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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第九十話  過去からの贈り物

ユーリ達が遺跡の中に入った直後のこと―――。


「さて、ここでただ待ってるのも退屈だし模擬戦でもする?」

「いやいやしないでしょ。」

「デリラは…戦うのが好き…。」

「そうですね。能力のせいか元からの性格なのか…。」


いざという時のためにここで待っているとはいえ、何もしないと退屈である。デリラは模擬戦を提案する、最近はあまり本気で暴れる機会もないためこうやってみんなで集まった時にこそ存分に戦えるからである。それはここにいるメンバーはほとんどそうだろう。だが流石にこの状況で模擬戦をするのは…とデリラ以外は思っている。


「それじゃあ先に私達が村に戻った時の話をするよ。」

「何か見つけたと聞きましたが、一体何を?」


そこでアリアは村での出来事を先に皆に説明することにした。


「私達が村に向かう道中と、実家に着いてからしばらくした後魔物と遭遇したの。元々魔物が生息するような地域じゃなかったんだけど。」

「まさか魔族ですか?」

「最初はユーリもそう思ってたんだけど、ランマが決めつけは良くないって。」

「それがさっきユーリが言ってたことだね。」


先程のローラン元団長の遺体が盗まれた時に、ユーリが魔族の仕業であると断定しなかったのはこの出来事があったためと皆納得した。


「それで聞き取り調査をしたらどうやら空間魔法によってどこからか魔物が移動してきてることがわかって、私の《副技能(サイドセンス)》で森の中から魔法の痕跡を見つけることができたの。」

「えっ、アリアも《副技能(サイドセンス)》使えるようになったんだ。」

「ちなみにユーリもだよ。私は魔法の痕跡を追うことができて、ユーリは魔物の名称や特徴がわかるみたい。」

「二人共いいなぁ。私も《副技能(サイドセンス)》欲しいよ。」

「こればっかりは運みたいな物だからね。でも可能性はあるよ。」


副技能(サイドセンス)》についてはまだ未知の部分が圧倒的に多い。どうやって発現するのかは定かではないし、全員が必ず発現するものでもない。ただ現段階でわかっていることは個人の強さはは関係ないということと比較的若い能力者だけが発現するという2点だけである。


「それで森の中に結界が張られている場所があってそこにはワープゲートとって呼ばれる『空間魔法』を封じ込めた門があったの。」

「ワープゲート?」

「ワープゲートって言うのは簡単に言うと長距離を一瞬で移動できる門のことだよ。」

「コータ詳しいんだな。もしかして?」

「うん。僕の世界の言葉で間違いない。」


ディランはコータが詳しいことに対して疑問を投げかける、どうやらワープゲートというのはコータの世界の言葉らしい。最初聞き覚えがなかったのも当然だとアリア達は思った。


「そのワープゲートから魔物が来てたのかい?」

「厳密に言うとそれを制御している人がいたんだけどその人の制御がもう限界で、ワープゲートが繋がってる場所がおかしくなっちゃったみたい。」

「どこと繋がってたの?魔物が出るとなると迷宮(ダンジョン)とか?」

「魔物を管理している島だよ。ユーリの通信機でも連絡が取れないくらい遠い海に浮かぶ島。」

「あの通信機でも!?あれはここから大和国やソレイナでも繋がるはずなのに…。」


通信機が繋がらなかったことを説明するとマークは驚くのと同時に少しショックを受けていた。マークの作った通信機は、恐らく今現在この世で一番長い距離を通信することができると思われる。自信家ではないマークだがそれなりには自信があったのだ。だがそんなどこともわからない距離だから落ち込むことはないとアリアは思った。


「でも一体誰が何の目的でそんな魔物の管理をしてたんだ?」

「それが《6人の勇者》の一人《慈愛の勇者》パティ・テイクスさんは魔物と心を通わせることができる能力だったみたいで、《魔王》との戦いの前に迷惑を掛けないように無人の島で魔物を管理してくれるように恋人のエルタ・トータスさんっていう人に島の管理を頼んでたみたい。」

「ちょ、ちょっと待って《6人の勇者》の一人《慈愛の勇者》だって?」

「また凄いこと聞いてきたな。しかしそれが本当なら《6人の勇者》が実在した時代から生きていることになるが…」

「本来の《魔法人形(ゴーレム)》っていう物で生きながらえていたみたい。」

「本来の《魔法人形ゴーレム》?」

「土で作ったやつより本物の人間のような見た目だったでござるよ。」

「よく見ないと…わからない…。」


皆初めて聞くことに驚きを隠せない様子だ。アリアも説明していてすぐに理解してもらうのは難しいことだなと思っていた。伝説だった《6人の勇者》に関する情報がこんなにもわかると思っていなかったのだから。


