表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/260

第九話 魔人

「このボクがぁ一番ナンダァァァァァァァ!!!」

「『炎の監獄(フレイム・プリズン)』!!!アリアさん今の内に助けを呼びに行きましょう。」


エレナは今出せる最高の魔法で少しでも時間が稼げればいいと思っていた。だがその考えは甘かった。


「『水の壁(ウォーター・ウォール)』」


ザイルの周りの『炎の監獄(フレイム・プリズン)』は一瞬でかき消されてしまった。あきらかにこの前の模擬戦よりパワーアップしているとエレナは感じていた。


「ガァァァァァコレガオレノチカラダァァァァァ!!!『水爆(ウォーター・ブラスト)』!!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!」

「アリアさん!くっ!」


このままではやられてしまう。早く助けを呼ばなければ、これだけの事態になっているのに誰も駆けつけないのはおかしい。森全体に何かを仕掛けられているとエレナは考えていた。


「『炎の柱(フレイム・ピラー)』!!!」

「キカナイナァァァァ!!!」


これで誰か気付いて、、、ユーリ君、、、。



◇◆◇◆


「そろそろ時間ですね。合図を出しま…」


ドカァン!!


先生がエレナ・アリアペアの演習終了合図を出そうとした瞬間に森から爆発音が聞こえてきた。


「今の爆発音は?!」

「皆さん落ち着いてください!すぐに騎士団が駆け付けてくれます!」


まさか嫌な予感は的中したのか?!森の中のアリア達は無事だろうか、、、『探索(サーチ)』!!!、、、何も見えない?!森全体にモヤの様な物が掛かっている。何か仕掛けられているのか、まずいな…。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「な、何でこんなところに魔物がいるんだ!」


俺が森の方を見ていると目の前に黒いオーラを纏った魔物が森の前に2体現れた。この感覚は村に現れたのと同じ魔物だと直感でわかった。名前は《キラー・エイプ》…!それも2体とは…。まずいなアリア達も心配だしどうする…?


「「クキィィィィ!!」」

「皆!先生の後ろに集まって!『防御・正方形プロテクション・スクエア』!!先生の後ろに入れば絶対大丈夫だから!」

ガキィン!!

「「クキャァァァァ…。」」


《キラー・エイプ》はこちらに向かって突っ込んできたが先生が俺達を囲むように貼った防御魔法で弾かれて吹っ飛んでいった。流石先生だまったく破られる感じがしない、これなら騎士団が来るまで耐えることができるだろう。


「先生アリアとエレナが心配なので俺は森の中に向かいます!」

「ユーリ!俺も行こう!」

「ありがとうガイウス!」

「生徒だけで行かせるのは危険だけど緊急事態だから仕方ないわ!もし魔物に会っても戦わずに逃げるのよ!」

「はい!!」


俺は自分とガイウスに『身体強化(フィジカル・ブースト)』をかけて森の中へと入っていった。しかし闇雲に探し回っても埒が明かない、どうやって探す、、、。


ゴォォォォォォォォ!!


俺がどうやってアリア達を探そうか考えていると遠くから炎の柱が出ていた。あれはエレナの魔法だ!


「ガイウス!あの炎の柱のところだ!」

「わかった!」



◇◆◇◆


「はぁはぁ…アリアさん大丈夫?」

「う、うん…なんとか。」


二人はエレナの『炎の柱(フレイム・ピラー)』でザイルの気を逸らした後、アリアの『身体強化(フィジカル・ブースト)』で距離を取り木の陰に隠れていた。


「先程の魔法で誰か気づいてくれるといいんですが…。」

「大丈夫。必ずユーリが来てくれる。」

「はい。持ちこたえましょう。」

「ミツケタ!!!クラエ!!!『大洪水(オーバーフロー)』!!!」


ザイルの回りから大量の水が湧き出しそれは森の木々をなぎ倒しながらエレナ達の方へ襲いかかってきた。


「なんて規模の魔法なの?!これでは逃げる場所が!」

「エレナさん!お願い…ユーリ!!」

「『防御・正方形プロテクション・スクエア』!!!どうやらギリギリ間に合ったみたいだね。」

「ユーリ!」

「ユーリさん!」

「俺もいるぞ!『岩突風(ロック・ブラスト)』!!!」


俺は間一髪のところで先程先生の使っていた防御魔法でアリアとエレナの前に立ち津波を防ぐことができた。

ガイウスは魔物のような者に岩の塊を勢いよく飛ばしたが、まるで効いていない。


「あ、あれはザイルなのか、、、?」

「あの姿…魔人になっているのか?」


俺とガイウスが見た人型で角の生えた魔物のような物、あれが魔人というやつなんだろうか…?


