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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
《聖剣》伝説異聞編

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第六十七話 進級のための課題 

俺達は授業後、学園の中にある図書室で進級試験に備えて勉強に励んでいた。進級試験は座学ともう1つ実技試験というのがあるらしい。それが何なのかは毎回違うということ、そして個人によっても違うらしい。能力や実力などを考えてのことだろう。


「ふぅーできた。」

「お疲れ様でした。ほらユーリ君も後少しですよ。」

「頑張ります…。」

「二人共別に頭が悪いわけではないのですからもう少し勉強する習慣を身に付ければいいんですよ。」

「そうはいってもねぇ。」


俺とアリアの村には教育を行う場というものはなかった。ほとんどは人は村の中で仕事をしてその生涯を終える。ときどき《女神の天恵》で優秀な能力者が出たら村を出ていくくらいで村から出る必要がなかったからだ。本や新聞で情報は手に入るし、時々来る冒険者なんかに話しをしてもらったりということもしていた。だから村の子供達は積極的に勉強をしようと思わない限りはあまり勉強をする習慣がないのだ。


「村では勉強する習慣がなかったから、中々スイッチが入らないんだよね。」

「うん。草原で走って遊んだり、森で果物探したりそんなことばっかしてたよ。」

「そうですか。私は勉強ばかりやっていたから少し羨ましいです。」


スカーレット家だけじゃなくて皆の家もきっとそうなんだろうな。貴族の家に生まれた以上幼い頃からそうい教育をされるのは仕方がないことだ。俺からすればむしろ良いことなんじゃないかと思うが、どちらにしろ悩みはあるものだ。


「さて、今日はそろそろ帰りましょうか。」

「そうだね。」


俺達は学園の図書室を出る。帰宅途中に偶然にもランマに出くわした。セルベスタ王国に帰ってきてからランマはかなりの頻度で家を空けている。何をしているのかを聞いても教えてくれないのだ。黒い甲冑の騎士の方はシャーロットに頼んで情報を集めてもらっているからあまり一人で無茶はするなと言ってあるが…。


「ランマ!」

「おお、皆殿!久し振りでござる。」

「ここのところずっと帰ってきてなかったけどどこに言ってたの?」

「それはこれでござるよ。」


ランマの懐から出てきたのは冒険者ライセンスだった。ランクは俺達と同じDランクだった。


「実はこの数日ずっと依頼をこなしていたでござるよ。」

「あれ?でもセルベスタ王国ってランクDからしか出たり入ったりできないんじゃないの?」

「たしか国ごとルールは違うんですよ。でも入るためにはそれなりの手続きが必要かと思いましたが…。」

「そうでござる。大和国では冒険者ライセンスはなくても、国外に出るのは比較的簡単でござる。ただ入国となると冒険者ライセンスDランクは必要でござる。今回セルベスタ王国に入れたのは姫殿が根回ししてくれたおかげでござるが、結局大和国へ帰ろうと思うと必要でござるから頑張ってたというわけでござる。」

「なるほどね。」


大和国では身元が割れないように冒険者ライセンスを使わずに入国したから知らなかったな。ヴェルス帝国もすでに魔族に襲われていたから入国審査はなかったしな。これから国外に出る時は気をつけなければ。


「しばらくはお屋敷で厄介になるでござる。」

「うん、もちろん大歓迎だよ。」

「それじゃあ私はこのへんで。」

「ばいばい。」

「さよならでござる。」


エレナと別れ俺達は屋敷へと帰った。翌日先生から進級をする者は残るようにと言われた。意外にもクラスの4分の1くらいは残っていた。他のクラスがわからないから比較できないが、ディランの話じゃ九割が見習い騎士を目指すって言ってなかったか?


「エレナ、結構残ってる生徒多くない?」

「他の子達に聞いたんですけどやはり以前の聖騎士祭での魔族襲撃が少しトラウマになっている子達も多いみたいで、騎士になるかどうか決めかねているようです。」

「そうなんだ。たしかにあれを見ちゃうとなかなかね。」


以前魔王軍四天王“剛腕”のバリオンが聖騎士祭で現れた時はイヴァンの一撃も全然効いていなかったし、一撃で会場を破壊したあの衝撃がトラウマとして残ってるのだろう。あの時は俺も死にかけたしトラウマになるのも無理はない。あれは別格といえば別格だからそうそうあのクラスと戦闘にはならなそうだが、これから先魔族や魔物と戦うことは避けられない。騎士団なら尚更そうだろう。


「はい。ここにいる皆さんは進級をするということでよかったですね。それでは軽く進級試験について説明させていただいます。まず試験は学科と実技の2つを行います。学科は普段の授業から出題される問題なので勉強をして対策をしてください。実技については個人の成績や能力を判断して決まりますので、詳細はお待ち下さい。以上で説明は終わりになります。何か質問ある方は?」

「はい先生。進級試験って落ちたらどうなるんですか?」


一人の女子生徒が質問をした。たしかに進級試験に落ちたらどうなるんだろう。留年になるんだろうか。


「進級試験に落ちたら追試になりますそれでも落ちたら留年という形になりますが、あまりにも酷い成績だったら場合によっては…退学になります。ですが安心してください、今まで進級試験で退学した人はいませんから。」

