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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第九十一話 仮説と不穏

ユーリとシャーロットの二人が本を持って外に出た瞬間に、景色がおかしいということに気づく。いやこれは地面が揺れているのだ。


「うわぁ、ど、どうなってるんだ。」

「皆さん伏せてください!」

「シャーロット俺達も皆のところへ急ごう!」

「はい。」


俺達は地面の揺れに気をつけながら皆が集まっている場所へと急ぐ。さらに地震は大きくなりその場に立っていなくなり思わず地面に手をつく。


「一体これはどうなっているんだ…」

「皆あれみて!」

「入り口が…!」


先程まで俺とシャーロットがいた遺跡迷宮(ダンジョン)もどきの入り口が地震によって崩れていく。もうあそこに入ることができない。もしかして俺達が本を持ってきたから地震が起きて崩れたのだろうか。地面がなだらかになったところで地震は収まった。


「収まった…のかな?」

「みたいだな。ユーリ達が無事に脱出できてよかったよ。」

「もしかしたら原因はコレかもしれないからなんとも言えないけど…。」

「その本どうしたの?」

「とりあえず城の中に戻りましょう、そこで詳しくお話します。」


俺達は全員で一度先程まで集まっていた部屋に戻る。まず皆に村であった出来事を喋ろうと思ったが、どうやら俺とシャーロットを待っている間にアリアが説明しておいてくれたようだ。それならば話は早い、遺跡の中であった出来事を話そう、皆が席について一段落したところでフルーが口を開く。


「それでその本は何なの?」

「この本は《進化の勇者》が残した私達の力を強化する物らしいです。」

「《進化の勇者》?」

「また新しい《勇者》のことだね。」

「もう驚かなくなってきちゃったよ。」


ここのところ物凄いペースで過去のできことがわかるせいで皆の驚きは段々薄くなってきていた。とはいえこれは百年ほど誰もわからなかった新事実なのでとんでもないことなのだが、感覚が麻痺している。


「それで何て書いてあるの?」

「古代文字で書かれていて読めないんだよ。しかも言語はバラバラでね、読み解くには時間がかかりそうだよ。ここのページの文字とかは村の遺跡の壁にあったのと同じだよね。」

「本当でござる。でもなんて書いてあるかまでは全然わからないでござるな。」

「…?」


本の中を見て気付いたのは村の遺跡に書いてあったエルタさんの日記の文字と一緒であることはわかる。だけどどんな内容が書いてあるかはわからないから困ったものである。するとコータが何やら覗き込んで考え込んでいる、何か気になることでもあるのだろうか?


「どうしたのコータ?」

「いや、このページの文字は多分僕の世界の文字だよ。」

「えっ、そうなの?でも多分ってどういうこと?コータの世界の文字なんでしょ?」


どうやらこのページに書いてある文字はコータの世界の文字らしい、しかしコータは自分の世界の文字だと言う割には多分と自信がなさそうだ。


「僕の世界では隣の国同士でも言語が違うんだ。一応多くの国で使われている言語もあるんだけどね。これはなんというかその…」

「知らない言語ってこと?」

「いや、知ってるんだけど。なんと言ったらいいのかな、文字は僕の国や隣の国でも使われているものだけどこれはごちゃごちゃなんだ。」

「ごちゃごちゃって言うと具体的にはどういう感じなんだ?」

「意味をなしてないというか言葉になってない。これをそのまま読むならあEたVDこざBしすGって感じかな。」


たしかに聞いている感じ言葉にはなってないように聞こえる、ただそのまま読むだけではないということだろうか。そう簡単に読み解けないようになっているのだろう、これは骨が折れそうだ。


「きっと何か法則とか読み方があるんじゃないかな。」

「とりあえずは保留だね。他のページを読まないと意味ないかもしれないし。」

「そうですね、古代文字も書いてあるようなのでこちらはセドリック団長に託すことにしましょう。」

「じゃあ僕が渡しておくよ。」

「それではマークお願いします。」


そういってシャーロットが本を閉じる。古代文字はセドリック団長の専門分野だからな彼に任せるのが一番いいだろう。


「それにしてもエルタさんは《魔王》を殺すことができたって言ってたよね。そして封印することにしたって。」

「そうなの?」

「あっ、ごめん。皆にはそれ言ってなかったかも。」


アリアは大事な部分を皆に話していなかったようだが、今聞いたからまあいいだろう。たしかにエルタさんは《魔王》を殺すことができて、封印することにしたって言っていた。


「でも殺したのに封印する必要ってあるのかな?」

「そりゃあそうでしょ。《死霊使い》とかいるだろうし、悪用されたら大変じゃん。」

「《死霊使い》?」

「死体を操るっていう能力者のことだよ…って今回の事件ってそれが目的なんじゃない?」

「ローラン前団長の遺体が盗まれた事件ですか?」

「うん、それなら遺体を盗む意味もわかるでしょ?」


《死霊使い》というのは死体を操る能力者のことらしい。恐らくかなり使い手は少ないんだろう、まったく聞いたことがないまだまだ知らない能力もあるんだな。それにしてもデリラはよく《死霊使い》のことを知っていたな。


