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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
戦華九人剣客編

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第五十八話 魔物の謎

イヴァンは皆を送り出した後、街の魔物の対処に当たる。国の役人たちも魔物の対処には当たっているがその殆どがやられている。


「『雷の槍(ライトニング・ランス)三重(トリプル)』!!!」


9本の『雷の槍(ライトニング・ランス)』がそれぞれ魔物に突き刺さる。役人たちが倒せないのも無理はない、この魔物は《アイアン・タートル》という非常に防御力の高い魔物である。その名の通り鉄で甲羅や皮膚ができており、ただの刀では傷つけることも出来ない。


「助かったよ、あんたは一体…」

「それよりもこの魔物はどれくらい出現しているかわかるか?」

「あちこちに出現して正確な数はわからない、それに甲羅や皮膚が固くて傷つけることもできないんだ。」


刀で傷つけることは難しいが、実は《アイアン・タートル》の弱点は魔法である。物理的な物は無理だが初歩的なものでもほとんど通用する。だがこの国には魔法をメインとして使って戦える人材は少ないのだ。ツネヨシ将軍になってから魔法使いの迫害はなくなったとはいえまだまだ多いわけではない。


「わかった。あの魔物は魔法に弱い、魔法を使える者に協力をしてもらうんだ。それとケガ人はハミルトンの屋敷へ連れて行くように皆に伝えてくれ。」

「わかったよ。あんたはどうするんだい?」

「私は魔物を倒して回る。『身体強化(フィジカル・ブースト)三重(トリプル)』!!!」


イヴァンは魔物が出現している場所を回る。その間皆から九人剣客を倒したとの連絡があった。残るはユーリのみだ。魔物も全て倒した、新たに出現した魔物もいないようだった。だが、イヴァンには疑問が残っていた。《アイアン・タートル》は珍しい魔物で、自分ですら実物を見たのは初めてだった。それに役人達では対処できない魔物を放つ意味は何なのだろうか。これではドウマ・ゲンジが将軍になったとしても下手をすれば国民がいなくなってしまっていた可能性だってある。


(疑問は残るが今は皆の方が心配だ。)


イヴァンは急いで屋敷へと戻る。ウール、フルー、デリラの三人は命に別状はないものの重症で絶対安静状態で治療を受けている。キクさんはこの国で他国の『治療薬(ポーション)』などの薬品を売る商売をしているようだった。下手な治療施設よりこの屋敷はたくさんの治療薬が揃っており、3人はもちろんケガ人は皆ここに運びこまれ治療されている。コータ、ディラン、アリア、エレナ、ランマの5人は軽症かほぼ無傷のようだ。イヴァンが屋敷に着いてすぐにユーリも戻って来る、これで全員生きて帰ってこれた、一安心だ。


「皆無事でよかった。」

「ええ、イヴァンさん魔物の方は?」

「ああ、全て対処してきた。残るは城にいるドウマのみだ。」

「霧の結界は消えてるんですよね?それにしては霧が残っているようですが…」

「ああいった周囲の条件を変える様な結界は元に戻るのに少し時間がかかる。今なら魔法で霧を吹き飛ばすことができるはずだ。」

「それならそちらは僕に任せてくれないか?」


そう提案したのはコータだった。ユーリはずっと気になっていたが突っ込んで良いのかどうかわからず黙っていた。コータの様子がいつもより大人しいのだ。こういった状況でもいつもマイペースなのがコータなのにいつもより落ち着いている。エレナもそのことに気付いている様子だ。


「コータならこの中で一番風属性が得意だし、いい人選だと思うけど…コータ何か雰囲気変わった?」

「魔力の流れがまるで別人の様に変わっています。本質は変わってないですが…何があったんですか?」

「戦いの中で少し、前の世界のことを思い出しただけだよ。詳しいことはまた今度、それよりも急がなくちゃ将軍が危ないよ。」

「そ、そうだね。」


いつにも増して大人っぽくなっていることに慣れないがコータの言うとおりだ。何があったのかはわからない、しかし今のコータなら一人で任せても大丈夫だろうとユーリは思った。そんな話をしていると皆に伝えなければいけないことを思い出した。


「その前に皆に聞いてほしいことがあるんだ。」

「?」


ユーリはジュウベエとの戦いの中でドウマ達が今回の事件を引き起こしたきっかけを説明する。キクさん達はあの事件の事を聞いてもいまいち納得言ってないようだった。やはり当事者であるのに覚えていないようだ。


