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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
《聖剣》伝説異聞編

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第七十八話 《聖剣》伝説

俺は意識を取り戻す。身体はまだ思い、瞼も空けれないが無理やり身体を起こす。するとおれの顔面に何か柔らかい物が当たる。とても柔らかくほどよい弾力がある、とても高級な枕みたいだ。


「あらあら、起きたのね。」

「…す、すいません!」


俺が顔面を当てていたのは看病してくれていたと思われる女性の胸だった。なんだか若干既視感を覚えるが、この女性に見覚えはない…いや、この人は俺が意識を失う瞬間に見た女性だ。


「ユーリ!」

「目が覚めたんですね!」

「よかった…!」

「みんな!無事で良かったよ!」


目を覚ました俺に駆け寄ってきたのはクレスト、ヘクター、コーデリアの三人だった。全員元気そうでよかった。周りを見渡すとベットにはシャーロットとカルロスも寝ている。二人の無事を確認して俺は安堵する。


「それにしても一体何が会ったんだ?あの魔力尋常じゃなかったぜ。」

「街の魔物を倒した後、《序列》魔族が現れたんだ。」

「魔族だって、それに《序列》って何だ?」

「《序列》魔族っていうのは四天王のポジションを狙っている魔族で、俺達が浸かっている通常の魔法じゃ生半可な攻撃は通らないんだ。まあとにかく強い魔族ってこと。」

「それでそいつはどうなったんだ?」

「なんとか倒すことができたよ。」


《聖剣》に覚醒しなかったらワンダーの時のように死んでいただろう。それに今回は俺だけじゃなくシャーロットとカルロスもいたからな。女神様の話では多分俺はまた転生という形で復活できるけど2人はそうじゃない。本当に危なかった。


「流石ユーリだな!」

「えぇ、本当に凄いと思います。」

「いやいやそんなことはないよ。皆のおかげさ。」


実際クレストやヘクターが居なければ教会の魔物が街に降りていただろうし、コーデリアがいなければマンダムを倒すのには苦労していたはずだ。三人の功績も大きいのだ。そうこうしている内にシャーロットとカルロスも目を覚ましたようだ。


「ここは…?」

「どうやら助かったようですね。」

「これで皆元気になったわね。よかった。」

「あ、あなたは…」

「シャーロットの知り合い?」


俺は女性のことをすっかり忘れていた、どうやらシャーロットはこの女性のことを知っているらしい。


「この方は《真夜中の魔女》のメンバーの一人、ディーテ・メシオアさんです。」

「ディーテで〜す。よろしくね。」


先程の既視感の正体がわかった。《真夜中の魔女》ということはつまり師匠の仲間ということだ、この人は師匠にどことなく雰囲気が似ている。だから既視感を覚えたんだろう。


「なるほど師匠の知り合いでしたか。」

「そうなの。話には聞いてたけどディアナちゃんがこんなに可愛い弟子を取るなんて、驚いたよ。」

「ははは、ユキさんの紹介なんですけどね。」

「えぇ!ユキちゃんのことも知ってるの?」

「ユキさんは今、家の屋敷でメイドとして雇っていますよ。」

「そうだったんだ。全然知らなかったよ。もっとお話聞かせて?」


俺はディーテさんに俺達の素性や状況を軽く説明する。ユキさんとは師匠同様に冒険者時代に付き合いがあったそうだ。


「ところでディーテさんはどうしてこちらに?」

「ああ、私はソレイナに《勇者》がいるって話をディアナちゃんに聞いて情報を集めるように頼まれていたの。そしたらこの辺りで異常な魔力を感じたから飛んできたら、シャーロット様や君達が倒れているから治療をしてたの。」

「そうでしたか、助かりました。」

「ディーテさんがいて良かったですね。彼女は能力は回復系ですから。」


なるほど、偶然とはいえディーテさんが居合わせたのは幸運だったというわけだ。普通なら傷が塞がってもこんなに早く目覚めて体力も回復するわけはないが、これも回復系の能力のおかげということなんだろう。


