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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
帰郷追憶編

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第八十話  長期休暇

あれから俺は猛勉強の末なんとか進級試験を乗り越えた。《聖剣》に関するレポートについても多少学園長に突っ込みを入れられたがOKを貰うことが出来た。皆はこれから実技試験があるから、俺達だけ早めに進級することが決定している。試験が終われば長期休暇というのがあるらしい、一足先に俺は自由な休暇を満喫している。


「ユーリはもう休暇かぁ〜いいなぁ。」

「私達も明日の実技試験が終われば休暇ですから、それまで頑張りましょ。」

「そうだね。」

「二人の実技試験はどんなことをするの?」

「私は洞窟迷宮(ダンジョン)で魔物の討伐30体です。」

「そうなんだ、私は青薔薇聖騎士団の人と模擬戦なんだけど、絶対に倒せないとダメってわけではないみたい。魔法を見せて実力を測る?とかなんとかって言ってたよ。」


多分俺達の感覚がおかしいのだろうが、二人にしてはかなり余裕試験だなと俺は思った。エレナなら魔物の討伐なんてすぐにできるだろうし、アリアも現役とはいえ団長や副団長クラスの騎士団員ではないのなら恐らく余裕で勝てるだろう。俺のときより難易度が緩いのはどうしてだろうか。まあ結果的に《聖剣》は手に入ったからいいんだけど。


「それなら二人共、余裕そうだね。明日は頑張ってよ。」

「ユーリ君はどうするんですか?」

「俺はコーデリアとランマの二人を連れて王都見て回ろうかなって思ってるよ。コーデリアはまだ来たばかりだし、ランマは家と町の外くらいしか移動していないから案内してあげようと思って。」

「それはいい案かも!二人共まだ全然王都のこと知らないもんね。」

「それに長期休暇の前に帰省の準備もしておきたいからね。」


俺達は長期休暇は実家に帰ろうと考えている。久しぶりに母さんの顔を見たいというのもあるが、正直最近《勇者》探しの方も進展していないということもある。目立った情報が集まらないのだ。いや元々そんなにピンポイントであるわけではなかったが、ヴェルス帝国のような噂レベルですらないのだ。結果的にはあれは嘘だったわけだが、そんな噂レベルの情報もないとなるとこちらに打つ手もないのだ。考えられるのはコーデリアのように《女神の天恵》を受けずに能力を授かっているというパターンだろう。今はシャーロットが各国にこの情報を流し、孤児や年齢不詳な者などを調べるように動いている。


「それじゃそろそろ帰りますか。」

「うん、明日は頑張ろうねエレナ。」

「ええ、それでは。」


俺とアリアはエレナと別れて屋敷へと帰宅した。屋敷には師匠とディーテさんそれになぜかセシリアさんも居たのだった。


「あれ?師匠にディーテさん、それにセシリアさんも皆で何してるんですか?」

「ユーリ君!君、この女の弟子になっていたのか?」


珍しくセシリアさんが興奮状態になっている。というかどうしてここに居るのだろうか?師匠は腕を組んでふてくされているし、ディーテさんはあらあらといった感じで困った顔をしている。正直人の家で何か揉め事を起こされているこっちの方が困っている。


「まあまあセシリアさん落ち着いてください。とりあえず屋敷に入りましょう、お茶でも出しますよ。」

「ぐっ、わかった。」

「一体どういうことなの?」


俺は皆を中に案内をして事情を聞くことにした。ちょうど買い出しから帰ってきたユキさんがお茶を持ってきてくれるがテーブルに座っている面子を見て驚いていた。


「珍しいですね、あなた達が揃うなんて。」

「たまたまよ。」

「ええ、たまたまです。」

「じゃあまずセシリアさんからどうしてここに来たのか聞いてもいいですか?」

「私は君が《聖剣》を手に入れたと聞いてな、見に来たついでに手合わせでもしようと思っったんだ。」


近々セシリアさんのところには行こうとしていた。同じ《聖剣》を持つ者同士であるし、先輩として何か聞けると思っていた。まさかセシリアさんの方から足を運んでくれるとは思わなかったが。