「それならその人に色々聞けるんじゃない?《勇者》とか《魔王》のこととか。」

「わかったのは《6人の勇者》は《魔王》と戦った後は誰も帰ってこなかったってこと、後は以前ユーリ達が砂漠で会ったブリジットさんも《時空の勇者》クロノス・メイカーさんに頼まれて迷宮(ダンジョン)で《勇者の秘密》を守っていたということくらいかな。」

「《時空の勇者》?それにクロノス・メイカーって…。」

「ルミの魔力で迷宮遺物(アーティファクト)に出てきた手紙を書いた人だったよね?」

「そこも繋がるのか。」

「?」


ルミだけはポカンとした表情を浮かべていたが他の皆はあの時のことを覚えているようで、理解するのも早かった。


「でもまた聞きに行けば何かわかるかもしれないんじゃない?」

「もうエルタさんはいないんだ。最初に魔物に遭遇したって言ったでしょ?あれはワープゲートを制御する力が弱まっていてエルタさんの限界も近かったの。だから最後はワープゲートがあった遺跡ごと私達で…。」

「そうだったんだ…。」

「恋人だったパティさんの所に行けてるといいな。」

「うん、きっと行けてるよ。」


あれしか選択肢がなかったとはいえエルタさんに直接手を掛けることになったのは非常に心苦しかった。せめてあの世でパティさんに出会えることを願うばかりである。


「二人共帰って来たみたいだよ。」

「何か持ってるけど何だろう?」


迷宮(ダンジョン)もどきから出てきたユーリとシャーロットはどうやら無事に帰ってきたようだ。しかしユーリの手には何か本の様な物が握られているのであった。


◇◆◇◆


時は少し遡り―――

ユーリとシャーロットは彫刻の中を抜けると台座に置かれている一冊の本を見つけた。


「あれは本だよね。迷宮遺物(アーティファクト)なのかな?」

「とりあえず中身を見てみましょう。」


俺達は本へと近づく、シャーロットが本のページを開くと突如光輝き出した。あまりの眩しさに目を開けていられない。


「どうなってるのこれ!」

「わかりません!」


光が落ち着き俺は目を開くすると本の上には綺麗な女性が立っていた、だが身体は透けている。これは映像魔法だろうか。


「えっとあなたは?」

「私はイオ・エヴォリュート《進化の勇者》です。」

「《進化の勇者》?」


また聞いたことのない新たな《勇者》の名前が出てきたことに驚きを隠せなかった。《進化の勇者》、もしかして《6人の勇者》の内の一人なんだろうか。名前だけじゃなくて実際の姿を見るのはこれが初めてだ。


「ちなみにこれは記録なので一方的に喋ってるだけなので返事はできません。」

「どういうこと?」

「つまりこれはただの『映像魔法』ではなくて記録された物ということでしょう。」

「そういうことですね。」

「その割にはなんだか会話が成立してるように感じるけど…。」


記録された映像という割には俺達と彼女の会話が成立しているのは、どうしてだろうか。


「今君達はどうして会話が成立しているのかって疑問に思っているかもしれないけど簡単な話、君達が喋りそうなことを予測しているだけだよ。」

「いやいやそんなことできるかい。」

「簡単といいますけど、そうできることではないですね。」

「ハハハ、さて時間もないから本題に入ろう。先程も言ったけど私は《進化の勇者》、簡単に言うとあなた達の力を強化するためにこれを残すわ。」

「強化するためって…。」

「詳しいことを説明している暇はないの、この本に全て詰め込んであるからこれを読んでね。それじゃあ幸運を祈っているよ、次世代の《勇者》。」


最後にそう言い残してイオ・エヴォリュートは消えていったのだった…。本は自然に閉じられ輝きを失った、シャーロットは本を手に取る。あの本に力を強化するための何かが書いてあるということなのか?《進化の勇者》というくらいだからそういう能力なんだろうが、もう少し色々聞けるとよかったが仕方がない。


「ユーリこれ見てください。」

「何だこれ?何てかいてあるか全然読めない。」

「それにどうやらページによって言語も違うようです。」


イオさんが残してくれた本の中には様々な言語で綴られた文章が書いてあった。しかしそのどれもが今の言葉とは違い俺達には読むことができない。よく見るとエルタさんが壁に書いていた文字に似ている部分もあった。昔使われていた言語だろうか。それならばセドリック団長なら読めるかもしれない。


「とりあえず皆さんの所に戻りましょうか。」

「そうだね。」


俺達は本を持って外へと出るのであった。


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