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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
戦華九人剣客編

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第六十話  神の槍

アリアとエレナはバーストの口から出た言葉の意味がよくわからなかった。魔族の価値観は理解できないことが多いのは間違いないが、特別このバーストという魔族は何を言っているのかわからない。


「俺は女が嫌いだ。だから女を殺す。」

「どうしてそうなるのかわかりません、それにユーリ君と話をしなかったのはどうしてですか?」

「男に興味がねぇからな、特に人間族の。会話もしたいと思わない。」


バーストは先程までの不可解な行動を説明するが、アリアとエレナは理由を聞いてもやはりピンと来なかった。それにはもう一つ理由がある。ランマの存在だ、見た目こそ侍と呼ばれる格好ではあるが彼女も女性であるからだ。


「女が嫌いとういうことならば、どうしてランマ…もう一人刀を持った女の子は指名しなかったんですか?」

「あぁ?あいつ女だったのか。胸もねぇし、てっきり男なのかと思ったよ。まぁお前らを殺した後に殺すだけだ。」


どうやらランマの見た目から女性とは思わなかっただけのようだ。だが偏った危険な思想を持っているのは間違いない。


「さて、無駄話はここで終わりだ。改めて、魔王軍《序列十三位》“炎火”のバーストだ!お前たちを殺してやるよ!」

「私達だって簡単に負ける気はありませんよ!」

「サポートは任せて!」

「行くぜ!『悪魔の炎槍ディアボリカル・ファイアランス』オラァ!!!」


バーストは禍々しい炎槍を出し、こちらに向かって投げるように放つ。アリアとエレナは防御魔法を発動させるため手を前に出す。


「『炎の壁(フレイム・ウォール)三重(トリプル)』!!!」

「『水の壁(ウォーター・ウォール)五重(クインティプル)!!!!!」

「甘いぜ!その程度じゃ俺の炎は止められねぇ!!!」


悪魔の炎槍ディアボリカル・ファイアランス』は『炎の壁(フレイム・ウォール)』と『水の壁(ウォーター・ウォール)』で勢い衰えることなく、二人に襲いかかる。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

「きゃぁぁぁあぁぁ!!!」


幸い二人に直撃はしなかったので軽症で済んだ。しかし直撃していたら命はなかっただろう。その破壊力は城を貫通し大きな穴ができるほどだ。普通の『炎の槍(フレイム・ランス)』ではここまでの貫通力と破壊力を出すのは多重展開をしても難しいだろう。


「いちいち甲高い声で叫ぶんじゃねぇよ。」

「ぐっ…強い…。」

「あんな魔法見たことありません。やはり…」


二人共、魔族の使う魔法が自分達のそれとは異なることを知っていたが、これほどまでとは思っても見なかった。エレナは《副技能(サイドセンス)》でバーストの魔力を見てみる。何かわかるかもしれないと考えたが思いもよらぬ事実を知り、動揺してしまった。それはこのバーストという魔族には魔力が流れていないということだった。今目の前に魔力も感じるし、魔法を放った際も確かに魔力を感じた、にも関わらず何も見えないのだ。以前戦ってきた魔族には感じたのに。


(一体どういうこと…。)


「ボケっとすんなよなぁ!『悪魔の炎球ディアボリカル・ファイアボール』」

「エレナちゃん!『身体強化(フィジカル・ブースト)四重(クアドラプル)』!!!!」


アリアは『身体強化(フィジカル・ブースト)』を発動しエレナを連れて攻撃を回避する。エレナはすぐに頭を切り替え戦闘に集中する。今は考えても仕方がない。エレナは『身体強化(フィジカル・ブースト)三重(トリプル)』を発動させる。


「ありがとうアリアさん。助かりました。」

「ううん、大丈夫?」

「ええ、ありがとうございます。」

「ちょこまかと逃げ回るだけか?まあ俺に勝てるわけないもんなぁ!」

「アリアさん少し時間を稼いでいただけますか?」

「任せて!『魔法弾(マジック・ショット)機関銃(ガトリング)』!!!」


魔法弾(マジック・ショット)機関銃(ガトリング)』は複数の魔法弾を放つ魔法である。それだけならば多重展開の『魔法弾(マジック・ショット)』と変わらないが、そちらよりも弾数が多くスピードも早く発動ができる。その代わり手元から放ったあとは操作することができない。


「この程度じゃ俺の身体に傷一つ付かねぇよ!」

「足止めだからね、エレナちゃん!」

「助かりましたアリアさん。」


アリアが横にズレるとエレナがバーストに向かって魔法陣を展開する。『炎の槍(フレイム・ランス)』『増大(ブースト)二重(ダブル)』の魔法陣である。この魔法の組み合わせで放たれるのはエレナの中で最も攻撃力と破壊力のある魔法。


「『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』!!!」

「ほぅ、面白いもんあるじゃねぇか。来い!!!」


バーストは『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』をまったく避けようとせず、真正面から受け止める。そのまま両手で握りつぶした。手からは出血しているがすぐに回復する。何でも無いとう感じで手を払った。


