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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
《聖剣》伝説異聞編

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第七十六話 水の恐怖

その魔族は《序列十一位》と名乗った。俺が以前殺された《序列七位》“風塵”のワンダーよりも数字は低い、だがこいつらは俺達よりも強いということがわかる。はっきりいって三対一でも勝てるかどうかはわからない。


「どうして私を殺す…と?」

「あなたが《勇者》ということはわかっている。すでに大和国で一人殺したと聞いているが、私には信用ができない。だから残った《勇者》を確実に自分の手で始末するべきと私は判断した。先生の後始末のついでではありますがね。」


大和国で一人殺したというのは恐らく俺のことだ。俺が復活…生き返ったことはまだ魔族側《序列七位》“風塵”のワンダーには伝わっていないということだろう。だけど直接《勇者》であるシャーロットを狙いに来た、予測はしていたが。


「先生というのは何者だ?」

「先生は先生だ。人間を使って魔物を『召喚(サモン)』する魔法を作ったり、魔物の力を埋め込む研究をここではしていたと聞いたが。もう必要がないのでこの辺りを破壊しに来たというわけだ。まったく先生も部下使いが荒い。」


このリトスという魔族の先生と呼ぶ魔族がマンダムと協力し、魔物を召喚させる魔法とペンダントを開発して魔物の力を得ることができる薬を開発した張本人ということだ。


「この街は破壊させません。」

「それでは《勇者》の力とやら、見せてもらいましょう。」


シャーロットは愛用の細剣を目にも留まらぬ速さで抜き、リトスへと向かっていく。最初から全快だ。俺も『身体強化(フィジカル・ブースト)四重(クインティプル)』を発動し《紅蓮の勇者》の力も発動し、シャーロットに続いて飛び込んでいく。


「『悪魔の水壁ディアボリカル・アクアウォール』」

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「おぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


シャーロットが水壁を切り裂き、俺が懐へと飛び込む。


「『炎神の一撃(アグニ・ブロウ)』!!!」

「その程度では攻撃は当たらんよ。」

「それはどうかな、カルロス!!!」

「『魔法弾(マジック・ショット)付与増大エンチャント・ブースト』!!!」


リトスは俺との間にやはり薄い水の層の様な物があり、『炎神の一撃(アグニ・ブロウ)』は身体に届いていない。ここまでは以前戦ったワンダーと同様だ、だけどそれで学習しないほどバカではない。カルロスは俺の腕に向けて『魔法弾(マジック・ショット)』を放つ。その弾丸には『付与魔法(エンチャント)』で勢いを上げる『増大(ブースト)』が付いている。


「何!?」

「うぉぉぉぉぉ!!!!!」


俺はリトスを殴り飛ばした。俺の『炎神の一撃(アグニ・ブロウ)』に『付与増大エンチャント・ブースト』の弾をぶつけることで押し込むというより勢いで破壊力を生むことに成功した。だけどこれはかなり力技だ、俺の腕にも負担は大きい。《紅蓮の勇者》の力を使っていなければ腕の方が持たないし連発することはできない。


「やったか?いやそう簡単に倒せたら苦労はしないな。」

「初めてでしたが、上手く合わせることが出来ました。」

「そうですね。《聖》属性ではなくてもダメージを与えることはできそうですね。」

「だけどそう何回もできないし、一度見られた分、次は当てるのが難しくなるよ。」


吹っ飛ばされたリトスは服に付いた汚れを払いながら起き上がり、こちらへと向かってくる。そして笑いだした。


「フフフフフ、吹っ飛ばされたのはかなり久し振りですね。どうやらあなた達のことを舐めていたようです。警戒すべきは《勇者》だけでなくあなた達2人も殺してあげましょう。」

「そう簡単にやられてやる気はない!」

「ですが先程の技、そう何度も使えるわけではないでしょう?それにその程度じゃ攻撃が当てれてもすぐに再生する私には例え千発当てることが出来ても死ぬことはない。」


《序列》持ちの魔族というだけあって、冷静に分析をしている。油断や隙というのは感じられない。最初の一撃で大ダメージを与えれなかった時点でもう通用はしないだろう。


「いや倒すまで何度だって当てるさ。千発でも一万発でもね。」

「それは楽しみですね。今度はこちらからいかせていただきましょう。『悪魔の水鞭ディアボリカル・アクアウィップ』」

「ぐっ…ごぼぉ…。」

「カルロス!」


リトスは水の鞭でカルロスの顔を塞ぐ。あのままでは息ができない、シャーロットはすかさず駆け寄り剣で水を散らす。それを見ていた俺の目の前にリトスが迫る。


「余所見をしていていいのですか?」

「しまった!」

「『悪魔の水流ディアボリカル・アクアフロー』」

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」


俺は大量の水に押し流され吹き飛ばされる。勢いや量が凄まじく、周囲の建物を破壊するほどでありとても耐えることはできなかった。魔物騒動で住人を避難させておいてよかっただろう。


