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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第八十二話 里帰り

皆無事、進級試験を終えることができた。聞く所によるとデリラとウールは結構ギリギリだったらしい。というのも二人はペアで決められた魔物を討伐するはずだったらしいのだが、デリラがそこら中の魔物をお構いなしに討伐するせいで目的の魔物がずっと隠れてしまっていたらしい。二人は索敵が得意ではないから見つけるのが大変だったとか。ある意味相性が悪かったのだ、もしかしたらそういう部分も試験の一環として考えられているのかもしれない。


「それじゃあ皆、進級試験合格おめでとうってことで乾杯!」

「「「「「乾杯!!!!!」」」」」


俺達は長期休暇に入る前に、最終日にお疲れ様パーティーをうちの屋敷で開いている。ついでにランマとコーデリアの歓迎会も兼ねている。メンバーはアリア、エレナ、デリラ、ウール、フルー、コータ、ディラン、マーク、ルミである。シャーロットとカルロスは忙しいので不参加である。


「私…コーデリア・ブラウ…よろしく。」

「うん!よろしくね!」

「強いのかな?早く戦いたいよ!」

「コーデリアはまだ魔法を使い始めたのは最近なんだ。だから模擬戦といえど戦うのはもうちょっと先ね。」

「そうなのかー残念。」


コーデリアは皆と初対面なので自己紹介をしてもらう。デリラはコーデリアと戦えなくて残念そうにしているが、まだまだ二人を戦わせるわけにはいかないのだ。いくらコーデリアが《勇者》だからとはいえ、デリラの方が圧倒的に強者であるからだ。勝負は目に見えているし、手加減をしてもらってもケガをする危険は高いからな。


「ところでユーリ。そろそろ《聖剣》について教えてもらってもいいんじゃないか?」

「あーそうだよ!どうやって《聖剣》手に入れたの?」

「そうだね。ぜひ知りたいよ。」

「どこから話していいやら…。」


俺はガルタニアでの騒動を皆に話した。《聖剣》伝説について、勇者教が起こした魔物騒動。《序列》魔族との戦い、そして《聖剣》への覚醒へと至ったこと。


「ふーん。勇者教は魔族と繋がってたんだ。」

「あくまでガルタニア国周辺に来てた連中はだけどね。俺はあんまり詳しくないけどシャーロットが言うにはそんなことを起こすような連中ではないみたいだし。」

「私もそこまでの物は聞いたことがないですね。やはり魔族に操られていたと考えるのが自然ではないでしょうか?」

「人の弱みにつけ込むのが得意な連中だからね。」


魔族は人間族を操り、人間族同士を争わせることに長けている。ザイルの《魔人薬》、聖騎士祭のイヴァン、ヴェルス帝国の《制限失薬(リミットロスト)》、それに命と引換えに魔物を『召喚(サモン)』する今回のこともだ。弱みにつけ込み同じ人間同士を争わせ戦力を減らす、魔族側にしてみれば一石二鳥ということだろう。早く人間族同士も同盟が結べるといんだが…。


「それにしてもついに《序列》魔族を倒すことができたのか。流石だな。」

「いや、正直危なかったけどね。この《聖剣クラレント》が応えてくれなかったらまた死んでいたよ。」

「まさか普通の剣が《聖剣》になるなんてね。途中で変わるなんて話し今まで聞いたこと無いもんね。」

「ユーリが特殊なだけなんじゃないの?」

「言えてるね。」


こればかりは俺も否定出来ないのがなんとも。これも《7人目の勇者》のおかげなのか…。でも《勇者》が《聖剣》を使っていたという情報はないんだよな。実際一番使えそうな《剣の勇者》であるシャーロットは《聖剣》を使えない気がすると言っていたし。


「だけど俺が倒した《序列》魔族は《序列十二位》だった。それ以上の奴らに勝てるかどうかは…。」

「ユーリを殺した相手は《序列七位》だから微妙なとこだね。」

「《聖剣クラレント》には《聖》属性が付与されているから、奴らの防御を突破することができたよ。」

「それについて少し疑問だったんだけど、アリアとエレナは《聖》属性を付与させて攻撃したからダメージが通ったのはわかるんだけど、ディランはどうして攻撃が通ったんだろう。」


コータは疑問を投げかける、たしかに言われてみればそうかもしれない。今回《聖剣クラレント》が覚醒する前まではとにかく手数で突破という風に考えていたが、よくよく思えばディランは攻撃を当てているのだ。たまたま防御を貼っていなかった?ということはないだろう。ここまで判明している《序列》魔族は全員身体に魔力の膜みたいな物を貼っている。


