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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
戦華九人剣客編

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第六十二話 死者の生還

シャーロットの頭痛と同タイミングでエレナにも頭痛が起こった、それがどうして起こったのかエレナにもまた直感で理解できた。これは《勇者》である自分だから起こっているのだと。もしかしてユーリに何かあったのではないかと感じた。


「うっ……。」

「エレナちゃん大丈夫?」

「私は大丈夫です。ですがもしかしたらユーリ君に何かあったのかもしれません。そろそろ追いかけましょう。」

「うん。」


2人は不安を覚えながら上へと進んでいく。最上階に着くと部屋の真ん中に血溜まりを見つける、その中心にいるのは………ユーリだった。ランマの姿は見えない。


「ユーリ!!!!」

「ユーリ君!!!」


2人はすぐに駆けより、アリアは『治癒魔法(ヒール)』を掛ける。しかしユーリの意識は戻らない。すると下から上がってきたイヴァンとディラン、それにツネヨシ将軍を屋敷へと運んできたランマがこちらに駆け寄ってきた。


「これは…」

「なんてことだ!『治癒魔法(ヒール)』!!!」

「拙者が殿を救出してる間に…」

「ランマさんのせいではありません。」


合流したイヴァンも『治癒魔法(ヒール)』を発動する、ユーリの傷はみるみる塞がっていく。エレナはランマに罪悪感を持たせないために励ますが、どちらにせよランマが居ても被害者を増やしていただけだとエレナは思った。ユーリがこの有様だ、自分達が居ても勝てなかっただろう。


「傷は塞がったが…意識が戻らない!」

「そんな…!」

「それじゃ…ユーリはもう…。」

「残念だが…ユーリ君は………死んだ…。」

「そんな…いやぁぁぁぁぁぁ!!!」


アリアはユーリの死体を抱きながら、大粒の涙を流しながら叫んだ。アリアだけではないその場に居た全員が涙を流したのだった。


◇◆◇◆


何もない真っ白な空間に漂っている。体の感覚はなく、そして意識だけがはっきりとしている。ここはいつも死にかけると女神様と会話ができる不思議な空間だ。


「ということは俺はまた死にかけたのか、というか死んだんのか?」

《そうですね。間違いなくあなたは死にました。》

「女神様!…女神様?」


俺が声の方に振り返ると、そこにはとても美しくまさに神々しいという言葉が相応しい女性が微笑みながらこちらを向いていた。


《はい、姿を見せるのは初めてですね。》

「でもどうして女神様の姿が見えてるんでしょうか?」

《今までは死にかけだったので、ここまではっきりと意識がここに来ることはありませんでした。ですが今回は本当に死んだのでこれだけはっきりと姿が見えるようになったのでしょう。》

「なるほど…ってつまり俺は本当に死んだってことですか?」

《はい。本当に死にました。》


そういって女神様は満面の笑みでこちらを見る。いやいや笑い事ではないんですが…。このままじゃ《勇者》が揃わないし《魔王》も倒せない。というか俺は《7人目の勇者》だから元々数に入ってないとか?いや皆と会えないのも辛いし、何よりアリアにまだ気持ちも伝えてないし。俺は色々な思いが頭に巡った。


《ユーリ、安心してください。復活する方法はあります。》

「えっ!そ、そうなんですか!?」

《はい。その前に私に聞きたいことがあるんじゃないですか?》

「ありますけど、教えてもらえることなんですか?」

《今回はいつもよりこちら側に近いですから、いつもよりは知りたいことをお話できるかもしれません。》

「それじゃあ、《魔王》が元《勇者》だったっていう話は本当なんですか?」

《本当です。彼は私がこの世界に《勇者》として送り込んだ《迷い人》なのです。ユーリも知っての通りあの悲劇が合ったせいで彼は《魔王》になってしまいましたが…。》


やはりブリジットさんが守っていた《勇者》秘密は本当だったようだ。だが《魔王》はどうしてそれを知られると困るのだろうか。


《すみません。それは私には答えられないんです。ですがヒントなら教えることが出来ます。》

「そうですかって頭の中の考えに返事しないでくださいよ。」

《ふふふ、ごめんなさい。》

「それでヒントっていうのは?」

《これから話すことはあなたの復活にも関係がある話です。《迷い人》がこちらの世界に来る際に2つの方法があります。1つは転生と呼ばれる方法で新しくこの世界に赤子として生まれ変わり、成長するに連れて記憶を思い出す方法。もう1つは転移と呼ばれる方法で記憶も身体もそのままこちらの世界に来る方法です。》