「な………。」

「そ、そんな…」

「悪くはなかったが所詮はこの程度だ。だから女は嫌いなんだよ、弱いくせに無駄に足掻こうとする。」

「どうしてそこまで女性に固執するの?」

「お前らに言う必要はねぇな。仲良く死にな!『悪魔の炎槍ディアボリカル・ファイアランス』」


アリアの疑問に答えることなくバーストは再び魔法を放つ。アリアとエレナはギリギリで回避する、『身体強化(フィジカル・ブースト)』を発動していれば回避できないほどではない。しかしエレナの『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』が効かない以上、有効的な攻撃手段がない。このままではいずれやられてしまう。


「これならどう!『聖なる光(ホーリー・ライト)』!」

「何だこの光は!グッ…ガァ…。」

「やった!効いてるみたい!」

「アリアさんその魔法は?」

「九人剣客との戦いで覚えたの。光《聖》属性の魔法をね、これしか使えないけど。」


エレナは聞いたことがあった、光属性の魔法の中には《聖》ありとあらゆる厄災から身を守ってくれる魔法があることを。そんな魔法をアリアが使っているのは《大賢者》の能力があるとはいえ流石だと思った。このままならいけるかもしれないと。しかしアリアの放った『聖なる光(ホーリー・ライト)』は《聖》の中でも初歩的な魔法でありそこまで攻撃力がなく、バーストを倒すには至らなかった。


「今のは中々危なかったが、その程度じゃ俺を倒すことはできない。やはり貧弱な女が放つ魔法など意味がない!」


そうやって高笑いをするバーストを見ながらエレナはある作戦を思いつく。これならあいつを倒せるかもしれない。アリアに作戦の概要を伝える。


「やってみる価値はあると思います。」

「そうだね。私達なら絶対に成功させられるよ!」

「無駄な作戦会議は終わったか?」

「ええ、無駄かどうかはわかりませんけどね!『煙幕(スモークスクリーン)』!」


エレナは煙幕をしバーストの視界を奪う。バーストはたたじっと立っている。向こうがどんな攻撃をしようが自分を傷つけることはできないのだ。すると四方から『魔法弾(マジック・ショット)』が飛んでくる。バーストは無駄な足掻きをすることに苛立っていた。片腕で振り払うと今度は無数の『炎の矢(フレイム・アロー)』が飛んでくる。


「洒落臭せぇ!こんな物…何!?」

「ここです!」


煙に紛れて気配を消したエレナが『炎の剣(フレイム・ソード)』で背後から斬りかかる。だがバーストは即座に反応しエレナの身体に腕を突き刺す。しかしそれは炎になりバーストの身体に纏わり付き、動きを止めた。煙が薄くなり二人の姿が見えたと思ったら先程のように魔法陣を展開していた。


「『陽炎(ヒート・ヘイズ)』『炎の鎖(フレイム・チェーン)』」

「例え両手を塞いでも、さっきの魔法じゃ俺は倒せねぇぞ!」

「先程と一緒ならそうかも知れません。」


エレナは『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』の体勢に入る、そこにアリアがもう一つ魔法陣を展開する。『聖なる光(ホーリー・ライト)』の魔法陣である。


「でもこれなら《聖》属性を付与できる。エレナさん!」

「これに賭けます!『揺レ動ク神ノ槍(グングニル)』!!!」

「『聖なる光(ホーリー・ライト)』!!!」

「「『合体魔法(シンクロ・キャスト)神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』!!!!!」」

「グォォォォォ!!!!!」


エレナが考えた作戦はまず目くらましで油断させ、背後の攻撃が狙いだと思わせる。そこを対処させた際に動きを止め、ダメージを与えることが出来た魔法を組み合わせるというものだった。『合体魔法(シンクロ・キャスト)・神が与えし聖なるロンゴミニアド』は真っ直ぐにバーストへ向かい、動きが取れないため直撃する。


「や、やりましたか…。」

「もう魔力すっからかんだよ…。」

「………グフッ……オマ…ラ…。」


バーストは身体の半分が消し飛んだが、片足で立ちながら息を吹き返した。もうエレナもアリアも戦うだけの魔力は残っていない。するとさっき下でアレストール親子と戦っているはずのボルナという魔族が現れた。


「あなたがこれほどやられるとは。」

「うる…せぇ…。」

「目的は達成されたので帰りますよ。」


そう言うとバーストを連れて消え去った。2人はその場に座り込んでしまう。今までに魔族と違いそういった仲間を助けるといった行為をしたことに驚いたが、安心感の方が強かった。


「助かりました…もう戦えませんでした。」

「うん…でもなんで帰ったんだろ。」

「目的は達成されたと言っていましたね…ユーリ君達大丈夫でしょうか。」

「ユーリ…。」


2人は連戦からの疲労ですぐには動けないでいた。ユーリ達が心配だ、後を追いかけるために少しでも回復するためにその場にただじっと座り込むのだった。

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