「残念ですが、あれがザイルさんです。私達の目の前で何か薬の様な物を服用したら急に魔力が膨れ上がって、あの様な姿に変貌してしまいました…。もう私達の言葉は届きません。」

「エレナさんを狙っているみたいだったよ。この前の復讐みたい…。」

「すまないスカーレット。こうなってしまったのは俺の責任だ。」

「謝罪はあとでお聞きします。ユーリ君、助けは来ますか?」

「状況はかなり悪いね、実は森の外皆のいる方にも魔物が出たんだ。先生が騎士団が来るまで抑えてくれるけど、こちらまで来るのは時間がかかるだろうね。エレナの魔法のおかげで僕達はここまで来れたけど、森全体に何か魔法がかけられているようだし。」


ここまで来るのにも手こずってしまったが、森全体に掛けられている魔法を解除しないと正直森から出るのも怪しい。エレナの魔法を持ちけることができたのも、近くいたという偶然もあっただろう。


「ここにいる4人でザイルを倒すしかない。」

「やるしかないですね…。」

「元よりそのつもりだ!」

「わ、私もやるよ!」

「ですが生半可な攻撃は通じませんよ。」


たしかに先程のガイウスの岩突風(ロック・ブラスト)も破壊力はあったと思ったがまるで効いていなかった。エレナが逃げていたのもそれが理由だろう。果たして俺でも攻撃が通るかどうか…。


「『合体魔法(シンクロ・キャスト)』をやってみるのはどうかな?」

「『合体魔法(シンクロ・キャスト)』ですか?」

「ふむ、聞いたことはあるが…。」


合体魔法(シンクロ・キャスト)』は魔法を合わせて発動させることで協力な魔法を出すことができる技術だ。たしかにそれならできるかもしれないけど、、、。


「アリアあれはまだ成功したことないだろ?」

「うん。でもエレナさんがいたらできる気がするの。」

「ガァァァァァァァァァ!!!」

「考えている時間はなさそうだ、やってみよう!!」

「俺が隙を作る!お前たちは『合体魔法(シンクロ・キャスト)』に専念しろ!」

「わかった!」


ガイスはザイルの正面から向かっていった。そちらの方が自分に注意を向けることができると考えたからだ。


「『大地振動(ガイア・クエイク)』!」


ガイウスが放った『大地振動(ガイア・クエイク)』はザイルの足元を揺らし、膝を付かせた。


「ガァァァァァァ!!!」

「ザイルゥゥゥゥゥ!!!」


ガイウスは責任を感じていた。自分を慕ってくれているザイルがこんな姿になってしまったことに。もちろん彼が悪いわけではないが、それでも責任を感じずにはいられなかった。だが今の自分に彼を止めることができないのはわかっていた。


「だから少しでも時間を稼ぐ!うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「『泡爆発(バブル・ボム)』!!!」

「ぐわぁぁぁ!」


圧倒的な力の前にガイウスは成す術もない。それでも諦めるわけにはいかない、その一心で立ち上がる。


「俺の今出せる最高をぶつける!『大地破壊(ガイア・ブレイク)』!!!」

「ガァァァァァ!!!」

「後は…任せた。」


ザイルに向かって地面から無数の岩が突き刺さる。ダメージを与えることはできたが、ザイルの歩みは止まらない。ガイウスはここまでだと思った…あとは彼らに任せることにして意識を失った。


「いくよ!エレナ、アリア!」

「「はい!」」

「『炎の壁(フレイム・ウォール)』!」

「『突風(エア・ブラスト)』!」

「はぁぁぁ!『合体魔法(シンクロ・キャスト)灼熱旋風(フレイム・サイクロン)』!!!」

「ガァァァァァァァ!!!『大洪水(オーバーフロー)』ドウシテキエナインダァ…グワァァァァァァァ!!!」


ザイルに向かって放たれた炎は彼の身体を焼き付くす。彼の水魔法でもその炎の勢いは止まらない。


「グワァァァァァァァァァァ!タズケテ、、、タズケテ、、、。」


炎が消えたときには黒焦げのザイルが膝を付いて項垂れていた。息はしているどうにか助けることはできないだろうか…。『治癒魔法(ヒール)』は使えるが、薬の方は除去できるだろうかできたとして元に戻せるだろうか…考えている暇はない!一か八かだ!


「『治癒魔法(ヒール)』!!アリア!薬を除去できるような魔法を使えないかな?」

「やってみる!うーん、これなら!『解毒魔法(ポイズン・ケア)』!」

「ウゥ…あ、あぁ。」


ザイルの姿は禍々しい魔人の姿から元の人間の姿に戻っていった。呼吸もしているし、傷もなさそうだ。


「ユーリ、リーズベルト…ありがとう。」

「お二人は本当に想像以上に凄いですね…。」

「いや、エレナとガイウスも大した物だよ。…後はどうやって森から出るかだね。」


俺がそう口にした直後、ものすごい突風に襲われたと同時に、森の雰囲気も元に戻ったようだった。魔法の形跡はない、これで外に出ることができそうだ。


「うぅ…凄い強風だったね。」

「…ですね。」

「だけど森の異様な雰囲気も一緒になくなったみたいだ。皆の所に戻ろう。ザイルも早く治療を受けさせないと。」

「そうだな。」


ザイルはガイウスに背負われて、俺達は森の外へと向かった。


少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

皆さまの応援が励みになりますので、ぜひ下部よりブックマーク・評価等お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