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第八話 《勇者》の役目

「えっと…今なんて?」

「私の能力は《勇者》なんです。」

「《勇者》ってあの伝説の?」

「はい。お二人も今年《勇者》が出た噂はご存知かと思います。それが私のことなんです。」


なるほど。だから新入生代表に選ばれていたんだな、合点がいった。それにエレナが打ち解ける前に感じていた違和感は《勇者》同士だからなんだろう。エレナの方は何も感じていないようだが、これも俺の能力なのか?だとしたら他の勇者を見つけるのも便利かもしれないな。


「正確には《紅蓮の勇者》。私で《勇者》の能力を持つものは6人目だそうです。」

「その、もしかして代表戦にこだわるのも関係が?」

「はい。それは…」


エレナの話はこうだ。現在判明しているエレナ以外の5人の勇者は全員他国の《勇者》であり、そのほとんどの所在を把握できていないらしい。なので王都としては我が国に誕生した《勇者》を他国には秘密にしつつ戦力の一員になるように育てようとしているらしい。クラス対抗戦が始まったのも本当の理由はエレナのためということだ。


「もし対抗戦で優勝することができなければ、スカーレット家から貴族の称号を剥奪すると王からの命令が出ているそうです。なので絶対に負けるわけにはいかないんです。」

「そんな、、酷い、、、。」

「わかった、、、。そういう事情なら協力させてもらうことにするよ。」

「もちろん私も!」

「ぐすっ、、、お二人共本当にありがとうございます。」


まだ10歳の少女が背負うには重すぎる。しかし他国の《勇者》というのはそれほどまでに強いのだろうか。

王都だってセシリアさん達青薔薇聖騎士団を始めとした5つの騎士団が存在する。それだけでもこの国は他国に負けていないと思うが、、、それに今は各国魔物や来たるべき《魔王》の復活に備えて協力体制にあるとマルクさんに教えてもらった。政治のことはわからないがそんな単純な物でもないんだろうか?とはいえエレナにこんな顔をさせてしまっている事実には目を背けることはできない。俺はできる限り協力してあげたい、一歩間違えればアリアもそういう状況だったかもしれない《大賢者》だし。




◇◆◇◆


ザイルは暗い顔で街を歩いていた。治療が必要と嘘を付き学園を休んだのは自分が同級生にこっぴどく負けたという事実よりもガイウスが負けたことがショックだったからだ。ソーン家は代々ドレッド家に仕えている家柄である。故にドレッド家の人間が負けたということは自分の家が負けたも同然なのだ。家のことを抜きにしてもガイウスのことを慕っていた彼にとって同級生の女子に負けたということが信じられなかった。


「くそっ!スカーレットめぇ…」

「そこのあなたお困りではないですか?」

「誰だお前?」


そんなザイルに声をかけてきたのは黒いフードを被った男だった。目の前に現れたのにまったく気づかなかった。


「私は未来ある若者に‘’支援‘’させていただいてる者です。」

「‘’支援‘’だと?」

「はい。この薬を飲むだけで今よりもっと強くなりますよ」


明らかに怪しい薬であり、普段なら絶対に受け取ることはない。だが自然とザイルの手は伸びその薬を受け取っていた。不思議と問題はないように感じた。


「必ず戦いの前に飲んでくださいね。」


そういうと男は姿を消した。


「これでスカーレットを…。」


そう決意したザイルは家へと帰った。




◇◆◇◆


「言い忘れていましたが、代表戦は三ヶ月先の学園祭のメインイベントとして行われます。代表のスカーレットさん、リーズベルトさん、ヴァイオレット君の三名は授業が終わった後に理事長室に来てください。レッドクラスの代表として紹介します。」


三ヶ月先だとかなり時間がある、それまでに作戦を立てておかないとな。それにしても理事長室か、、、ちょっと緊張するなぁ。


「さて今日の授業は野外演習になります。二人一組でチームを組んでもらい森の中に一組ずつ入ってもらいます。中には戦闘用の土人形(ゴーレム)がいるので時間内に倒せた数で競ってもらいます。それではペアを組んでください!」


ペアか…。アリアと一緒にやろうと思ったがすでにエレナと組んでるようだ。あれ、、、よく考えたらアリアとエレナ以外にクラスにペアを組めそうな人がいないのでは?やばいどうしようか?辺りを見回して余ってる人を探そう。


「俺とペアを組まないか?」

「もちろん…え?」


振り返るとそこには鍛えられた肉体に威圧感のある男が立っていた。ガイウス・ドレッドである。そうかザイルがいないから組む相手がいないのか。あんなことがあったあとで少し気まずいが仕方がない、返事をしてしまった以上ペアを組むことにした。