「ユーリ!」

「ふん!」

「ぐっ…。」

「ごぼぼぼ…。」


リトスは先程シャーロットが散らした水を再び集め、シャーロットとカルロスの顔を水で覆う。一度放った魔法から出た水をここまで緻密に操ることができるのはアリアでも難しいだろう。シャーロットとカルロスはそれぞれ剣と魔法で攻撃しようとするが水で動きを封じられる。


「私は“導水”という異名を冠している。水魔法の扱いには長けているのだ。もっとも本気はまだこんなものではないがな。」

「ユー…リ…。」

「ぐっ…。」

「『雷の矢(ライトニング・アロー)三重(トリプル)』!!!」


俺はリトスに向かって魔法を放つも避けられてしまう。だが狙いである水から二人を救出することは成功した。俺達は一度体勢を整える。


「二人共大丈夫?」

「助かりました。」

「大丈夫です。」

「あの水の勢いから生還できるとは。」

「身体だけは丈夫なもんでね。」


《紅蓮の勇者》の力のおかげで多少周囲の水を蒸発させ勢いを弱めることが出来たから脱出することができた。しかしもうかなり魔力を使ってしまった、そろそろ《紅蓮の勇者》の力は使えなくなる。以前は試せなかったがあれを試すしか無い。


「《紅蓮の勇者》の力はそろそろ魔力がなくなる。最後に大技を決めたい、なんとか隙を作れないかな。」

「わかりました。任せてください。」

「かならず作ります。」

「作戦会議は終わったかな?」

「『魔法弾(マジック・ショット)拘束(バインド)貫通(ペネトレイト)』!」


カルロスはまず『拘束(バインド)』を放つ、身体に網の様な物が巻き付く。しかし『貫通(ペネトレイト)』は身体をリトス貫通せずに身体に纏っている水の膜で流れるように弾が外れる。すかさずそこにシャーロットが剣を叩き込む。


「『付与魔法(エンチャント)敏捷(アジリティ)』、『千の突きサウザンド・ストライク』!」

「いいスピードだが、それでは届きはしまい。」

「はぁぁぁぁぁ!!!!!」


シャーロットの剣速はさらに上がる、カルロスも援護の射撃をする。すると水の膜は段々と薄くなり身体に剣先が届いた。しかしリトスは拘束を解きシャーロットを殴り飛ばした。


「今のは中々悪くありませんでしたね、ですがその程度では先程同様私を倒すほどではありませんよ。」

「ええ、そうかもしれません。ですが…これでいいんですよ。」

「『煉獄門(パーガトリー・ゲート)』!!!」

「何!?」


俺は二人に気を取られているリトスに『煉獄門(パーガトリー・ゲート)』を発動させた。リトスは門に吸い込まれるしかし、自ら腕を切り落とし門は腕を飲み込み消えてしまった。『煉獄門(パーガトリー・ゲート)』は門に吸い込まれると二度と出れないが、先に何かを飲み込ませてしまえばそれで門は閉じてしまうのが弱点でもある。それに一瞬で気付いたのだ、俺は《紅蓮の勇者》の力を使い切り元の姿に戻る。


「流石の私も今のは危なかったですね。」

「どうして腕を切り落とせばいいことがわかった?」

「1つ出し抜かなければいけないほどの大技であること。2つそのために二人が囮になっていたこと、3つ私が似たような技を使う者を知っていたということですね。恐らく所見なら確実にやられていたでしょうが…こればかりは運に助けられました。」


リトスはたまたま似たような技を知っていたおかげで『煉獄門(パーガトリー・ゲート)』を対処することが出来たのだ。それと同時に俺にはもうこれといった大技がないということの証明だった。いや正確に言えばまだ《剣の勇者》の力があるが、今日はすでに全力でないとはいえ《溟海の勇者》、そして《紅蓮の勇者》の力を使い切ってしまった。魔力はあっても気力や体力は別問題である。一日に3つの《勇者》の力は使ったことがないからどうなるかはわからない。でもやるしかないのだ。


「さて次はどんな手品を見せてくれるのですか?」


ボロボロな俺達とは違いまだまだ余裕がありそうなリトスを見て、俺達は再度集まり体勢を整え気を引き締めるのであった。



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