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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第八十四話 魔物の謎

長期休暇で実家へと帰ってきた俺達は毎日色々なことをして過ごしていた。釣りに行ったり、鍛錬したり、村の畑を耕したりとても充実している。すっかり来る時に出会った魔物のことを忘れていたのだが、思い出す出来事が起こってしまうのだった。


「皆、大変じゃ!」

「どうしたんですか村長。」

「ま、魔物が現れたのじゃ!」

「魔物が村に現れただって!?」


どうやら村に魔物が現れたので村長は俺達に知らせに来たらしい。この村には常駐している冒険者などはいない。基本的に魔物が出た時は依頼を出して、冒険者や騎士団が対処してくれるまでは村は守りを固めるというスタイルだ。あとはだから俺達に知らせに来たのだろう、すぐに討伐することができるし元々何かあればすぐに言うように言ってあったしな。それにしても村の中に魔物が出たというのは俺が知る限り始めてのことだ。


「わかりました!皆、すぐに向かおう!」

「うん!」

「了解でござる!」


俺達は急いで魔物の元へと向かう。暴れている魔物は《ブラスト・クロウ》一体だけだ。俺は村に来る前に遭遇した魔物を思い出す、あの時と同様に初めて見る魔物だ。特徴はその大きな翼から風を起こすことができるらしい。


「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」

「キュェェェェェ!!!!!」

「どうやら一体だけのようだね。」

「他にはいないようでござる。」


だがしそんなに強い魔物ではなかったため、一撃で倒すことが出来た。そして俺は来たときに遭遇した魔物のことを思い出した。やはりこんなに魔物が出現するということは異常だ、何か原因があるのではないかと思わざるを得ない。


「やっぱり何か変だよね。来る時もそうだったけど。」

「そうでござるな。明らかにおかしいのは間違いないでござるが。」

「まさか…魔族…?」


コーデリアの言葉に一瞬緊張が走る。たしかに魔族の可能性もある、だけど魔族にしては中途半端なようにも感じる。出現する魔物は一体だったし、出現場所にも共通点は特にはないから俺達を狙ってきたというけではないだろう。かといってこの辺りに特別な何かがあるわけではない。


「うーん、それにしてはちょっと魔物が少ないような気もするよ。」

「でも決めつけは良くないでござるよ。」

「ランマの言う通りだ。とりあえずその可能性も考えつつ、魔物が出現した状況を詳しく聞いてみよう。」


魔族にしては爪が甘いから魔族の犯行じゃない、という決めつけはたしかに良くない。とりあえず俺達は魔物が発生した状況を詳しく村人に聞き込みをした。


「急に何もないとこから魔物が現れたんだよ!」

「黒い穴とか開きませんでした?」

「いや、そういうのはなかったな。本当にそこの空中から出てきたって感じだ。上手く言えなくて申し訳ねぇな。」

「いいんですよ。それだけでも十分助かります!」


魔族が使うあの黒い穴を出す移動ではないようだ。それに話を聞いている限りでは『召喚(サモン)』されたというわけではないようにも感じる。もし『召喚(サモン)』された場合なら魔法陣が出るだろうし、ガルタニア国での一件のように魔物を『召喚(サモン)』するなら何か代償がいるだろう。それこそ人間のような、だがそういったことではないようだ。


「しかし、どうやって魔物は現れたんだろうか。」

「うーん、多分移動系の魔法だとは思うんだけど…」

「そういう魔法には拙者も心当たりがないでござる。」

「同じく…。」


こういう魔法に詳しい人といえば、俺は自分の腕に付いている通信機の存在を思い出す。そして魔力を込めて通信を取る。


「イヴァンさん聞こえますか?」

「…やぁユーリ君、腕輪の調子は良さそうだね。連絡をしてきたということは何かあったのか?」

「そうなんです。実は…」


俺は今回の件をイヴァンに相談する。何かこういったことができそうな魔法に心当たりはないのかと。するとイヴァンは少し待ってくれというと音声が途切れた。暫く待つと着信が入る。