「ではよろしく頼む。」

「よ、よろしく。」


少しの不安を残しながら、俺達は野外演習場の森へと移動した。順番にペアが森の中に入り土人形(ゴーレム)と戦っていく。次は僕達の番だ。


「始まる前に少しいいか。この間は済まなかった。」

「どうしたの急に?」

「ザイルを止めることができなかったのは俺の責任でもある。あいつは悪い奴ではないんだ本当に済まない。」

「俺はいいけど。後でエレナに謝罪しておいてくれればそれで。」

「わかった。ありがとう。」

「さぁ頑張りますか!」


演習の前に何事かと思ったが、ガイウスはやはり真っ直ぐな男らしい。ザイルが慕っている理由も少しはわかる。彼とならいい成績を残せそうだ。


「ではドレッド、ヴァイオレットペア、用意、、、スタート!」

「行くぞ!」

「ああ!」


ガイウスの能力は《|土の重戦士》で得意な魔法は土魔法、歩兵戦も得意らしい。土人形(ゴーレム)との戦闘も問題なさそうだ。この広い森でどうやって土人形(ゴーレム)を見つけるかだが…。そこは俺の新魔法『索敵(サーチ)』の見せ所だ。実はユキさんとの修行で教えてもらっていた、アリアにも言っていない。


「『索敵(サーチ)』!ガイウスここから20m先の木の裏に2体いる。」

「任せろ!『土振動(アース・クエイク)』!!!」

「よし、倒せたみたいだこの調子で行こう!」


その後俺達は順調に土人形(ゴーレム)を倒していった。そろそろ時間か?


「そこまで!ドレッド、ヴァイオレットペアは27体の土人形(ゴーレム)撃破!現在、トップです!」

「やったなガイウス!」

「ああ、お前のおかげだユーリ。」


俺達はこの間のことが嘘のようなコンビネーションで現在トップの成績を出すことができた。ガイウスも同年代では実力はかなりある方だろう。前回エレナに負けたのは仕方のないことだ、よくよく考えたら《勇者》だし、勝てるほうが少ないだろう。


「最後はスカーレット、リーズベルトペア、用意、、、スタート!」


「アリアさん最初から飛ばします!」

「はい!」


エレナとアリアは勢いよく森の中に入って行った。二人は俺達の結果を上回ることはできるかな?


「…っ?!」

「ユーリどうした?」

「今、、、いや気のせいか?」

「…?、ならいいが。」

一瞬森の中からただよらぬ気配を感じた…なんだか胸騒ぎがする。気のせいだといいんだが、、、。


「『魔力探知マジック・ディテクション』エレナさん正面10m先に1体、後方5mに1体います

!」

「わかりました!『炎の槍(フレイム・ランス)』『炎の球(フレイム・ボール)』」

「反応は消えたよ。流石だね!」

「アリアさんの魔法のおかげです、これならユーリ君達に勝てそうですね。」

「はい!この調子で頑張りましょう!」

「ここで君たちは終わりだよ。」

「誰ですか!!」

「嫌だなぁ僕だよ僕、ザイルだよ。」


そこには最近学園に来ていなかったザイルの姿があった。


「あなた学園を休んでいたはずでは?」

「君に用があって来たんだよスカーレット。この間はよくもコケにしてくれたなぁ?」

「そんなの逆恨みだよ!」

「君もいたのかリーズベルト。そういえばヴァイオレットに君を寄越せと言ったら随分怒っていたなぁ。今なら邪魔も入らないし僕の女にしてやってもいいぞぉ?」

「絶対にお断り!」

「いいさぁ無理矢理にでも僕の物にしてやるよぉ!!!」


ザイルは明らかに正気ではないとエレナは感じていた。なんとかユーリ君やリリス先生に報告しなければ。


「僕は誰にも負けないんだぁぁぁぁぁ!!!」


ごくっ!


ザイルは懐から取り出した薬を飲むと魔力量がどんどん膨れ上がっていく。


「こ、これは一体…?!」

「ガァァァァァァァァァァ!!!」


身体はどんどん大きくなり筋骨隆々、ガイウスよりも大きく屈強になり肌の色は赤黒く変色していた。

頭からは角が生え魔力の流れも異質になっていることがエレナには感じられた。それにこのオーラ。


「ま、魔物?」


アリアは村で見た魔物と目の前のザイルとを重ねていた。身体に纏っている黒いオーラが似ていると感じたアリアは思わず口に出してしまっていた。

エレナとアリアの二人はその場から動けずにいた…。

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