「ありがとうございます。」

「他に質問がなければこれで終了します。皆さん学科の勉強は一週間後ですのでしっかりと勉強して備えておくように、それとユーリ君はこの後残ってください。」


俺は教室を出ていくクラスメイトからまたコイツ何かやったのかという視線を浴びる。何かやった覚えはないのだが、まさか成績が悪くて…とかじゃやないだろうな。ちゃんと授業に出ていない分の補習は受けているはずだが…。


「じゃあユーリ君先に図書室に行っていますから。」

「頑張ってね、ぷふ…。」


そう言ってアリアとエレナは教室を後にする。アリアの奴絶対にバカにしているな。後でとっちめてっやろう。俺は教室にリリス先生と二人になる。


「先生、俺何か不味いことしましたか?」

「何かやった自覚があるんですか?」

「ない…はずです。」

「ふふふ、お説教じゃないですよ。とりあえず学園長のところに行きましょう。」

「はい。」


学園長からの呼び出しだったか、となると最近の出来事について聞きたいとか?でも詳細はシャーロットから聞いていると思うのだが。俺はリリス先生に連れられて学園長室に向かう。


「失礼します。」

「入りたまえ。久し振りだなユーリ。」

「ええ。学園長お久しぶりです。で今回はどうして呼び出されたのでしょうか。」

「ああ、君何でも《聖剣》を欲しがっているそうじゃないか。」

「たしかにそうですけどどうして学園長がそれを知ってるんです?」

「細かいことはいいじゃないか、それで実は君の進級試験だが《聖剣》伝説の調査という名目にしようと思う。ついでに手に入れてこい。」


どうして学園長が俺が《聖剣》を欲しがっていることを知っているのかわからないが、王様にでも聞いたのだろうか?それに調査という名目で手に入れてこいって…。


「それは構いませんけど、どうして学園長がわざわざ俺にそれを?」

「それは私が《聖剣》伝説のあるドワーフ達の国ガルタニアの出身だからだよ。王から君に説明をするように頼まれたのだ。」

「そうなんですか。」


ガルタニア国はセルベスタ王国より西に位置する国で人口のほとんどがドワーフ族であることからドワーフの国と呼ばれている。ドワーフという種族は手先が器用で鍛冶や細工などが得意だったはずだ。


「ガルタニアに行って《聖剣》の伝説を調査するのが俺の進級試験ということですか。ついでに《聖剣》も手に入ればいいと?」

「そうだ。一石二鳥というやつだ。」

「結構簡単にいいますけど、それって結構ハードじゃないですか?」


《聖剣》の伝説は各地に存在する。中でもガルタニア国の《聖剣》伝説は最も有名なのだ。その昔ガルタニアの近くに大きな湖があった。ある若い王がそこで《湖の乙女》に剣を与えられた。その剣を使い若い王は幾つもの伝説を残しやがてその剣は《聖剣エクスカリバー》と呼ばれるようになった。晩年その王は湖に《聖剣》を投げ入れたと言う。今現在湖があった場所は鉱山になっていてその場所に辿り着けるものはいないという話だ。俺が《創造(クリエイト)》した《贋聖剣》に“エクスカリバー”と名付けているのもこの伝説の《聖剣エクスカリバー》をモチーフにしているからなのだ。


「どうしてそう思う?」

「正直この話、御伽噺だと思ってるんですよ。伝説っていっても残ってるのこの情報だけだし、仮に本当だったとしても湖くらい発見してるだと思うし《聖剣》自体見つかってそうですもん。」

「なるほど。ユーリ、君の知っている伝説話してみろ。」

「良いですけど。たしか―――」


俺は学園長にガルタニアの《聖剣》伝説を話す。ところどころ相槌を打っているからおおよそ間違ってはいないはずだ。


「そして湖があった場所には鉱山ができて辿り着けないって話です。あってますよね?」

「その通りだ。だが少し足りないな。」

「足りないですか?」

「湖があった所に鉱山ができたというのはな、湖に落とした《聖剣エクスカリバー》が鉱山になったんだよ。」

「はい?《聖剣》が鉱山に?」


学園長が言うには湖の周辺に済んでいた人々が生活に困り、王はなんとか解決できないかと《湖の乙女》に頼んだ。すると剣を湖に投げ入れれば剣の魔力によって鉱山ができ、そこで取れた鉱物を加工して生活ができるようになると言われた。王は迷いなく湖に剣を投げ入れ鉱山ができたらしい。


「ほー。でも尚更その《聖剣エクスカリバー》はもう実在しないってことじゃないですか。」

「ちっちっち、甘いな。《聖剣》の“魔力”で出来た鉱山だぞ?」


《聖剣》の“魔力”でできた鉱山だから…そこで取れる鉱物は《聖剣》の“魔力”が宿っているってことか?


「つまりその鉱山から取れる鉱石から《聖剣》は作れるってことですか?」

「可能性だがな。どうだ少しは望みがありそうだろ?それじゃあ早速行ってきてくれ。」

「はい。えっ?俺だけ進級試験今からですか?」

「善は急げって言うだろ?それに一週間後の学科試験に間に合うように帰ってこないと留年どころか退学だぞ。」

「そんな無茶苦茶なー。」

「安心しろ、ガルタニア国はここから3時間もかからないし、今回は特別に合同試験とするから後2人助っ人を用意しておいた協力してくれ。もう門の前で待ってるぞ。」

「ちくしょう、なんで俺だけ!覚えてろよ!」


俺は後ろで学園長の笑い声が響く中、急いで学園長室を後にし学園の門へと急いだ。そこには見覚えのある馬車が待ち構えていたのだった。

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