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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
王の領域《キングス・テリトリー》編

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第九十七話 学園長の狙い

俺はクラスメイトの能力や得意な魔法を聞き取ることにした。珍しい能力者もたくさんいたけれど学園に入学するだけあって、戦闘向けな物もあり意外といい勝負ができるのではないかと思っていた。


「それじゃあ皆明日からは野外演習場で特訓しよう!」

「オッケー!」

「頑張っていこう。」


今日はここまでにして解散することにした。俺はそのまま学園長室まで足を運んだ。俺一人だけが《黒》クラスになり2クラスしかないのにクラス対抗戦をやる。こんなことを計画するのは学園長しかいないだろう、何の目的があってこんなことをするのか問い詰めなければいけない。


「学園長!」

「おぉ来たかユーリ、待ってたぞ。」


学園長は椅子に座ったまま慌てるでもなく、こちらに振り向く。机の上にはティーカップが置いてあり、お茶菓子もある。どうやら俺が訪ねて来ることをわかっていたようだ。


「さぁそこに座りたまえ。じっくり話をしようじゃないか。」

「わかりました。では失礼します。」

「それで何のようだ?」

「とぼけないでくださいよ。どうして俺だけ別のクラスにしたんですか?それにクラス対抗戦についても教えてもらいますよ。」


俺は学園長に今回のことを直接問いかけてみる、すると学園長は少し笑った後に口を開いた。


「君だけ別のクラスにしたのは今回のクラス対抗戦において、いくつか目的があるからだよ。」

「目的ですか?」

「ああ、まず一つ君の実力はこの学園内で教師陣を含めてもトップに位置するだろう。そんな君と戦いたいと考えている生徒や魔法を近くでみたいと考えている教師も多くてな。クラス対抗戦という機会を設けさせてもらったんだ。」


俺の実力がトップというのはあながち間違いでもないが、それでも教師を含めてというのは同意しかねる。大体目の前に俺以上の実力で得体のしれない人物がいるじゃないか。第一、皆に見られるようなことはできるだけ控えたいのだが、まあ学園の人間だけならそこまで変な奴もいないとは思うが…。


「なるほど。それで勝手にやったと?」

「まあそう怒るな。他にも目的はある。」

「何ですか?」

「君は今年の騎士団見習い志望が少なく、進学が多いということについてどう思う?」


今年は例年より進学する生徒の方が多い。エレナ曰く去年のクラス対抗戦《聖騎士祭》において魔王軍四天王“剛腕”のバリオンによる襲撃があったが、その際に見せられた騎士団員でも逃げ出してしまうくらいの圧倒的な力を目の前にして戦うことを恐れてしまっている。それの影響で元々騎士団志望であった者も進学という選択肢をとったため今年は2クラスになっている。


「仕方のないことだと思いますよ。あれだけの事があったんですから。むしろあれだけの事があったにも関わらず騎士団志望の割合が多いほうが驚きですよ。」

「そうか。じゃあどうして騎士団員志望が未だにいるかわかるか?」


言われてみればそうかもしれない。あの事件があって騎士団員になりたがらない者が増えるのはわかるが、それでもあれだけなりたいという人物がいるのはどうしてなんだろうか。


「待遇でも良くなったんですか?」

「君は鋭いのか鋭くないのかわからんなぁ。…君のおかげだよ。」

「俺のおかげですか?」

「ああ、君があの時勇敢に立ち向かったことその姿に勇気をもらったものはたくさんいた。それに君の活躍は皆に届いているよ。」


学園長は先程までのふわっとした微笑みではなく真剣な顔で話をしてくれた。なんだか面と向かって言われると恥ずかしいな。俺はあの時…いやいつだってがむしゃらに戦っているだけだ。それこそが《7人目の勇者》の力を持った責任だと感じているからだ。


「いえ、俺なんてそんな…。」

「だがそんな君が進学すると聞いて皆驚いていたよ。まあそこは姫様専属の護衛になると言って誤魔化しておいたがね。しかし、そんな君の姿を見ても戦う勇気の出なかった者もいる。私はそんな生徒達にもう一度戦う勇気を持って欲しいと考えているんだ。」

「なるほど。ですが学園長、そんな生徒たちを無理に戦わせる様な環境に送る必要は無いんじゃないですか?」


俺は皆に無理して戦わせることには賛成できない。もちろん魔王軍と一緒に戦ってくれる仲間が多いことにこしたことはないが、強制はできない。


「たしかにそうかもしれないな。だが君は同じクラスメイトの能力を聞いてどう思った?」

「正直な所もったいないと思いました。皆すごく良い能力だと、だからこそ騎士として戦えないのはもったいない。でもそれは仕方のないことです。」

「そうだ、皆素晴らしい能力を持っている。この学園に来るくらいだからな、だからこそ彼らをこのままにするのはもったいないと考えていいる。君もわかっているだろう?大きな力を持った者はその責任を果たさなければならない。」

「それは…そうかもしれませんが…。」


それはわかっているが…だからと言って学園長の意見にはやはり賛成できない。俺の場合は好きで望んだ能力といえばそうだ。だが学園に来た者の中には自分の能力を上手く扱うためという目的の者だっているはずだ。


