表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
《聖剣》伝説異聞編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/268

第六十九話 《聖剣》の一族

ムーバスは少年に話しかける。


「ピルクお前にお客さんだぞ。」

「あのこの方達は…」

「俺の見立てでは大丈夫だ。」

「そうですか。」


この少年はピルクと言うらしい。俺達に不信感を抱いているようだけど、ムーバスの言葉で少しは警戒心が解けてきたようだ。


「お茶でも入れよう。上で話そう。」

「わかりました。」


店の上へと案内され、軽く自己紹介をする。そこでピルクに《聖剣》について詳しく聞くことにした。


「僕の名前はピルク・スミスです。ムーバスさんのいう通り《聖剣》を作ることができる一族の生き残りが僕なんです。」

「そうなんだ。俺達は《聖剣》を作れる鍛冶師を探してここまで来たんだ。よかったら俺に《聖剣》を作ってもらえないかな。」

「………。」


ピルクは黙り込んでしまう、何か都合の悪いことでもあるのだろうか。俺とシャーロットは顔を見合わせてしまう。


「何か都合の悪いことでもあるんでしょうか?」

「実はその…僕では《聖剣》を作ることができないんです。」

「それは一体どういうことなの?」

「厳密に言うと作り方がわからないということでしょうか。僕の一族は代々決まった能力を授かります。それが《聖剣を作りし者》という能力で鍛冶能力は勿論《聖剣》を作り出すことができる能力なのです。ですが…僕はどんな剣を作ってもそれが《聖剣》ではないとわかるんです。」

「《聖剣》は選ばれし者が手にしないとその効果が発揮しないって聞くから、それに相応しい人物が手にしていないだけではないでしょうか?」


ピルクは首を横にふる。そして口を開いて言葉を続けた。


「いえ、作った時点でそれが《聖剣》になり得るかどうかわかるんです。僕の祖父は《聖剣》を作っては相応しい人物を探しにたびに出ていたらしんですが…」

「そこからは俺が話そう。俺はピルクの祖父と知り合いでな、昔から剣ばかり作ってる変わった奴だったがある時から《聖剣》の使い手を探し回るようになったんだ。曰く魔王軍との戦いに備えてだそうだ。息子が…コイツの父親が数十年前の魔物との戦いで亡くなってな。それからは一層《聖剣》の使い手を探して回るようになっちまって、コイツをここに預けてもう十数年は帰ってきていない。」

「それが言ってた行方不明になっているもう一人ってことですね。」

「そうだ。」


もしかしてマルクさんやセシリアさんが会った人物ってピルクの祖父なんじゃないか?マルクさんもあれは《聖剣》だと思ったと言っていたし、セシリアさんが《聖剣》に選ばれし者だから渡したんじゃないだろうか。だけどセシリアさんが《聖剣》を手に入れたのも十年くらい前の話らしいしやはりピルクの祖父の行方はわからない。


「でもどうしましょう?《聖剣》が作れないとなると…」

「まあ、作れない物はしょうがない。魔族との戦いはもっと強くなればいいだけの話だよ。」


とはいえ進級試験のレポートは書かないといけないからな、《聖剣エクスカリバー》が作ったという鉱山でも行ってみるか。


「とりあえず《聖剣》が作ったっていう鉱山に案内してもらうことはできるかな?実は俺達学園の進級試験で《聖剣》の伝説に関するレポートを書かなきゃいけないんだ。」

「それくらいなら…でも本当に《聖剣》はいいんですか?」

「うん、諦めるよ。鉱山の案内を頼めればそれで十分さ。」


ピルクは凄く驚いた顔でムーバスの顔を見ていた。俺達にはどうしてピルクがそんなに驚いているのかわからなかったがムーバスはそんな俺達を見て大きく笑った。


「ハッハッハッハッハ。ピルクはな《聖剣》を作れる一族だってことを隠してるんだ。以前どこからか聞きつけた奴らがお前たちと同じ様に《聖剣》を求めたやつが居たんだが事情を説明しても作れ寄越せと騒ぎ立ててな。その時は俺が脅して帰らせたが、そこからコイツはそれを知られることがトラウマになっちまってな。お前らがあまりにあっさり引くもんだから驚いてるのさ。」


なるほどな。《聖剣》が簡単に作れるのであれば自分も選ばれるのではと考えるだろう。だが実際はそう簡単に《聖剣》が作れないと知って逆ギレしたということか、なんとも迷惑な話である。簡単に作れたら苦労はしないし無いものねだりをしても仕方がないのだ。子供じゃあるまいし。