「ところであの《序列》魔族はどうなりましたか?」

「なんとか倒したよ。」

「そうですか、でもどうやって?」

「実は…」

「おい、大丈夫…ではねぇか。」

「ムーバスさん、それにピルクも!ちょうどよかった。」


カルロスの質問に答えようとしたらちょうどムーバスとピルクの二人が入ってきた。ちょうどよかった二人にも聞いてもらわないといけない。このピルクの作った剣が《聖剣》に変わったということを。


「…それでシャーロットが俺のことを庇った時にこのピルクの作った剣が輝き出したんだ。」

「剣が…ですか?」

「うん。輝きはどんどん増して魔族は苦しみ始めた。つまり《聖》属性の光だったんだ。」

「つまり剣が変化したと?」

「そう、しかも《聖剣》にね。」

「《聖剣》だって?」

「そんな…まさか…。」


皆この話を聞いて信じられないという顔をしていた。中でも一番驚いていたのはピルクだった。それもそうだろうピルクはこの剣を《聖剣》を作ろうと思って作ったわけじゃないからだ。


「これは俺が思うにだけど、この剣が《聖剣》になったのはピルクが《聖剣》を作ろうと思ったわけじゃないからだと思うよ。」

「どういうことですか?」

「これは俺のためにピルクが作ってくれた剣だろ?そういう思いが俺を助けようとしてくれて《聖剣》になったんじゃないかな。」

「僕は…《聖剣》を作ろうとするあまり使い手のことを考えていなかったのかもしれません。」


《聖剣》は作り手と使い手の思いがあってこそなりうる存在ということだ、これが全ての《聖剣》に当てはまるのかはわからないが。


「ピクルのおかげで助かったよ。ありがとう。」

「いえ、僕の方こそ役に立ててよかったです!」

「それでその《聖剣》の名前は何て言うんだ?」

「《聖剣クラレント》。この剣は《聖剣クラレント》だ。」

「これでセシリアちゃんの《聖剣ガラティーン》に次いで《聖剣》を見るのは二本目ね。」


これでセルベスタ王国には二本の《聖剣》が存在することになる。他国がどうかはわからないが、かなり珍しいことではないだろうか。…ん?セシリアちゃん?


「セシリアさんのことも知ってるんですか?」

「知ってるも何も私もディアナちゃんも、学園の同級生だもの。」

「そうだったんですか?!」

「そうだよ。」


全然知らなかった、というか同級生ってことは師匠達同い年なのか?!全然そうは見えない、皆タイプが違いすぎて驚きだ。


「まあ、なにはともあれ一件落着だね。」

「そうですね。ガルタニアの被害は最小に抑えることが出来てよかったです。」

「後始末は私がしておくから皆はしっかり休むのよ。」


そう言ってディーテさんは部屋を出ていった。ムーバスとピルクもまた来ると言って帰っていった。俺達はすでに回復しているがここはディーテさんに甘えて素直に休むことにしよう。次の日完全に回復した俺達は《聖剣》伝説についてのレポートを書いていた。


「結局のところ《聖剣》に関する謎は深まるばかりだよね。」

「ユーリが特殊な事例を作ったせいですよ。ピルクのお祖父様は《聖剣》を自覚して作った上で使い手を探していたようですから。」

「いやまあ、そうなんだけど。」


とはいえ今回のレポートは《聖剣》の伝説に関する物だ。《聖剣エクスカリバー》についての伝説をまとめておけばいいか。とはいえこれでは流石に学園長に聞いたまんま過ぎて怒られそうだな。俺は最後に今回の出来事を追記しておく。


「これでよしと。」

「新たな《聖剣》伝説はこれから紡いでいく?」

「そう。これなら学園長に怒られないと思って。」

「なんだか一気に胡散臭くなりましたね。」

「酷いなぁ。まあでもちょっと胡散臭いくらいがいいんだよ。いつか本当の伝説になるかもしれないでしょ。」


《聖剣エクスカリバー》のように二人の友情が《聖剣クラレント》を作り出したという事実には変わりないのだから。例えそれが本来の物とは違っても。


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