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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第九十四話 狙いは一つ

アリアは自身の《副技能(サイドセンス)》によってバーストが仕掛けた魔法の痕跡を辿る。設置魔法は全部で15箇所。アリアはエレナに魔法が仕掛けられた位置を指示する、これでその場所は避けながら接近することができる。


「行きます!」

「ちっ!『悪魔の炎槍ディアボリカル・ファイア・ランス』」

(避けきれない…!)


エレナは設置魔法を回避しながら近づくが、当然魔法を設置したバーストには場所が分かっている。さらに万が一回避されながら近づかれてもそこを魔法で狙い撃ちされては回避するのが難しいのだ。


「『水の壁(ウォーター・シールド)三重(トリプル)』」

「助かりました、アリアさん。」

「フン!どうやって俺の設置魔法を把握しているかはわからねぇが、俺がただ黙って見てるわけねぇだろ!」


アリア達はバーストの印象が変わった様に思えたが、これが本来のバーストの戦い方である。以前戦ったときは感情的になりやすく、こちらを軽んじていたこともあってか隙も多かった。だがそれは本気を出していなかっただけに過ぎない、今のバーストには油断や隙が一切存在しない。ただ二人を殺すことだけを考えているのだ。


「設置魔法を避けたところを狙って魔法を放つ。シンプルですが一番厄介な手ですね。」

「うん、『聖なる光(ホーリー・ライト)』を当てる隙がない。これじゃあ『合体魔法(シンクロ・キャスト)』なんてもっと無理だ。」


以前バーストを瀕死に追いやった魔法『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』が勝機を握っている。だが以前と同じ方法は通用しないだろう、それがわかっていたからこそ『聖なる光(ホーリー・ライト)』でバーストにダメージを与えることを考えていたのだ。


「どうした?もう終わりか、所詮女はこの程度だな。」

「以前にもそのようなことを言っていましたね。なぜそこまで女性を敵視するんです?」

「お前らに言う必要はねぇ。」


バーストがここまで女性を嫌う理由は、昔とある女性魔族に殺されかけたことによるものである。それまで負け知らずでいたバーストにとって初めての敗北は圧倒的な差があっただけに衝撃も大きかった、その反動でバーストは《序列》魔族にまでなったのだ。その女性魔族とは四天王唯一の女性魔族である。


「どんな策を練ろうが俺の完璧な布陣は崩せねぇ。それに仮に崩せたとして、もうあの魔法は喰らわねぇよ。」

「それはあの魔法は脅威だと認めていることになりますが?」

「ハン!前回は油断したが俺もそこまでバカじゃねぇよ。さぁそろそろ終わらせるぞ!」


エレナはなるべく会話を長引かせて策を練っていたが、どうやら時間稼ぎはここまでのようだ。しかしアリアが何か打開策を思いついてくれたようだ。


「エレナ耳貸して!」

「なるほど流石ですね。」

「そっちは何とかできそう?」

「ええ、何とかします!」


二人はバーストに向かって突っ込んでいく。同時に向かえば片方にしか魔法は向かわないため片方は助かると考えたのだ。


「同時ならイケると思ったか?だが甘ぇ!『悪魔の炎壁ディアボリカル・ファイア・ウォール』」

「くっ!」

「『水の壁(ウォーター・ウォール)三重(トリプル)』!!!」

「ちっ、外したか。…どこに行きやがった?」


水の壁(ウォーター・ウォール)』で視界が遮られた一瞬で二人の姿を見失う。しかしすぐに魔力で位置を把握した。もう一人はわからないが背後に一人確実にいる、後ろに振り向き魔法を発動させる。


「聖なる…」

「それで背後を取ったつもりかァ!『悪魔の炎槍ディアボリカル・ファイア・ランス』」

「きゃっ!…エレナ!」


エレナは先ほどバーストの視界を遮った際に『炎の翼(フレイム・ウィング)』と『火炎口(バーナー)』によって遥か上空へと舞い上がっていた。意識していなければ上空にいることは気づかない、ここからの攻撃は死角である。


「これで終わりです!『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』!!!」


上空から放たれた『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』はバーストの頭上から真っ直ぐに向かってくる。しかし放たれた魔法にバーストは気づく。