「そんな忘却魔法があるなんて…。」

「驚きだけど一旦置いといて。一体誰がドウマとジュウベエの記憶を思い出させたのかわからないんだ。」

「聞かなかったのか?」

「ごめん。驚きすぎて聞くの忘れてて。そいつらが今回の黒幕なんじゃないかって思うんだけど。」

「私も考えていたことがある、街に出た魔物は《アイアン・タートル》だったが本来この魔物は《迷宮(ダンジョン)》でも滅多に見ることのない魔物だ。ドウマや九人剣客だけでこれだけの数用意することができるはずがない、それに《アイアン・タートル》は魔法が弱点の魔物だ。」

「この国は変わったとはいえ、まだそのほとんどが侍と呼ばれる剣士が多いから魔法を使えるものが少なく《アイアン・タートル》に全滅させられる可能性もあったということですね。」


それではせっかく将軍になっても国民がいなくなってしまう。ジュウベエの話では他国に戦争を仕掛けるために戦力を増強させるといった趣旨のことを言っていたから本来の目的とはズレてしまっている気がする。


「でもそれって私達がいるから用意したんじゃないの?」

「そうかもしれないけど、いくら《勇者》がいるからってちょっと攻め過ぎじゃないかな。」

「たしかに。」

「ドウマや九人剣客を唆し手を貸している黒幕か。」

「とにかく城に乗り込んで将軍の救出をしないと!」

「「「おう!」」」


コータは再び門へと向かい、ユーリ含め後の6名は9つの鍵を持ち、城へと向かった。城に着くと以前来たときにはなかった鍵が9つ付いていた。


「この鍵はここを開けるために必要だったみたいだ。」

「中に進みましょう。」


俺達は門の中に入る。すると男が一人出迎えるように立っていた。


「待っていたぞ!勇者一行!」

「ドウマ・ゲンジ!」

「いかにもワシがドウマ・ゲンジだ。ここに辿り着いたということは九人剣客は皆死んだか。」

「殺してはいない。皆生きている。」

「ほぅ。ジュウベエを殺さずに倒したとは中々できるな。」

「ツネヨシ将軍はどうした!」

「この城の最上階で寝ておるよ。」

「返してもらうぞ!」

「ならば最上階まで来るがよい!待っておる!」


そう言うとドウマは姿を消す。どうやら今のは映像魔法だったようだ。しかし先程のドウマ・ゲンジは何か違和感を感じた。最初に映像魔法で見たよりもかなり落ち着いて見えた気がする。何故かはわからないけど妙な胸騒ぎがする、急がなければ。


「急いで最上階を目指そう!」


俺達が城の階段を駆け上がると開けた場所に出る。明かりがなく、全体的に薄暗い部屋だ。すると一瞬明るくなったかと思ったら、正面から無数の雷の矢が飛んでくる。イヴァンはいち早く反応し、俺達の前に立ち魔法を発動させる。


「『土の壁(アース・ウォール)三重(トリプル)』!!!」

「あ、ありがとうございます。イヴァンさん。」

「何者だ!」


イヴァンが声をかけると部屋にあったロウソクが灯り部屋が明るくなる。


「私は魔王軍《序列八位》“万電”のボルナ。」

「魔王軍だって!?どうして魔族がこんな所に。」

「薄々気付いているのではないですか?」

「大量の魔物の出現もドウマとジュウベエに記憶を思い出させたのもお前達が仕組んだことだったのか!」

「そういうことです。」

「目的は何だ。」

「そこまで教える義務はありませんよ。さぁここから先は通しませんよ。」


ボルナという魔族は再びこちらに攻撃を仕掛けようとしている。するとイヴァンとディランが前に出る。


「ここは我々に任せて先に勧め!」

「で、でも…」

「早く行かないとツネヨシ将軍の命が危ない。ここは俺達に任せろ!」

「わかった。二人共気を付けて!」

「逃しませんよ!」

「『雷の槍(ライトニング・ランス)』!」

「『雷の槍(ライトニング・ランス)』!」


イヴァンとディランは同時に『雷の槍(ライトニング・ランス)』を放ちボルナを吹き飛ばす。二人を残し、ユーリ達は先へと進んでいく。


「ディランどうして残った?」

「親父こそどうして残った?」

「雷魔法使いでしたか。ですがその程度の雷では私を倒すことはできませんよ。」

「ふっそれはこちらのセリフだな。あの程度の雷で《万雷》とは笑わせる。」

「どちらが本当に雷使いなのか…。」

「「教えてやる!!!」」


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