「俺達は最初とにかく攻撃回数を増やして突破したんだ。だけどそれじゃあ破っても掠り傷程度しか与えることが出来なかった。あの時ディランはどうやってダメージを与えたんだっけ?」

「俺の試作段階の魔法『雷身体強化ライトニング・フィジカル・ブースト』と父から魔力を受け取って父のオリジナル魔法『雷帝の一撃イヴァン・ライトニングブロー』を放ったんだ。」

「なるほど、単純な攻撃力だけだったらアリア達とそう変わらなさそうだけど。もしかしたら二種類の魔力を合わせるっていうのがポイントなのかもしれない。」

「二種類の魔力?」

「そう、あくまでも仮説の段階だけどね。そこに俺達と魔族との魔法の違いがあるのかもしれない。まあ当分は《聖》属性が使えない場合は戦わないように気をつけないとね。」


有効的な手段を持ってない内は戦わずに逃げるほうがいい。もっとも、自分の命の危機だからといって魔族に襲われている人を置いて逃げ出すようなメンバーはここにはいないだろうけど。


「僕の方でも魔族にについて調べてみるよ。」

「ありがとうマーク。頼りにしてるよ。」

「すっかりマークも宮廷魔道士団って感じだねぇ。」

「そうそう、この腕輪もマークに貰ったんだよ。」

「えー!いいなぁ。」


俺はマークに貰った腕輪の説明し、皆に見せびらかす。ランマとコーデリアも通信用魔道具を受け取ったことを皆に話していた。これで一応全員持っているはずだ。俺とはある程度の距離は通信できるはずだ。


「もっと改良して誰でも使えるようにするからもう少し待っててね。」

「楽しみにしているよ。」

「マーク君、本当に生き生きしていますね。」

「たしかに!」


マークは照れくさそうに笑う。元々あんまり戦闘が得意ではないマークはこういった研究職の方が向いていたのだろう。俺達も友達してとても鼻が高い、もしかしたら歴史に名を残すような何かを作ってくれるかも知れないな。そして話題は長期休暇へと移っていく。


「皆は実家に帰るのかい?」

「私は帰るつもりだよ。」

「僕も。」

「私も帰ろうと思います。ユーリ君達も帰るんですよね?」

「うん、そうだよ。ついでにマルクさんやユキさんにも休んでほしいからランマとコーデリアとシロを連れて行こうと思って。」


いつも二人には俺達の世話をしてもらっているせいで、なかなか休めていないだろうからアリアと相談してコーデリアとランマとシロも一緒に連れて行って長期休暇を利用して二人には休んでもらおうと思っているのだ。マルクさんは久々に国外へ行くらしい、ユキさんは大和国の実祖母であるキクさんに会いに行ってみるそうだ。


「ユーリの家…どんなとこ…?」

「うーん、特になにもないかな。」

「そうだね、本当に小さな村だから。でも良いところだよ!」

「楽しみでござるな!」

「俺は実家がもうないから普段通り寮にいるつもりだ。」


ディランがそう言うと一瞬重い空気が流れる。イヴァンが聖騎士祭での責任を取った結果屋敷を売り払ったために今は寮で暮らしている。そのため帰る実家そのものがないのだ。


「今のは笑う所なんだが…?」

「もーディランの冗談は笑えないよ!」

「す、すまない。」


どうやらディランなりの冗談だったようだが、ちょっとリアル過ぎて笑えなかった。そうこうしながらも俺達は帰省前のパーティーを楽しみ夜は更けていくのだった。そして翌日。


「それじゃあ俺達は行ってくるのでお二人も休暇楽しんでくださいね。」

「はい、ありがとうございます。」

「皆さんも道中お気をつけください。シロしっかり皆さんのお世話をするんですよ。」

「はい!お任せください!」

「いってきまーす!」


俺達は実家へと向かい始めた。ちなみに馬車はシャーロットが貸してくれた、しかも御者付きで。一応なにかあった時にすぐに王都へ戻れるようにとのことだ。そう言われると何か起こってしまいそうな気はするがシャーロット曰く大丈夫だそうだ。彼女の《副技能(サイドセンス)》は直近で起こる大きな出来事を予測できるらしい。まだまだはっきりわかるわけではないらしいがガルタニアで自覚できるようになったとか。シャーロットを信じて大丈夫だろう。


「母さん元気かな。」

「うん!村の皆もね!」


俺は約10ヶ月ぶりに帰る実家に心踊らせていたのだった。


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