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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第八十一話 王都の散策

昨日は本当に大変だった。まさか師匠とセシリアさんの間に深い?因縁があったとはな。というかあそこが同級生というのもちょっと信じられない。見た目は本当に違うからな女性はなんというか凄いな。さて今日は皆進級試験の実技を行っている。一足先に進級試験に合格した俺は今日は学校に行かなくても良いらしく、ちょっと早めの長期休暇を満喫していた。まあ間が空いているから明日と明後日は普通に学校に行くのだけれど。


「朝からこんなに優雅なのは久し振りだなぁ。」

「そうでござるね。拙者も冒険に行かないのは久し振りでござるよ。」

「…私も…ソレイナ騎士団の…朝は早い…。こんなにゆっくりなの…久し振り…。」

「まあ騎士団は朝から稽古があったりするからね。」


アリアは一人で朝食を済ませ学校に行っているので今日はランマとコーデリアの二人と朝食を取っている。ランマはいつももっと早いし、コーデリアは俺達に合わせて毎朝起きてくれていた。しかし特に出かける予定があるわけではない。コーデリアはシロと一緒にユキさんやマルクさんの魔法や戦闘知識を学んでいるのだ。学園に編入制度がないからな、もし仮に入学するなら来年俺達の後輩として入学するしかない。1つ年上で1個下というのはなんともややこしい話である。


「それで今日はどこを案内してくれるでござるか?」

「それは行ってからのお楽しみということで。」

「…楽しみ。」


俺達は朝食を済ませ、街へと繰り出すのだった。まず初めに二人を連れて行ったのは城だった。


「二人共、何度か来ていると思うけどここがセルベスタ王国城だよ。」

「ここは拙者も来たことがあるでござるよ。」

「私も…。」

「今日はさらにその奥に案内します。といっても案内をするのは俺じゃないんだけどね。俺も行くのは初めてなんだ。」

「「?」」


城の奥に進むとカルロスが出迎えをしてくれた。シャーロットとカルロスは俺と同じ様にガルタニアでのことで進級試験をすでに終わらせている。だから俺と同じ様に今日は学校に行かなくてもいいので案内役をたのんでおいた。シャーロットはなにやらやることがあるそうで忙しいらしい。


「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

「ランマはすでに俺の友達に会っていると思うけど、今から行くところにも俺の友達がいるんだ。コーデリアはエレナとアリア以外に初めてだと思うけど。」


カルロスに連れられて城の奥へと進んでいく。中庭を通りしばらく進んでいくと研究所のような場所が見えてきた。入り口にはイヴァンとルミそしてマークが出迎えてくれていた。


「久し振りだねマーク!」

「うん!ユーリ君も元気そうで何よりだよ。」

「君の噂は我々の耳にも入っているよ。一度死んで蘇ったとか、《聖剣》を手に入れたとかね。」

「嘘ではないのがなんともいえないところですね。」

「ようこそ、研究所へ。初めてましてのお嬢さん方もいるしとりあえず中で話そう。」


イヴァンに案内され研究所の中に入ると様々な魔法道具や迷宮遺物(アーティファクト)が置かれており、宮廷魔道士団員が研究に勤しんでいるようだった。応接室のような所に通されコーデリアとランマは自己紹介をする。


「ここでは色々な魔法道具や迷宮遺物(アーティファクト)を日々研究や開発をしているんだ。」

「大和国ではこういう施設はなかったからなんだか新鮮でござるよ。」

「ソレイナ国も…ここまでの施設はない…。」

「ここまで研究に没頭できるのもセドリック団長のおかげだがね。マークもルミも頑張ってくれているよ。」

「いえいえそんなことありませんよ。」

「そういえば、マークは進級というかこのまま宮廷魔道士団員の見習いとしてやっていくんだよね?」

「そうだよ。僕は戦闘することがあんまり得意じゃないから…」


そう言うとマークは俯くがイヴァンが肩に手をおく。


「そう悲観することはないさ、君はここで十分に活躍しているじゃないか。そうだあれをユーリに渡してあげたらどうだろうか。」

「そうですね!持ってきます。」

「?」


マークがどこかに行って取ってきたものは見覚えのある魔道具だった。俺の持っている通信用の魔道具だ、だが色が黄色だし何より腕輪のようになっている。


「ユーリ君これ付けてみて。」

「これは?」

「これはマークが私の魔道具である通信機を改造した物でね。従来の通信機よりもさらに遠くにいても通信することができるんだ。おまけにこれを付けている相手の居場所もわかる優れ物だよ。」

