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第五話 学園生活

「そろそろ王都に着く。二人共準備をするように。」

「ユーリ、起きてそろそろ王都だって。」

「…う、ふわぁ〜あ。わかったよ。」


どうやら俺はすっかり眠ってしまっていたようだ。昨日の疲れがまだ抜けていない中で馬車に揺られていたからだろうか。それにしても半日で着くとは驚きの速さだな、もう少しかかると思っていたが。それに休憩もまったくしなかったが、馬は大丈夫なのだろうか?揺れもまったくないとは言わないが穏やかであったし、そういう魔法でもあるんだろうか。


「あっ!見えてきたよ!」

「うん?」


頭を窓から出して見えてきたというアリアに習って、俺も窓の外を眺めてみることにした。すると大きな外壁と門が見えてきた。ここが学園のある王都のようだ、入るのに厳重な衛兵の審査をしている。ちらりと入口横の列を見るとかなりの人が並んでいる。一般の入り口はあちらのようだ。セシリアさん達のおかげでそこを俺達は素通りで通っていく。なんだか並んでいる人たちに申し訳ない気持ちになるな。


「うわぁー凄いよ!」

「本当だ…。」


王都は当たり前だが村とは比べられないくらい整っているようだ。道や水路がきちんと整備されており、建物も綺麗に整えられている。武器屋や商店、宿屋など色々なお店が並んでいる。しばらくは街を歩くだけでも退屈はしなさそうだ。そう考えていると馬車が止まった、どうやら目的地に着いたようだ。付いた場所は大きな屋敷のようだ。どうして俺達がここに連れてこられたのかはわからない。


「ここが君たちに用意された屋敷だ。」

「や、屋敷ですか?どうして俺達が?」

「ああ。ここは元々アリアのご両親のお屋敷だよ、ずっと放置されていたがね。学園の寮に住んでもらってもよかったが、せっかくなら使ってもらった方がいいと思ったんだ。」

「といっても二人でこの屋敷は大きすぎると思うんですが…。」

「そう思って住み込みで働いてもらう執事とメイドも用意してある。その二人も元々はアリアのご両親に仕えていたのだがな。」

「そうだったんですか。」

「何から何までありがとうございます。」


ここまで色々してもらってなんだか悪いなという気分がしてくる。アリアなんて屋敷を見た時から固まっているし。セシリアさんに連れられて門を通り屋敷の扉をノックする。中からどうぞという声が聞こえてきたのを確認し、セシリアさんが扉を開けるとそこには老紳士と黒髪の美女がいた。


「アリア様、ユーリ様ここまでの長旅お疲れ様でした。私は執事のマルク・アスターと申します。」

「私はユキ・ハミルトンです。メイドとしてお二人の身の回りのお世話をさせていただきます。」

「ユーリ・ヴァイオレットです。」

「アリア・リーズベルトです。」

「お二人のご両親には大変お世話になりました。何かありましたら私共になんなりとお申し付けください。」

「それでは私はここで失礼するよ。これから色々大変だとは思うがこの二人にお願いするといい。また何か困ったことがあったら連絡をしてくれ。すぐに駆けつけるよ。」

「「ありがとうございました。」」


俺とアリアはセシリアさんにお礼を言った後、屋敷の中に入る。マルクさんの方は服の上からでもわかるほど鍛え上げられた肉体だということがわかる。ユキさんの方も練り上げられた魔力とそれをかなり静かに抑えている感じだ。セシリアさんとまではいかないが、素人の俺にもわかるくらいだ。二人共かなりの使い手だろう、勝てる気がまったくしない。落ち着いたらこの二人に稽古をつけてもらうのもいいかもしれないな。


「さあ、まずは一週間後の入学式に備えて準備をいたします。」

「お二人にはやってもらなければいけないことがたくさんありますので頑張りましょう。」


それから学園に入学するための準備で大変だった。教科書類の準備や制服の採寸などを行いつつ、王都のことを教えてもらった。そしてその合間には俺はマークさん、アリアはユキさんに剣術や魔法のの指導を受けることにした。


「ユーリ様はたしか《魔剣士》でしたね。まずは剣術のみを鍛えましょう。」

「一応魔法もそこそこ使えるんですが…剣術だけですか?」

「はい。ユーリ様はまだ剣術の基礎が出来上がっておりません。なので今のままの状態では魔法頼りの剣術になってしまいます。魔力がきれたり魔法が使えない状況に陥った時に困ってしまいますよ。」

