表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
戦華九人剣客編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/268

第五十話  潜入作戦

協力者になったキク・ハミルトンという女性。聞き覚えのあるその姓に俺達は驚きを隠せなかった。


「ハミルトンって…。」

「ユキさんと同じ姓だよね。」

「何か関係があるのでしょうか?」


ユキ・ハミルトン俺達の屋敷で身の回りのお世話や修行の相手をしている元冒険者である。東方の国出身と言っていたことを思い出す。


「あら、あなた達ユキを知っているの?ユキは私の孫よ。」

「そうなんですか?!」

「とりあえず私の屋敷に向かいましょう。道中でユキのことを聞かせて?」

「わ、わかりました。」


俺達はキクさんの屋敷へと向かう。その道中で俺達の自己紹介やユキさんが家でメイドさんとして雇われていいることを説明した。


「…というわけです。」

「そう、ユキは元気にやっているかしら?」

「はい。その失礼ですが先程仰っていたユキさんがお孫さんというのは本当ですか?」

「そうよ。ユキは私の娘であるユリの娘、ちゃんと血縁関係のある私の孫よ。」

「ユキさんはたしかこの国では魔法を使う人物は軽視されていて、セルべスタに冒険者になりに来たとおっしゃっていましたが…」

「今の将軍様、あなた達の国で言うと王様かしらね。この方の前任者がそれはひどく差別意識を持った方でね。侍という刀や剣を使う能力者こそが最強と考えていたの。」


ユキさんも同じ様なことを言っていたな。侍が強いとされていると、《大和国》風の剣士ってことみたいだけど、何故それが最強になるのだろうか?《勇者》や《大賢者》のことを知っていれば魔法を軽視するはずはないだろう。


「どうして前将軍はそう考えたのでしょうか?」

「この国が《迷い人》が作った国ということは知っているかしら?その人は刀を使い侍と呼ばれていたという伝承がこの国にはあるの。」

「なるほど、そういうことですか。」


つまり前将軍は《大和国》の創始者の伝承から侍を最強だと信じていた、いや思いたかったということだろうか。それが悪いこととは言わないが…それで魔法を使用できる者を差別するのはやり過ぎである。それでユキさんの様な有能な人材を結果的には国外に追いやってしまっているのはもったいないしな。


「本当は私がサポートしてあげなければいけなかったのだけど、私も魔法系の能力者でね、ユキが生まれる前に他国に旦那と逃げていたの。私はユキが産まれたことを知らないまま、娘が自殺したと聞いた時に初めてユキの存在も知ったのよ。」

「娘さん…ユキさんのご両親が自殺っていうのは?」

「二人とも刀を扱える能力者だったから、前将軍の側近として働いていたの。でも産まれてきたユキが魔法系の能力だったとわかって手のひらを返されるように二人共身分を剥奪されてしまって、自殺してしまったの。私の旦那つまりユキの祖父は侍だったから娘も侍でね。私の能力がユキに遺伝してしまったと思うと…うっ。」


そういってキクさんは涙を流す。だが、能力は遺伝することはない。話を聞いている限りではそう思っても仕方がないかもしれないけど、関係はないのだ。魔法系のキクさんと侍の祖父そして生まれた娘は侍。そのパートナーは侍でユキさんは魔法系。偶然ではあるが遺伝を信じてしまう気持ちもわかるし、そのせいで娘を亡くしてしまっている分責任を感じているのだろう。


「娘が死んだと聞いた十年前のあの日からずっとユキの行方を探していた…。まさかこんな所で見つけることができるなんて…。」

「キクさん…ユキさんもキクさんの事を聞いたら喜ぶと思います。」

「ありがとう、しんみりしてしまってごめんなさいね。ここが私の屋敷です。ユキのことはまた落ち着いたら詳しく教えて?元気にやっているとわかっただけでもよかった。」

「はい、もちろんです。」


キクさんが私の屋敷と言った場所はとても大きい屋敷であった。王都にある俺達の屋敷よりも大きい。かなりのお金持ちか権力者なんだろうか。キクさんは扉を開き、手を二回ほど叩くと男が現れる。エレナが驚いた顔でこちらを見る、俺は首を横に振る。言いたいことはわかる早すぎて見えなかったということだ。


「リュウ、お客様です。それとすぐに動けるように準備を。」

「はい、奥様。」


そう言うとまたしても消え去った。やはり早すぎる、かなりの実力者であることがある。


「さぁ、あなた達のこと詳しく教えてもらえるかしら。」

「は、はい。」


俺達はキクさんにここまでの事を説明する。そして人攫いは皆を城か《遊郭》というところに連れ去ったのではないかということを。キクさんはそれを聞くと再びリュウという男を呼び出し、言葉を交わす。