「それで師匠とディーテさんはどうしてうちに?」

「私はディーテが《勇者》を見つけて今はここにいるっていうことと、ついでに《序列》魔族を倒したっていう弟子の顔を見に来たってわけよ。そしたらこの女がいたってわけ。」


師匠がディーテさんに《勇者》の捜索を頼んでいたって言うのはたしかガルタニア国で聞いたな。まあコーデリアはたしかにここにいるからここに来た理由はわかった。だけど一番わからないのはこの二人の関係性だ。


「でどうして二人はそんなに仲悪いんですか?」

「お二人はたしか同学年で学園に通われていたんですよ。それはディーテの方が詳しいかと。」


そういうユキさんの言葉を聞いてディーテさんが口を開く。相変わらず師匠とセシリアさんはお互いに目も合わせようとしない。一体二人の間に何があったというのか。


「そうね。あれは二人が一年生の頃から始まったわ。私とディアナは一年生の頃から同じクラスで仲が良かったんだけどある時ケンカになった他クラスの生徒がいてね。」

「それがセシリアさんだったというわけですか。だけど何でケンカしたらこうなるんですか?」

「セシリアちゃんがね、ディアナのケーキ食べちゃんたんだよ。」

「………はい?」

「私が当時人気だったお店のケーキを買ってきたんだけど、セシリアちゃんが食べたそうにしていたから私が1つあげたんだけど凄く気に入っちゃってね。ディアナの分のケーキ食べちゃったの。それを知ったディアナは怒って当時負け知らずだったセシリアちゃんと模擬戦をして、ディアナが勝っちゃってそこから二人の因縁は始まったの。」


つまり始まりはたった1つのケーキだったということか。アリアの顔を見てみるとちょっと引きつっている。大丈夫俺も同じ感想だ。それだけのことでよくもまあ10年近くいがみ合っているものだ。なんというか子供っぽい、師匠はまあなんとなくわかるがまさかセシリアさんもとは以外だな。


「そもそもこの女が私のケーキを食べなければこんなことにはならなかったけどね。」

「ふん、そのあと因縁を付けてきたそちらが悪いだろう。」

「まあ私の可愛い弟子ならどっちが悪いか応えてくれるでしょ。」

「そうだな、こっちは命の恩人だからな。聞くまでもあるまい。」

「ははは。まあ今日のところは一旦保留にしておきます。」


二人からの圧が怖い。それにしてもここの三人が学園の生徒で同級生だったなんて信じられないな。ユキさんも年齢的には近いけど冒険者になってから知り合ったということなのだろう。


「さてディーテ、私達は帰るとするか。」

「えっ、もう帰っちゃうんですか?」

「可愛い弟子の顔も見れたし、いつまでのこの女の顔見てると腹が立つんでな。」

「ふん、それはこちらの台詞だ。」


師匠をディーテさんが宥めながら部屋から出ていった。セシリアさんはその様子を睨みつけながらお茶を啜っている。二人共お世話になった人達だしなんとか仲良くしてほしいところではあるが、これはわだかまりをなくすには骨が折れそうだな。


「さてセシリアさんやりましょうか稽古。」

「そうだな。《聖剣》の力見せてもらおう。」


俺とセシリアさんは庭に出て互いに剣を抜く。こうしてセシリアさんと剣をまじ合わせるのは初めてのことだ。いざセシリアさんの《聖剣ガラティーン》と対峙するとよくわかる、やはり普通の剣とはわけが違う。


「魔法を使うのはなしだ、それではいくぞ!」

「はい!お願いします!」


俺達は日が暮れるまで稽古をした。途中でマルクさんも参加したけれどやはり二人は別格だ。魔法を使っていないとは思えないほどの動きとスピードで俺は早々にリタイアしてしまった。見ているだけでも十分に参考になる内容ではあったけど。《聖剣》といっても普通の剣術はやはり鍛えておく必要はあるのだ。


「それでは私はそろそろ戻ることにするよ。」

「はい、ありがとうございました。またいつでも来てください。」

「ああ、ありがとう。今度はディアナがいない時に呼んでくれ。」


そういってセシリアさんは帰っていった。明日はコーデリアとランマの二人を案内する日だ。どこを回ろうかなと考えつつ俺は屋敷へと戻るのであった。

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