「大丈夫。俺達はそんなことはしないし。君が《聖剣》を作れる一族ということも黙っておくよ。」

「ありがとう。それじゃあ今から《聖剣》が作った鉱山に案内するよ。」

「よろしく頼むよ。」


俺達は街を出て馬車に乗り込む。近くまでは馬車で行くことができるようだ。


「ここが《聖剣》が作った鉱山だよ。」

「ほー、凄い大きいね。」

「鉱山は大きいものじゃないでしょうか。」

「カルロス、そういうツッコミはいれないんですよ。ユーリは田舎出身であんまり見たこと無いんですから。ねっ!」

「そうだね、フォローありがとう。」


田舎の村出身で悪かったな!シャーロットがフォローを入れてくれるが遠回しにバカにされているように感じる。あまり2人と一緒にいる機会がなかったからわからなかったが、もしかして2人は天然なのか?それとも貴族の冗談なのだろうか?どちらにせよちょっと恥ずかしい思いをしたのはたしかだ。


「よっと、これをこうしてと…」

「ピルクそれは?」

「これは明かりになる魔道具です。他にもちょっとした工具になったりして便利なんですよ。」

「へぇーそんな魔道具もあるんだね。」

「私も初めて見ました。イヴァンのところでも見たことがありません。」


魔道具を研究しているイヴァンのところでも見たことがないとなるとかなり珍しい魔道具なんじゃないだろうか。俺はピルクにどこで入手した物なのかを聞いてみる。


「これはおじいちゃんに貰ったんです。一族に伝わる魔道具でその昔ご先祖さまが《迷い人》から貰った物らしいですよ。マルチツール?っていう物を参考にして作ったららしいです。」

「へぇーそうなんだ。」


マルチツールね。それが何かはわからないけどかなり便利そうだ。《迷い人》の世界の物ならば今度コータに会ったら聞いてみよう。


「このあたりから鉱石が採れ始めるんですよ。」

「本当だ、なんかキラキラ輝いているところがある。」

「あれが鉱石なんですかね?」

「ここで取れる鉱石は変わった特徴があるんですよ。ユーリさんそこの鉱物触ってみてください。」

「うん。」


俺はキラキラ光っている鉱物を掘り起こし手にとってみる。するとその鉱物は先程輝いていたのに急に鈍い色になった。これは銅だ、先程までは違う鉱物だったのに触ったら銅へと変化した。


「不思議でしょ?ここの鉱石は取る条件によって色々な鉱石に変化するんだ。だから面白いんだ。」

「そうなんだ、凄いね!」

「だけど、ここにはあんまり人がいないんだ。皆近くのヒヒイロカネが取れる鉱山に行っちゃってここは観光に来る人しか入らないんだ。滅多に観光客も居ないけど。」

「そうなんだ。ところでヒヒイロカネって?」

「硬く、錆ず、それでいて加工がしやすい性質の鉱石だよ。」


初めて聞いた。そもそもあんまり鉱物について俺は詳しくないからな。もしかして《聖剣》が手に入らなくてもここで珍しい鉱石を使った剣を作ってもらうというのはどうだろうか、あとでお願いしてみよう。


「なるほど、まあたしかにここじゃどんな鉱石が取れるかわからないもんね。」

「もっと奥にも凄いところがあるんだ。付いてきて。」


俺達はピルクを先頭にさらに鉱山の奥へと進んでいく。するとだんだん明るくなってきた、奥に進んでいるのにも関わらず魔道具よりも明るく輝いていた。さらに開けた場所に出ると大きな湖の様な物があった。


「うわぁ…。」

「これは凄いですね…。」

「うん…ものすごく綺麗だ。」

「皆を連れてきてよかったよ。ここは鉱山で一番綺麗な場所で僕のお気に入りの場所なんだ。」

「ここが伝説に出てくる湖なのかな?」

「残念ながらここは雨水が溜まってできた湖なんだ。大きな水溜りというのが正しいかな。」


水溜りの中に先程のキラキラ光輝く鉱石があるおかげでさらに光が増幅されてここまで明るくなっているのだ。とても神秘的な光景だ、自然の偉大さを感じる。アリアやエレナ達にも見せせてあげたかった、皆を連れてまた来るのも良いかもしれない。


「いや本当凄いよピルクありがとう。」

「いえいえ。喜んでくれたのなら僕も嬉しいよ。」


ピルクは初めて笑顔を見せてくれた、よかった。そう思うとどこからか話し声が聞こえた。


「おい!凄いなここ!」

「とても神秘的だな。」

「………凄い。」


声のした方に目を向けると俺達が来た道とは別の道から三人組がやってきた。


少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

皆さまの応援が励みになりますので、ぜひ下部よりブックマーク・評価等お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