「なるほど、そういうことだったんですね。わかりました。」


村にはちゃんとした剣術を教えてくれる人がいなかったから助かるな。とはいえ魔法を使用しないと魔法力を鍛えることはできないからそちらは自主練習でもしておこう。村に居た時にわかったことだが、ある程度魔力は使った方が魔力の限界値が上がる気がする。


「アリア様の《大賢者》は魔法が思い浮かんでくるとお伺いしました。」

「はい。でも最近は思い浮かばなくて…。」

「それはアリア様はまだ知らないことが多いからですね。まずはユーリ様も含めて魔法の基礎的な部分から学びましょう。」

「わかりました!」


こうして俺達はそれぞれ一週間、剣術と魔法の修行に費やしてついに学園の入学式の日が来た。俺達は出来上がった制服に袖を通し玄関で見送りをしてもらった。


「それではアリア様、ユーリ様いってらっしゃいませ。道中お気をつけください。」

「はい。いってきます!」

「いってきます!」


屋敷から学園まではそこまで遠くないので徒歩で通うことになる。ほんの少し前までは村で生活していたのに王都で学園に通うことになるなんて考えられなかったな。


「あっ!ユーリ見えてきたよ!」


アリアが指をさす方を見るとそこには大きな城のような建物があった。ここが聖リディス騎士学園か。一体俺達の村何個分の大きさなのだろうか…校門だけでも端っこが見えないくらい大きい。


「これだけ大きいと迷いそうだね。」

「たしかにね。」


ドンッ!とアリアにぶつかる女生徒が一人。


「きゃっ!」

「わっ!」

「すいません。アリアちゃんと前を見て歩かないと。」

「ごめんなさい。お怪我はありませんか?」

「いえ、私もよそ見をしてしまっていたので。ごめんなさい。」


っ?!なんだこの感覚。アリアがぶつかった緋色髪の少女から何かを感じる。これは何だろうか、今までに味わったことのない不思議な感覚だ。


「それでは失礼します。」


緋色髪の少女は頭を下げ謝罪をすると足早に去っていった。


「なんだかとても急いでいたね。制服来てたから私達と同じ新入生かな?」

「多分そうだろうね。って俺達もそろそろいかないと入学式に遅刻しちゃうよ。」


俺達は急いで入学式が行われる会場に向かった。会場にはすでに生徒がかなり入っていた。ざっと200人くらいだろうか。皆学園に通うくらいだから、それなりの能力なんだろう。そういえば同じ年に6人目の《勇者》がいるって村にいる時に冒険者から聞いたな。この中にいるんだよな、俺の《7人目の勇者》のことも何かわかるかもしれない。何か接点を持つことができればいいのだが…。どうやらそろそろ開会の挨拶が始まるようだ。


「私がこの聖リディス騎士学園の学園長である。レリクス・ヴァーミリオンだ。君たちには《女神の天恵》によってもたらされた能力が備わっている。存分に学業に励み将来はこの国いや、世界を守るための騎士になれるように精進してくれ。以上で私の挨拶とさせていただく。」

「次は新入生代表の挨拶です。新入生代表エレオノーラ・スカーレット!」

「はい!」


あっ、あの子はさっきアリアとぶつかった子だ。新入生代表だったのか。うーん、やっぱりだ。あの子を見ていると何か特別な物を感じる…。エレオノーラ・スカーレットの挨拶が終わると、司会が軽く学園についての説明をして入学式は順調に進み終了した。そしてそれぞれのクラス分けが中庭に張り出された。


「やった!ユーリ、私達同じクラスだよ!」

「そうだね。よかったよ。」


実はセシリアさんに頼んでアリアと同じクラスになるように融通を利かせてもらっていた。理由はもちろんアリアを側で守るためだ。だが本人にそれを言うのは少し恥ずかしいので内緒にしておく。


「あっ、スカーレットさんも一緒みたいだよ。」

「本当だね。」

「よかったねユーリ。」

「どうしてよかったになるのさ。」

「だって、新入生代表の挨拶の時熱い視線で見てたもん…。」

「いや変な意味じゃないよ。でも彼女を見ていると何か不思議な感じがするんだよ。」

「それってまさか…。でもそんな…。」


アリアはぶつぶつと何かを言っている。正直アリアの考えているそれは勘違いなのだがな。言葉にするのが難しいのだが、何か他人の様な気がしないというそんな感じだろうか。彼女と話せば何かわかるかもしれない、同じクラスだしいつか話す機会もあるだろう。


「とりあえず教室に行こう。今日はミーティングだったね。」

「うん…。」


俺達がクラスの教室に入ると教室の中心に人だかりができていた。どうやら誰かが揉めている様だ怒鳴り声が聞こえる。学園生活の初日からこれとは先が思いやられるな。

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