「それは恐らく空間魔法だろう。」

「その声はセドリック団長!」

「いまイヴァンから聞いてね。私のほうが専門分野かと思って連絡させてもらったよ。」

「そうだったんですか。それで空間魔法というのは?」

「君も魔法袋(マジック・ポーチ)は持っているだろう。それと同じ空間魔法で間違いないよ。」


空間魔法について俺はあまり詳しくない。魔法袋(マジック・ポーチ)のように見た目は小さいが中身を別の空間につなげることで容量を増やしているということ、そして使い手がかなりおらず希少であることは知っているがそれくらいだ。


「空間魔法には2つの場所を繋げて移動する魔法があるんだ。おそらく魔物が突然出現したように感じたのはそれだろう。ちなみに私は直接見たわけではないが、魔族が使用している黒い穴も恐らく空間魔法による移動だ。」

「なるほど空間魔法にはそんな使い方があったんですか。それに魔族のもそうだったとは。」


たしかに魔族が出すあの黒い穴による移動はいつもどこからともなく発生し自由に行き来している。そうかあれも空間魔法による移動だったのか。


「そして空間魔法はその特徴として距離や場所の制限がないんだ。だからどこの場所からどこの場所に移動するのも自由ってことだ。」

「つまり出現したこの二体の魔物はどこから来たのか特定するのは難しいんでしょうか?」

「そうだね。その空間魔法の使い手が入ればまた話も変わってくるとは思うのだが…。」


空間魔法の使い手であれば観測することができるということだろうか、しかしそんなあてはない。ふとアリアに目をやると何かを言いたそうにもじもじしながらこちらを見ていた。


「あのもしかしたら…私わかるかも。」

「アリアどういうこと?」

「私、大和国でも霧の結界に皆より少し早く気付いたでしょ?最近なんとなく発動した魔法の痕跡がわかるの。」


言われてみれば、大和国で九人剣客が仕掛けた霧の結界にいち早く気付いたのはアリアだった。もしかして魔法の痕跡を探ることができるのがアリアの《副技能(サイドセンス)》なのかもしれない。


「もしかしてそれがアリアの《副技能(サイドセンス)》なんじゃないかな?」

「私の《副技能(サイドセンス)》?たしかにそうかも。」

「それじゃあさっきの人に聞いた魔物が出現した場所と来る時に魔物と遭遇した場所までいって確かめてみよう。」

「うん。わかった。」


俺達は魔物が出現したという場所に来てみた。俺には特別何か変わったところがあるようには感じない。しかしアリアはどうやら違うらしい。


「どうアリア。何かわかりそう?」

「うん…やっぱりここで空間魔法が使われた痕跡はわかるよ。でもどこから移動してきたかまではわからない。」

「そっか。それじゃあもう一箇所の方も行ってみよう。」


今度は来る時に魔物と遭遇した地点まで向かった。先程同様に目を瞑りアリアは集中する。


「…?ここかなり痕跡が大きいよ。もしかしたらどこから来たのかわかるかも!」

「流石でござるな!」

「凄い…。」

「多分、森の方だよ。」

「森の方?それって村の近くのだよね。」

「そう。正確な位置まではわからないけど、私達がよく遊んでた村の森のさらに奥の方から来たんだと思う。」

「でもおかしいよね?」

「何がおかしいでござるか?」

「あの森はそんなに大きくないし、奥なんてないんだよ。」


俺達は子供の頃から森で遊んでいたからわかるが、あの森はそんなに大きくないのだ。それこそ子供でも回れてしまうほどだ。そして森の中には魔物などいない、だから俺達子供だけでも入ることが許されていたのだから。だがアリアは森の奥から来たと言っている、間違いを言っているようには思えない。ということはまさか…


「認識阻害が森には掛けられている?」

「たしかにそれならわからなくても無理はないでござるな。」

「でも…目的がわからない…。」

「認識阻害を掛ける理由なんて1つだ、何かを隠そうとしているんだ。」

「この魔物が空間魔法で移動してきた秘密と関係あるのかな?」

「何もないってことはないでござるな。」


俺達は思わぬ所が繋がったことに驚きを隠せなかった。今まで疑いもしなかったが村の近くの森には何か隠された秘密があるのだ。早速、森へと向かうことにしたのだった。

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