「それで出し抜いたつもりかァ!それにその魔法じゃあ俺は貫けねェ!」

「アリアさん!」

「『聖なる光円ホーリー・ライト・サークル』!」

「ガァァァァァ!!!何だコレはァァァ!!!」

「それは新しく開発した魔法。あなたの設置魔法を見て思いついたね。」


アリアはバーストの設置魔法を見て『聖なる光(ホーリー・ライト)』をアレンジして『聖なる光円ホーリー・ライト・サークル』の中にバーストを捉えた。


「だがまだ足りねぇなァ!」

「いやこれで終わりだよ!『聖なる光(ホーリー・ライト)』」

「「『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』!!!!!」」

「ガァァァァァ!!!!」


捕らえられたバーストの頭上に『聖なる光(ホーリー・ライト)』の魔法陣を展開、そこに『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』が合わさり『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』へと変化した。バーストは体の9割を吹き飛ばされた。


「バカ…ナ…マタ…オンナ…ニ…。」

「ええ、これで終わりです。」

「『聖なる光(ホーリー・ライト)』」


アリアはバーストを完全に消滅させる。二人はその場で倒れ込んでしまう、魔力を使いすぎて『治療魔法(ヒール)』が使えず動くことができなかった。


「ユーリ…君。」

「ユーリ…シロ…。」


二人はそのまま眠りにつくのだった。


◇◆◇◆


コーデリアはジェミニに《聖剣》を当てるための策を二人に話す。


「なるほど、だけどできるかな?」

「ユーリ、ここはコーデリアを信じましょう。彼女も私達と同じ《勇者》なのですから。」

「うん…お願い…。」

「わかった。最後は必ず決める!」


ユーリとシャーロットはジェミニへと向かっていく。


「何を企んでいるかわからないけど、無駄だよ。」

「やってみるまでわからないだろ!」

「そうです!『千の突きサウザンド・ストライク』!」

「『悪魔の土壁ディアボリカル・ランド・ウォール』」


シャーロットは目の前に土の壁を出されるがギリギリの所で止まる。直撃は避けることができた、しかし背後にも出現していた土の壁が迫ってきていたことに気付かずに壁に挟まれるような形になる。


「シャーロット!」

「ほらよそ見しないで!『悪魔の土槍ディアボリカル・ランド・ランス』」

「ぐわぁぁぁ!!!」


俺はシャーロットの方に気を取られていたため土槍を真正面から受けてしまい、吹き飛ばされる。かなりの深傷を負ってしまった。『治療魔法(ヒール)』で傷を塞ぐが血を流しすぎたのか少しフラフラする。そんな姿を見たコーデリアが心配して声を掛けてきた。


「…ユーリ!」

「俺もシャーロットも大丈夫だ!…コーデリアは気にしないで魔法に集中して!」

「うん…急ぐ…!」


コーデリアは二人のことが気になったが魔力を集中させる。自分が言いだした策だ、ここで成功させなければ二人の行動が無駄になってしまう。


「…OK!いつでも…いける!」

「よし!タイミングは合わせる!」


俺は《剣の勇者》の魔力を引き出し《聖剣クラレント》に魔力を込める。そして再びジェミニへと向かっていく。


「そちらの青髪のお嬢さんを潰そうかなぁ!『悪魔の土球ディアボリカル・ランド・ボール』」

「しまった!コーデリア!」


魔法を発動させることに集中している。これではガードが間に合わない。


「はぁぁぁ!!!『付与魔法(エンチャント)攻撃(アタック)』!!!」

「シャーロット!」


もうダメかと思ったその時、シャーロットが土壁を壊しコーデリアへと向かっている土の塊を破壊した。そのまま滑るようにして地面に倒れ込む。


「今です!コーデリアさん!」

「『水の牢獄(ウォーター・ジェイル)三重(トリプル)』!!!」

「くっ!『悪魔の土壁ディアボリカル・ランド・ウォール』何故だ、何故止まらない!グォォォォ!!!!!」


コーデリアが展開した魔法陣から大量の水が溢れ出し、ジェミニへと向かっていく。土壁で水をせき止めようとするがその勢いは止まらず水の中に捕らえられる。コーデリアは限界を越えた三重(トリプル)の多重展開によってジェイルを捉えることに成功した。皆で作ったこの好機を逃すわけにはいかない。


「はぁぁぁ!!!」

「《聖剣》なんて、この粘土で…何上手く操れない!?」


コーデリアが思いついた策は《聖剣》を回避するための粘土を柔らかくするために水の中へジェミニを閉じ込めることだった。だがそのためには大量の水と精密な魔力操作が必要だったため、成功するかは賭けではあったが自分を信じてくれた二人の思いに応えるように成功させることができた。


「これで終わりだ!『聖剣(クラレント)・剣神の連閃』!!!」

「グワァァァァァ!!!!!」


ジェミニは跡形も残らないくらいバラバラになり消滅していった。


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