だ!レイヴン、お前も休憩に入れ」

「うん」


 指示を出したのはレイヴンの育ての親であり、鉱山の責任者のジル・ソルバーノ。レイヴンが子供ながらに鉱山で働いているのもジルの指示によるものだ。


 ジルは豪快な性格で、部下におごりすぎて金がないという切実な理由から、レイヴンの仕事は始まった。それでも不満に思うことはない。レイヴンは孤児であり、たまたま拾ったジルが養う理由なんて一切ないからだ。元々の放浪癖を直して、不器用ながらも育ててくれた。レイヴンにはそれだけで充分だった。


 黙々と作業するのがあっているし、沢山勉強して研究者や技術者になる気もない。それよりは体を動かす方がずっと良い。お金を稼げて、ご飯がちょっと豪華になるなんて最高だ。


 レイヴンはそんな軽い気持ちで大人たちに混じって働き始めた。子供は自分一人だけ、なんてことは全く気にならないし、そんな余裕もない。


 鉱山の外に出てサンドイッチと水を受け取ると、少しだけ山を登って見晴らしの良い場所に座り込んだ。町を見下ろすなら、この場所からが一番だ。コンクリートの建物が立ち並ぶ雑多な町。決して整っているとは言えないが、これはこれで悪くない。


「うまい!」


 空腹は最高のスパイスだ。レイヴンは成長期らしく、あっという間に食事を終えて横になる。下では大人たちが昼間っから酒を浴びて騒々しい。4時間後には再び交代で仕事に戻るからそのための休憩時間になっているが、色々と理由を付けて飲み続ける。それを注意する者など誰もいない。なにしろ責任者のジルが率先して飲んでいるのだ。誰が咎めることができるだろうか。


「(あの黒い点……なんだろう?)」


 少し膨らんだお腹をさすって目を閉じようとした瞬間、レイヴンの視界に黒い点が映った。空に浮かぶ3つの点は次第に大きくなっていく、


「ジル!空から何か近づいて来るよ!」

「なんだとっ!」


 ジルはレイヴンが指さす方角を見上げた。


「あれは魔導士?……空爆か!!」


 その言葉に周りの大人たちも空を見た。目に映るのは爆弾を抱える3人の魔導士たち。ジルは慌てふためく彼らに喝を入れるように大声を張り上げた。


「おまえら落ち着け!やるべきことをきっちりやるんだ。まずは鐘を鳴らせ。女、子供を非難させるんだ!」

「おうっ!」


 皆がきびきびと動きだすのとは反対にレイヴンはのんびりしていた。


「(魔導士?……すごいけど、鳥の方が上手に飛ぶかな)」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