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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第八十八話 悪い知らせ

俺達は王都へと帰ってくる、もうすっかり暗くなっている。屋敷に帰るとまだマルクさんもユキさんも帰ってきてないようだった。仕方ない予定よりも早く帰って来たのは俺達だし、ちゃんと休んで欲しいからな。とはいえ何かあった時のために連絡を取れるようにしておいてもいいだろう。マークにあったら二人分通信用魔道具を頼んでおこう。


「マルクさんとユキさんがいない間は私が頑張ります!」

「うん、無理のない範囲でよろしくね。」

「私達も手伝うから。」


二人がいない分、シロは自分が頑張らなくちゃと張り切っているようだ。その可愛らしい姿にとても癒やされる、とはいえ流石に皆の分をシロ一人で世話をするのは無理だから俺達もなるべく自分の事は自分でやることにした。夕飯を食べながら今後の予定について話をする。


「シャーロット殿のところへはいつ行くでござるか。」

「明日、皆を集めて話をするって言ってたよ。」

「皆…?」

「俺達の友達、《勇者》についての事情も詳しく知ってるから。この際だから俺達がここまであった出来事を二人にも話しておくよ。」


よくよく考えてみればランマとコーデリアにはまだこの一年間であったことを全て話してはいなかった。情報共有という意味でも一旦整理しておくことにした。二人は俺の話を聞いて驚いていた。


「なんだか一度に色々話されて頭がパニックでござるよ。」

「私も…。」

「そうだね。本当に色々あったから、でもこれで明日の話に必要な事前情報は頭に入ったと思うよ。」

「それでもまだまだわからないことは多いけどね。シャーロットの新しくわかったことってなんだろうね?」

「《勇者》に関することではあると思うんだけどね。もしかしたらランマの探してる相手の情報もわかるかも。」

「黒い甲冑の騎士でござるか…拙者は冒険者として情報を収集してたけど何もわからなかったでござる。」


ランマはこの国に来てからというものずっと黒い甲冑の騎士の情報を集めていた、セルベスタ王国1番の大規模冒険者ギルドがこの王都にあるわけだが、そこで手に入らないと言うことはかなり遠くの国にいるか、もしくは街などに出入りしていないのかもしれない。それに常に黒い甲冑を着ているわけではなかったら、それしかわからない少ない情報では探すのは難しいかも知れない。


「大丈夫、それはそれで探し方を工夫すればいいだけだよ。大きな街には出入りしていないのかもしれないし、もしかしたら外に拠点があるとかね。」

「そう…でござるな。絶対に諦めずに探してみせるでござる。」

「明日何かわかるといいね。」


俺は俯いて落ち込んでいるランマに励ましの言葉を掛ける。少しは元気を出してくれたようで何よりだ。そんな話をしつつ食事を終わらせた俺達は明日に備えて就寝するのであった。翌日、朝早くから城へと向かった。門へ辿り着くとカルロスが出迎えてくれた。


「やぁ、久し振りカルロス。元気だったかい?」

「はい、皆様も元気そうで何よりです。何やら実家の方で騒動に巻き込まれたと聞いておりますが…。」

「そうだね、それも後で皆が揃ったら話すよ。かなり重要なことだから。そっちも何か分かったんだって?」

「はい、こちらもかなり重要なことなので皆さんが揃ってからお話します。」


軽く談笑した後、カルロスに案内された部屋へと入る。案内された部屋はいいつもと違い大きな部屋であった。いやいつも大きな部屋ではあるのだが、この部屋はそれよりももっと多い人数が座れる椅子と机の数だ。一体何人ここに来るのだろうか。俺達以外にはまだ誰も来ていないようだった。


「それでは皆さんが来るまでお待ち下さい。」

「わかったよ。」


俺達はしばらく待っているといつもの皆が部屋に入ってきた。エレナ、フルー、コータ、デリラ、ウール、ディランそれに珍しくマークとルミもいる。


「やぁ皆、もう帰ってたんだ。」

「シャーロットに呼ばれてね。ユーリ達も早かったじゃないか。」

「実は色々あって。」

「アリア殿の言う通り、ユーリ殿は本当にとらぶるめいかーでござったよ。」

「ユーリ君は巻き込まれ体質ですから。」

「変なこと教えないでよ!」


エレナはランマが知らないのをいいことに間違った言葉を教えているようだ。何度も言うが俺はトラブルメイカーではないのだトラブルの方が俺によってくるのだ。それに今回のことに限って言えばたまたまとはいえ重要なことを知るきっかけにもなったのだから、むしろ褒めてもらいところだ。