「デリラよくそんなこと知ってたね。全然知らなかったよ。」

「僕もさっき思い出したよ、むかーしお婆ちゃんに聞いた覚えがあって。」

「すぐに《死霊使い》の所在を探らせます。」


シャーロットはすぐに使いの者を呼ぶと指示を出しどこかへ消えていった。カルロス以外にもこき使える相手がいるんだなと言いかけたが怒られそうなので辞めておこう。だが《魔王》も本当にそうなのだろうか?殺すことができた、しかし封印することにした…ずっと引っ掛かっている。なぜ遺体を封印する必要がある?後が残らないように処分すればいいのではないだろうか。もしかして…


「《魔王》は俺と同じなのか?」

「ユーリ君と同じ…ですか?」

「死んでも蘇ることができるってこと。殺したのであれば遺体を処分すれば《死霊使い》に利用されることもない。でもわざわざ封印をしたってことは復活できるからじゃないのかなって。」

「ありえない…とは言い切れませんね。元は《勇者》で転移者、そして《魔王》になったという経緯を考えればユーリと同じ様に復活できる条件を満たしている可能性はあります。」


実際のところはわからないが、そうであれば封印せざるを得なかった点にも納得はいく。だがその封印も《勇者》が命を掛けて封印したくらいだ、相当高度な物のはずだ。にもかかわらず《魔王》の復活は近いと言われている、奴らは封印を解く方法をすでに見つけているのか?いやもう解いているのかもしれない。


「俺達ももっと強くなって《魔王》を何度でも倒せるくらいにならないといけないな。」

「《勇者》集めも急がなければいけませんね。」

「もちろん私達も協力するよ!」

「ありがとう!皆で頑張ろう!」

「「「おう!!!!!」」」


俺達は決意を新たに《魔王》や魔族との戦いに備えるのであった。


◇◆◇◆


ワンダーは大和国でユーリを始末した後、魔族領にて時が来るのを待っていた。残りの《勇者》はそこまでの脅威ではない。わざわざ自分が手を下さなくても誰かが始末をするはず、脅威が去った後四天王の座を奪うその時が来るのを…。


「おいワンダー!次はどうするんだ!?俺は早くあのクソ女共を始末しに行きてぇ。」

「そう吠えるなバースト。お前は四天王になるのとあいつらを始末するのどちらを優先したいんだ。」

「どっちもに決まってるだろ!」


バーストは苛つきを抑えられなかった。元々感情を抑えられないタイプではあるがアリアとエレナの二人にやられてからというものより一層増していた。


「荒れてるねぇ。」

「プロクか。メスタはどうした?」

「ちょっと準備にね。」

「準備だと?」

「ワンダー、君が殺した人間どうやらまだ生きているようだよ。」

「何だと?」

「そいつにリトスがやられちゃったみたいだからねぇ。」

「リトスがやられたんですか?」


ワンダーは表情を表に出さないほうだが、プロクの発言に驚いてしまった。自分が殺した人間とはつまり大和国で《勇者》だと判断したユーリ・ヴァイオレットのことだろう。やはり自分の考えは間違えではなかったのだ、だがどうして生き返ったのか。あのとき確実に殺したはずなのに。ボルナもまた自分よりも《序列》が低いとはいえリトスがやられたことに動揺を隠すことができなかった。


「まあ、悪いけど僕が貰うことになるよ。バースト、君がお熱の女達もね。それじゃあ失礼するよ。」

「あぁ?!おい、待て!」

「おい、ワンダー急いで追いかけるぞ!」

「いや…。」

「ちっ!勝手に行くからな!」

「待て!…どうしますワンダー。」

「好きにさせておけ。」

「わかりました。」


プロクは何かを行うためにその場を後にした。バーストはその口ぶりから以前大和国で戦った人間族が目的だということがわかった。獲物を取られまいとした彼はプロクの後を追いかける。そんな彼らの姿を見てボルナはワンダーにどうするのかを聞いたが好きにさせておくということだった。協力関係を結んではいるが、ワンダーが何を考えているのかボルナには理解できなかった。しかし、あの人間がまだ生きているとはやはりワンダーの判断は間違っていなかったということだけは再認識したのだった。


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