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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
《聖剣》伝説異聞編

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第七十二話 聞き込み調査

看板に従って奥まで進んでいくと開けた場所に建物があった。そうやらここが勇者教の教会のようだ。隣には屋敷もあり敷地はかなり大きいように見える。


「それじゃあ作戦通りに、皆は周りを囲ってて警戒を。俺とヘクターさんに何かあったらすぐ駆けつけれるようにしといてくれ。」

「でもどうやってそれがわかるんだよ。」

「シャーロットあれ持ってるよね?」

「はい。持ってますよ。」


そういって俺とシャーロットが取り出したのはイヴァンの魔道具だ。


「これを持ってるもの同士連絡が取れるんだよ。これで会話の内容も聞けるだろうし突入はシャーロットが判断してくれ。」

「わかりました。気をつけてください。」

「うん、それじゃあ行ってくる。」

「ヘクターもドジすんじゃねぇぞ。」

「わかってるよ!」


俺とヘクターは教会の扉の前まで行く、俺がドアをノックし声を掛けるが反応がない。ヘクターが扉を押すと鍵がかかっていないのか扉が開く。俺達は中に入ってみることにした。


「うーん。誰もいないね。」

「屋敷の方にいるのでしょうか。」


中は至って普通の教会である。しかし女神像ではなく剣を持った男の像が置かれている。これが《勇者》ということなのだろうか。俺とヘクターが教会の中をうろついていると扉が閉まった。


「今、扉勝手に閉まりました?」

「みたいですね。」

「ようこそ!旅のお方!我らが勇者教にご興味がお有りですかな?」

「ええっと…あなたは?」


《勇者》の像の後ろから現れた白いローブの男は大きな声で俺達に勇者教の勧誘をしてきたのであった。あまりのことにヘクターも顔が引きつっている。


「私は勇者教ガルタニア支部を取り仕切っています、大司教のマンダムです。」

「そうですかマンダムさん。俺は…トーリ、こっちはヘケト。」

「ヘケトです。」


一応何があるかわからないし、偽名を名乗っておくことにした。ヘクターも察して合わせてくれた。


「俺達はマンダム様の言う通り旅をしている商人なのですが、この白いローブを拾いましてこちらの勇者教のものではないかと…。」

「…おーこれはまさしく我が同志の物です!拾っていただきありがとうございます。ちなみにどちらでこれを?」


そう聞いてきたマンダムの雰囲気が一瞬だが変わった。明らかに不味いと言う表情をしていた、何かを隠していることは間違いない。ここは1つ責めて見るか。


「ガルタニアの街で魔物に襲われたんですが、そこで魔物が路地裏から現れたと聞きまして。向かってみた所そこにこの白いローブが落ちていたんです。」

「そうでしたか…偶然魔物が出現したところに居合わせるとはきっと《勇者》様に対する信仰心の足りない方だったのでしょう。…ところでただの商人であるあなた方が何故そんな衛兵の様なことをなさるのですか?」

「私達は『治療薬(ポーション)』の商人なので。こう言ってしまっては不謹慎かもしれないですが、事によってはある意味稼ぎ時なので…。」

「なるほど。商魂たくましいですな、でしたら私共にもいくつか売っていただいても?」

「勿論ですとも。」


どうして聞いてきたかというツッコミには驚いたが、ヘクターが上手くフォローしてくれて助かった。やはりヘクターを連れてきた選択肢はよかったと思う。ヘクターは懐からいくつか『治療薬(ポーション)』を取り出しマンダムに渡す。