「だから今回のクラス対抗戦で、そういった者達に自分はできると思わせてほしいんだ。」

「できると思わせる?」

「自信を取り戻させるということさ。君の相手クラスには《大賢者》に《勇者》がいる、他にも貴族のビッグネームがちらほらいるだろう?学園の授業とはいえ、彼女らを倒すことができれば自信に繋がると私は考えているんだよ。」


つまり学園長はこのクラス対抗戦を通して俺にクラスの皆を騎士団員を目指すようにしろとそう言っているのだ。たしかにそうなってくれるのはこの国のためになるだろうが…それが正しいのかどうか俺にはわからない。


「まあそう気負わなくてもいい、元々これはできればという話だ。生徒の皆にも無理強いさせる気はない、私もそれが正しいのかどうかはわからないからな。だけど君には人を変える力がある、そんな君に賭けさせてはもらえないだろうか?」

「はぁ…。わかりました、俺に何をどうこうできるとは思いませんけどやれるだけやってみますよ。」

「ありがとう。見返りにとは言わないが今年も君の問題行動…授業の出席に関しては目を瞑ろう。」

「お願いしますよ。それでは失礼します。」


俺は学園長室を後にする。人を変える力…ね、学園長も随分と買い被ってくれるな。俺にそんな力があるようには思えない。でもたしかにクラスの皆は少し自信がないようにも感じた。今回のクラス対抗戦【王の領域(キングス・テリトリー)】で自信を取り戻せれば騎士団うんぬんはともかくもっと道は広がるかもしれない。


「とはいってもまずは【王の領域(キングス・テリトリー)】でどうやって勝つかだよなぁ。」

「おつかれユーリ。」

「お疲れ様ですユーリ君。」


門の外ではいつも通りアリアとエレナが待っていた。二人を連れて帰路につく、話題はもちろんクラス対抗戦【王の領域(キングス・テリトリー)】についてだ。


「まさかクラス対抗戦があるとは思いませんでした。」

「そうだね。しかもユーリ対私達で。」

「俺もこんなことになるとは思わなかったよ。」


とりあえず学園長に言われたことは黙ってることにした。喋ってもいいかとも思ったが余計なことは考えてほしくない、勝負が終わるまでは黙っていることにした。


「ところでそっちは誰がキングをやるの?」

「こっちは…」

「ダメですよ!アリア!」


エレナはアリアの口を急いで塞ぐ。アリアは頭に疑問符を浮かべている。ちっ…せめて誰がキングかわかれば攻めやすいと思ったけれどエレナと一緒の時に聞いたのは不味かったな。


「ハハハ、流石に駄目だったか。エレナのいない時に聞けばよかったかな。」

「まったく油断も隙もないんですから。アリアも喋ったらいけませんよ?今回私達は敵同士なんですから。」

「そうだったね。気をつけます。」

「まあ家以外ではそんなに会わないからいいと思うよ。しばらくは登下校も分けよう。お互いにフェアじゃないとね。」

「うん、わかったよ。」


まあ向こうの情報はそこまでいらないだろう。おそらく小細工無しで向かってくる、それが簡単にできてしまうほどの戦力差なのだ。むしろあれこれ画策しないといけないのはこちらの方である。エレナと別れ俺達は屋敷に戻る。皆にも同じ話をしてしばらくアリアと距離を置くがお互いのことをスパイしないように言っておいた。俺は自室に戻りマルクさんにお茶を頼む。


「ふぅ…さて、どうしたもんかなぁ。」

「【王の領域(キングス・テリトリー)】はシンプルですが難しい競技ですかからね。」

「やっぱりマルクさんは知ってるんですね。」

「ええ、かなり昔からありますから。ユーリ様は何か作戦でもあるのですか?」

「いやそれが全然思いつかなくて。これだけ大人数を引き連れた経験もないですし、そういう経験のある知り合いとかいないですか?」


正直お手上げというのが本音だ。俺は人を使った経験がないし、こういった戦略性のある演習はしたことがない。にも関わらず戦うのはアリア達ときたら勝てる気がしない。まだ一対一なら勝てるかもしれないが、それでも厳しい所である。マルクさんは少し考えた後、、ゆっくりと口を開いた。


「そうですね、そういう経験のある戦略家に一人心当たりがあります。」

「戦略家ですか?」

「はい。一時期騎士団に所属していた人物でその実力は折り紙付きですよ、名前はハーミット・ストラテジー。年は私とそう変わりませんが病弱でしてそのせいであまり長く騎士団にはいなかったので知ってる者も少ないでしょう。」

「ハーミット・ストラテジーか…それでその人はどこにいるんです?」

「たしか王都の外れに住んでるはずですよ。後で詳しい場所を地図でお教えいたします。」

「ありがとうございます。」


とりあえずはなんとか希望は見えてきたな。それにしてっも戦略家か、現在の騎士団にそういった役職はないはずだ。基本的に騎士団長や副騎士団長などが作戦や指揮を取る。参謀というならば宮廷魔道士団がそれに当たるだろう。ハーミット・ストラテジー、一体どんな人物なんだろうか?


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