なるほど例えばコータであればこちらの世界に産まれて、育っている《迷い人》だから転生と呼ばれる方法でこの世界に来たってわけか。


《そうですね。実際はほぼ転生という方法ですね。今までに転移でこちらの世界に来たのは2人しかいないのです。》

「もう頭の中読まないでくださいよ!」

《すみません。つい…。》

「でもどうして転移の方は少ないのでしょうか?」

《どちらかの方法を自由に選べるわけではないのです。人間は死ぬと魂となってここに来ます。魂の状態になった時点で転生することしかできないのです。》

「じゃあ転移はどういった場合なるんですか?」

《手違いで死んでしまった場合です。》

「手違い…ですか?」

《そうです。詳しくは申せませんが、どの世界でも生物にはある程度生きる期間というのが決められています。それを管理しているのが我々神の役目ですが、何らかの理由でその期間よりも早く死んでしまった場合に限り、魂の状態ではなく身体も含めてこちらに来る事ができるので、転生か転移を選べます。》

「なるほど。でそれを選んだ人がこの世界には2人いたってことですね。」

《はい。そしてその選択をした2人が元《勇者》で現《魔王》とあなたの父親なんです。》

「えっ…父さんもなんですか?」


話の流れからなんとなく《魔王》はそうなのかと思っていたが、まさか父さんも転移組だったとは。


《そしてユーリが復活できるのもそれが理由なのです。あなたは唯一転移者と現地人のハーフなので魂が普通とは違います。それと《勇者》だから私に会うことができるという条件が揃っているので復活することができるのです。》

「な、なるほど?魂うんぬんはよくわからないですが、《勇者》も関係あるんですか?」

《はい。先程死ぬとここに魂の状態で来ると言いましたよね?一応定型的な説明はするので私と会っていますがきちんと身体がない、つまり頭がないのでほとんどそのやりとりを覚えていないのです。ですが《勇者》だけは身体がなくても覚えていることができるのです。エレオノーラさんも覚えていたでしょう?》


そういえば聖騎士祭の時魔族にやられてエレナも死にかけて、女神様に会ったんだったな。おかげで《紅蓮の勇者》というか俺は他の《勇者》の力を借りて使うことができると知れた。じゃあコータは女神様と会ったことを覚えていないだけで本当は魂の状態だけでは会っているってことなのか。


《コータはおぼろげには思い出したようですが、おそらくそれはあなた達《勇者》が近くにいる影響でしょうね。ユーリは魂が2つの世界が混ざり合っているおかげで身体がなくても身体を再構成するための情報を正確に覚えているので転移のための条件が揃っているというわけです。》

「じゃあ俺は生き返るというよりは厳密には新たに転移するということですか。」

《はい。そうすることで実質生き返ることができるというわけです。ですがそれも時間制限があるのでそろそろしないと二度とできなくなります。》

「え!?それなら早くお願いします!!!」

《最後に注意点だけ、復活できるからといって何度も生き返らせれるわけではありません。死ぬたびに魂は傷つき生き返れても同じ様な人間には戻れません。》

「つまりどういうことですか?」

《転移を繰り返すたびに魂は傷つき正確に身体を再現することが難しくなります。なのでなるべくというか死なないでください。》

「わかりました。俺だってあんなに痛い思いをするのはごめんですよ。ありがとうございました!」

《それでは転移させます。皆さん待っていますよ。》


俺は光に包まれ、意識を失う。結局《魔王》が転移で来た《迷い人》ということが知られたくないことの答えというかヒントだったんだろうか?聞き忘れてしまった。そう考えていると自分の身体に感覚が戻るのがわかった。まだ重いがゆっくりと身体を起こし、眩しさに目が慣れていないがゆっくりと瞼を開く。そこにはいつものメンバーが涙を流し口を開きながらこちらを見ている。死んだはずの人間が生き返ったらそりゃ驚きもするだろう。


「た、ただいま。」

「ユ、ユ、ユーリーーーーー!!!!!」

「ユーリ君!!!」

「ユーリ!!!」


アリアが泣き叫びながら俺に抱きついてくる。それに続いてエレナにシャーロット、コータにディランまで抱きついてきた。


「ははは、皆心配かけてごめん。」

「ユーリ君、君たしかに死んでたよな?!」

「イヴァンさん、そうなんですけど色々あって生き返っちゃいました。」

「いや、本当に…本当によかった…うっ…。」


これだけ皆に心配されるのもなんだか申し訳ない。やはりもう死ぬことはできないなと俺は思った。

少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

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