「凄いですね!どうやってこんな物を?」

「僕が着想を経たのはルミさんがドラゴンになる魔法を見て思いついたん。」

「私のですか?」


どうして一緒に研究室にいるルミが不思議がっているんだよという突っ込みはさておき、マークの解説によるとルミの人型からドラゴンに変化する際の魔力が大小に変化する部分を見て思いついたそうだ。従来の通信では通信機同士の魔力が一定の状態ではないと連絡が取れなかった。そのために距離が伸びると魔力が届かず連絡ができなくなっていたが、魔力量を増やしたり減らしたり自由に変換できるようにしたことで魔力の量は必要であるが遠くにいても通信はできるし、近くにいると少ない魔力で連絡ができるらしい。


「難しいことはよくわからないでござるがとても凄いでござる!」

「うん、流石だよ。」

「ただこれはまだ欠点があって、魔力が少ない人は負担が大きいから誰でも使えるってわけじゃないんだ。」

「じゃあ拙者には無理でござるな…。」

「私も…。」

「二人にはユーリ君が持っている従来型をあげるよ。これでユーリ君だけだったらどこにいても連絡が取れるはずだよ。」


二人はマークから従来型の魔道具通信機を貰う。


「ありがとうでござる!」

「…ありがとう。」

「それじゃあそろそろ俺達は行くよ、これありがとう。」

「うん、こちらこそ。」

「またいつでも遊びに来てくれていいから。」

「ありがとうございますイヴァンさん。それでは。」


俺達は研究室を後にする、城に戻り案内してくれたカルロスに礼をいって別れた後、俺達は再び街へと繰り出した。次の目的地はランマがよく出入りしている冒険者ギルドだ。


「ランマはともかくコーデリアは初めてだよね。ここが冒険者ギルドだよ。」

「ここはいつも行ってるでござるから慣れたものでござるよ!」

「ソレイナ国にはない…。冒険者になる人は…皆出ていく。」

「そうなんだ。中に入ってみようか。」


まだ午前中ということもあってか冒険者ギルドは賑わっていた。俺達に気付いたのか皆が一斉にこちらを見ている。そしてざわざわ騒ぎ始めた、一体何なのだろうか。


「ランマの嬢ちゃんと《英雄》!?」

「どうして一緒に歩いてるんだ?」


どうやら俺とランマが一緒にいるのが珍しいらしい、すると騒ぎを聞きつけてかギルド長のライラさんが上から降りてきた。なんだか大事になってしまったな。


「やあユーリ君、驚きましたよ。ランマと知り合いだったのですね。」

「知り合いも何も彼女家で居候してますから。」

「そうでしたか、だそうですよ皆さん。」


先程までざわついていた冒険者の男たちは悔しそうに離れていった。耳を済まして聞いてみると「どうしてあいつばかり…」「せっかくランマちゃんに優しくしてたのに…」と言った声が聞こえる。なるほどランマ目当ての男たちってことね。別に俺に気を使わず自由にしてもらって構わないんだけどな。


「それで今日は何をしにこちらへ?」

「彼女の冒険者登録をしたいんですけど…。」

「私…?」

「コーデリアも冒険者ライセンスを持っていた方が後々便利になるよ。」

「そうでござるよ。」

「じゃあ取る。」

「わかりました、リズ。」

「はーい。」


冒険者登録受付をしてくれるのはやっぱりリズさんである。そして手早く手続きを済ませてコーデリアの冒険者ライセンスを発行してくれた。


「まーた、女の子連れてくるしランマちゃんもユーリ君絡みだったのね。」

「もう、からかわないでください!」

「それじゃあまた来てね。ばいばい。」


俺達は冒険者ギルドを後にした、その後は帰郷用の買い物準備を済ませつつ街を案内した。二人共それぞれの国にはない物が多くてとても喜んでくれた。そして最後は…


「ここが俺達の通っている学園、聖リディス騎士学園だよ。」

「凄く大きいでござるな!」

「端っこが…見えない…。」


最後は俺達の通っている聖リディス騎士学園へと連れてきた。


「それぞれの国に学校はあるの?」

「大和国には寺子屋というのがあるでござるよ。読み書きを学んだりする所で基本的には誰でも通えるでござるな。拙者は通っていないでござるが。」

「ソレイナにもある…。私が通っていないだけ…。」


俺は二人に対して悪いことを聞いてしまったかと思ったが、すぐにランマが口を開く。


「でもいつもマルク殿やユキ殿が色々教えてくれるから学校に行っているような感じがするでござるよ!」

「私も…ランマがいると…一人じゃないし…楽しい。」

「そっか、それはよかったよ。それじゃあ今日も早く帰って二人の指導を受けようか。」

「今日はたくさん回って疲れたから明日からにしてほしいでござるな…。」

「同じく…。」

「ははは。そろそろ帰ろうか俺達の家に。」

「そうでござるな!」

「帰ろう…。」


俺達は真っ直ぐに屋敷へと帰り、二人の街案内は無事に済ませることができたのだった。


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