「ほんの一時間ほど前に城に怪しげな木箱が運ばれていたそうよ。恐らく攫ったのは忍ね。」

「しのび?」

「今の将軍が諜報活動に利用する集団よ。ここの戦闘能力はそこまで高くないけど、諜報に便利な能力者ばかり集められているの。」

「でもどうしてその忍がというか将軍が皆を攫ったんでしょうか?目的がわかりません。」

「そうね。直接乗り込んで聞いてみましょう。」

「えっ?入れるんですか?」

「私に任せて頂戴。さぁ、行きましょう。」


屋敷を出るとすでに馬車が用意されていた。俺達はそれに乗り込む。キクさんの話では正式に城へと入ることができるらしい。キクさんが何者かはわからないが知り合えてよかった。外を見ると先程まで何もなかった空間に突如城が現れる。どうやら着いたみたいだな。


「そこの馬車止まれ!どこの者だ!」

「そちらこそこの馬車をどなたの物と心得るか!キク・ハミルトン様であらせられるぞ!」

「し、し、失礼いたしました!」

「すぐに中に通し、将軍を呼ぶのだ!」

「はっ!」


リュウと呼ばれる人物は城の兵にそう言うと馬車をさらに奥へと進める。兵に案内された俺達は少し広い部屋に通された。椅子や机はなく地べたに座るのがこの国のスタイルらしい、慣れないな。しばらく待っていると気品のある老人が部屋に入ってくる。


「これはキクさん、こんな風に押しかけるとは珍しい何用ですかな?」

「ちょっとこの子達の話を聞いてね。最近ここに運び込まれた木箱について教えてもらえないかしら?」


老人はちらとこちらを見る。俺は睨み返すと、突如笑いだした。


「そういうことじゃったか。すぐに皆さんのところに案内しよう。」

「…どういうこと?」

「わからないですがとりあえず敵意は感じられませんし、着いて行ってみましょう。」


老人の後に着いていく。扉を開くとそこには攫われはずの皆がものすごくくつろいでいた。食事を取っていたりマッサージを受けている。俺とアリアとエレナはその光景を見て固まってしまった。そんな俺達を見かねてキクさんは老人に質問してくれる。


「ちょっとツネさん。これはどういうことかしら?」

「どこから話せばいいいのか…」

「あっ!ユーリ!アリアとエレナも!」

「どうしてこんな所に?」

「それはこっちのセリフだよ!もう!心配したんだから!」


デリラとフルーは呑気に質問をしてくる。ディラン、コータ、ウールにイヴァンとりあえず皆無事そうでよかった。そう思ったら気が抜けてしまい俺達はその場に座りこんでしまった。もう何がなんだかわからない、一体どういうことなんだ?


「とりあえず、一旦整理して話をしましょう。」

「まず、俺達はイヴァンさんからの救援を受け取ってここまで来たんだ。」

「そうだ。私達はイシュカにてヤマト国の連中に攫われた。そこでユーリ君に助けを求めた後気絶させられて、目が覚めるとここにいたんだ。」

「私達も起きたらここに居て、朝から何も食べていなかったし、ご馳走が出てきたからありがたく頂いてたってわけ。」

「自己紹介が遅れたの、ワシはこの大和国将軍ツネヨシ・クジョウじゃ。そこからはワシが話そうかの。不審な木箱がこの国に入っていると情報を得てな、ワシの部下に捜索させたところ御庭番衆からその木箱を取り上げて中身を開けたら何と人が入っておったというわけじゃ。」

「じゃあ誘拐したのはその御庭番衆という奴らなんですか?」

「そういうことじゃな。」


なるほどつまり何かの目的があって御庭番衆とやらは皆を攫い、そこを怪しまれこのツネさんの部下に助けてもらい俺達が合流したというのが大体の流れだな。


「何者なんですその御庭番衆というのは?」

「前将軍の元側用人のドウマ・ゲンジという男の諜報部隊じゃ。諜報というが実態は裏の仕事をさせるための犯罪集団じゃな。」

「どうしてそいつらが皆の誘拐をしたんでしょうか。しかも結局解放しているし。」


そこが一番よくわからない、結局目的は謎のままだ。誘拐するだけして結局このツネという老人達が引き取ることにも抵抗はしていない。つまり…


「もしかしたらこの国へ連れてくること自体が目的だったのかも知れんのぅ。だとしたらすぐにこの国から出るべきじゃ。」

「そうですね、俺も同じことを考えていました。何か起こる前にすぐに帰るべきですね。」

「では入り口までは私がお送りしましょう。」

「キクさんありがとうございます。」


こうして誘拐事件に疑問は残るものに俺達はこの国を後にすることにした。


少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

皆さまの応援が励みになりますので、ぜひ下部よりブックマーク・評価等お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