「皆揃ってますね。」

「シャーロット久し振りだ…!?」


俺は部屋に入ってきたシャーロットに挨拶をしたが、その後ろに続いて入ってきた見知った人物達にとても驚いた。


「セシリアさん!それにブランシェさんも…。」

「やぁユーリ、こないだ以来だな。」

「久し振りなのにゃ!」

「どうしてお二人がここに?」

「私達だけではないぞ。」


さらにその後ろにオリバー団長、アルフレッド団長、クリス団長、セドリック団長、イヴァンさんが続いて部屋に入ってきた。全ての騎士団長がここに揃ったということになる、これはかなり珍しいことと考えていいだろう。一体シャーロットはどんな新しい情報を手に入れたというのか…。


「さて皆さん揃ったところで始めさせていただきます。」

「私、緊張しすぎて吐きそうなんだけど…。」

「僕も体調悪くなってきた…。」

「…あとで戦ってもらえるか頼んでもいいかな?」


気持ちはわからないでもないが、もう少し落ち着いて欲しいところである特にデリラは。ディランも平静を装ってはいるが、なんだか怯えているような気もする。以前の報酬でたしかセドリック団長と模擬戦をしたんだったな、そこでボコボコにされたんだろう。そしてそんな団長クラスが揃い踏みとなると動揺するなという方が無理なんだろう。


「そんなに固くならなくて大丈夫ですよ。ここにいる皆さんは関係者ということで集めていますから。」

「それで姫様は一体何の用で俺達を集めたんだ?」

「ワシらを集めるということは大層なことがあったと考えていいのかな。」

「はい、主に皆さんにお話したいことは2つ。まずは悪い報告からですが…前騎士団長ローラン・モータルの死体が何者かによって盗まれました。」

「何者かによって盗まれた?」

「一体どういうことだ?」


シャーロットの口から語られたことはあまりの衝撃的だった。前騎士団長ローラン・モータル、名前は初めて聞いたがたしか《聖剣デュランダル》を持ちセシリアさんに《聖剣》の使い方を教えた人だったはず。それに父さんや母さん、アリアの両親の上司ってことになるのかな。先の魔物の《大進行(スタンピード)》で死んだって言ってたな。


「発見されたのは3日前のことです。お墓参りに来たモータル家の方が墓が荒らされていることに気付いたようで調べた結果、遺体がなくなっていたそうです。」


すると強烈な魔力を感じる、俺の隣りに座っている、アリアが「ひっ」と小さく悲鳴を漏らした。セシリアさんとブランシェさんからとんでもない魔力の上昇を感じた。アリアだけじゃない皆恐怖している、普段あんなに温厚な二人がここまで激怒している姿は初めて見る。


「抑えろ二人共。」

「そうじゃここには学生もいることだしのぉ。」

「もう少し落ち着きなさい。」


団長三人の呼びかけによってセシリアさんとブランシェさんの魔力は落ち着く。よくみると部屋のガラスに日々が入っている。魔力が上がっただけでここまで現実に干渉するなんて…。


「それで犯人はわかっているのかい?」

「いえ。」

「魔族じゃないのか?」

「…ユーリ君はどう思いますか?」


シャーロットが俺に振ってくる。その場に居た全員がこちらを振り向く、一番魔族と戦っているから意見を聞きたいということだろうがメンバーを考えるとちょっとプレッシャーを感じる。さて今回の犯人が魔族なのかということだが…正直わからないというのが本音だ。


「遺体を盗んだ目的はわからないけど、魔族の可能性はあるかもしれない。」

「そうですか、団長の皆さんは一度自分の領地に戻っていただいて他にも遺体が盗まれていないか調査をするようにお願いします。この件は引き続き調査いたしますので、何かわかったらまた改めて連絡いたします。」

「わかりました。」

「うむ。」


どうやら団長達はここで帰るようだ。順番に部屋から出ていく、セシリアさんとブランシェさんの横顔はとても怒っているような悲しんでいるような顔をしていた。早く犯人を見つけたいところだ。


「ふぅ…緊張したぁ。」

「さっきのはやばかったよね。」

「ガラスにヒビ入ってるんだけど…。」


団長達が出ていった後はいつものメンバーだけになったので皆緊張が解けたようで、少し緩い空気になっていた。ただでさえ緊張する空気の中あんな話を聞いたら流石に皆も疲れただろう。


「いやまさか団長達をここに連れてくるとは思わなかったよ。」

「たまたま全員揃ったので、個別に話すよりは纏めた方が効率が良いかと思いまして。」

「団長相手にそんなことができるのはシャーロットくらいだけどね。」

「それで新しい情報っていうのは?」


今回はシャーロットが何やら新しい情報がわかったということで早めに帰ってきたのだ。俺達だけ残したということは《勇者》関連だろうか?


「そうでしたね。実は《勇者》に関する新たな《迷宮遺物(アーティファクト)》の情報が見つかったのですが…。」

「ですが?」

「とりあえず見ていただいた方が早いかもしれません。」


そういってシャーロットは困惑した表情を浮かべるのであった。一体どういうことなんだろうか。

少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

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