「ありがとうございました。」

「いえいえ、こちらこそ同志の遺品をありがとうございました。それでは。」


俺達は教会を出た後皆と合流し、再びムーバスの店へと戻っていった。


「やっぱり黒なのは間違いないですね。」

「私もそう思います。」

「ええ、私もです。」


コーデリアとクレスト、カルロスは会話を聞いていないので俺は詳しく状況を説明した。白いローブの話をしたときに明らかに間があり動揺したであろうこと。極めつけは…


「最後にマンダムは同志の遺品と言った。だけど俺は白いローブを拾ったと言っただけで誰かが死んでいたなんて言っていない。」

「つまり、どうしてその白いローブの持ち主が死んだってわかるのかってことだよな。」

「そういうことですね。やはり今回の件の元凶は勇者教であることは間違いなさそうですね。」

「俺達もよ屋敷を軽く外から見て回ったんだが、やっぱりあそこ変だったぜ。」

「何が変だったんだ?」

「あんなに広い屋敷なのに人の気配をまるで感じなかった。ありゃ何か隠してますよって言ってるようなもんだぜ。」


たしかにマンダムも最初出てくるまでに時間がかかったというか気付かなかったしな。それにあの屋敷の大きさで人がいないというのも気になる。ピルクの話じゃ何人かは時々街に来ているという口ぶりだったしな。


「どうする?あのマンダムとかいうやつにもう一度直接聞きに行くか?」

「証拠もないのに詰め寄ったらこちらが不利になってしまいます。」

「今日はもう遅い、明日もう一度街に行って魔物が出現した所みるのと勇者教の人間の聞き込みをしてみよう。」

「そうだな。」


その日はそこで解散となった。コーデリア達もこの街に宿は取ってあるようだったので明日もう一度この店に集まることにしてその日は解散した。次の日、俺達はそれぞれ街を周り聞き込み調査することにした。俺はこの一番栄えている街にある観光客向けのエリアで聞き込みをすることにした。ここで商売をしている人間ならこの国に詳しいだろうし勇者教が来ていたら絶対に覚えているだろうと考えたからだ。


「しかし、中々情報はあつまらないなぁ。」


だが俺は苦戦していた。勇者教の目撃証言こそあるもののピルクと同じく買い物に来ていたということを知っているレベルの話くらいで何か今回の事件に深く関わるようなことはわからない。そろそろ別のエリアに行こうかと思ったとき店の前で立ち尽くしているコーデリアを見つけた。何か見つけたんだろうか?


「コーデリア、何か見つけたの?」

「…あれ…。」


コーデリアが指した先にはここの鉱山で取れたものだろうか水色に輝く宝石で作られたネックレスが飾ってあった。あれが何か関係しているのだろうか?


「あれが今回のことに何か関係が!?」

「ううん…綺麗…。」

「あっ、そういうことね。」


どうやら単純に綺麗だから眺めていたらしい。紛らわし、しかしかなり熱い視線を送っているな。欲しいのだろうか。


「おじさん、そこのネックレス1つください。」

「あいよ!兄ちゃん、彼女にプレゼントかい?やるねぇ。」

「ははは、どうも。」


俺はおじさんから水色に輝く宝石が付いたネックレスをコーデリアに渡す。コーデリアはとても驚きつつも受け取ってくれた。


「これ…お金…。」

「いいんだよ、気にしないで。お近づきの印ということで。」

「…ありがとう。」

「どういたしまして。そろそろ別のエリアも探してみよう。」

「うん…!」


その後もっコーデリアと一通り街を回ったが特にめぼしい情報は得られなかった。一度皆と合流するためにムーバスの店へと戻ることにした。


「何かわかった?」

「いえ私の方は何も。」

「街の方に時々来るっていうのと、後は多分鉱山にもちょこちょこ行っているみたいだぜ。」

「鉱山に?」

「ああ、街で購入するのは食料品とあとはツルハシやバケツをしょっちゅう買いに来るそうだ。こんなもん鉱山で何か掘ってると思うのが普通だろ?」


たしかにクレストの言う通り、鉱山で何かを掘っているのは間違いないが…うーむ、ムーバスさんにでも聞いてみるか。


「ムーバスさん!」

「うん?どうした。」

「ここの鉱山で珍しい鉱石とか何か取れたりするんですか?」

「珍しい鉱石?そりゃお前たちも見てきたやつだろ。」

「俺達が見た?あの触ったら性質が変わるっていうキラキラした鉱石ですか?」

「ああ、あれは《聖剣エクスカリバー》の鉱山でしか取れないからな。名前はエクスカリライト鉱石。」


たしかに《聖剣エクスカリバー》からできた鉱山で取れる鉱石ってことになるんだよな。性質が変わるということ以外に何か秘密があるのだろうか?


少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

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