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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
戦華九人剣客編

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第四十九話 《迷い人》が作った国

イシュカからヤマトを目指しかれこれ30分ほど経つ。そろそろ行商人になりすますために、魔法袋マジックポーチからシャーロットから貰った認識阻害のローブを二人に配る。これは《勇者》同士でもお互いにはっきり能力がわからなくなるレベルの効果がある、門番には見抜けないだろう。


「あとはこの万華鏡を『創造(クリエイト)』!!!」

「これで準備はOKだね。」

「ええ、行きましょう。」


万華鏡をいくつか『創造(クリエイト)』し、再びヤマト国へ向かって進む。すると木造でできた門が見えてきた。通行許可証を持っている人々はスムーズに入国できている。その隣には俺達と同じ様に別の国から来たと思われる人々が並んでいた。


「たしかにこれだけ入国したい人がいるのであれば怪しまれずに入国できるかもしれません。」

「問題は俺達が行商人として中に入れるのかってことだけどね。」

「とりあえず並ぼう。」


俺達は列に並び順番を待つ。順番に進んでいく、落ち込んだ顔をしてトボトボと来た方向に歩いていく行商人も多い。おそらく通行許可証はもらえなかったのだろう。かなりの人数がいるがかなりのペースで人数がはけていく。気づけば俺達の後ろにもたくさんの人が並び始めていた。…どうやら俺達の番が来たようだ。


「お前たちは何の目的があって来た?」

「行商人をしているトーリと申します。ヤマト国で商売をしたいと考えておりまして、通行許可証を発行していただきと考えております。」

「ふーん、横の2人は?」

「私の弟でございまして、アロとエルと申します。兄弟で商売をしております。」

「そりゃご苦労なこった。だが大したことない商品だったら商売はできないぞ。将軍様が変わってからは大分規制が緩くなってな。他国から商品を売って一儲けしようという奴らは多いが、どいつもこいつも長続きしない。流行り廃りが激しいからな、だからこうして俺達が見定めているという側面もある。それでお前たちは何を持ってきた?」


俺は魔法袋マジックポーチからいくつか万華鏡を取り出す。《迷い人》であるコータの世界の物だ、きっと驚くに違いない。


「こちらでございます。」

「こ、これは…万華鏡じゃないか!」

「…あれ?」


門番のリアクションは想像していたものとは違うリアクションであった。もしかして万華鏡はすでにこの国では有名なのか?俺は少し焦った。これでは通行許可証が発行してもらえないかもしれない。


「お前珍しい物持ってるな。これをどうやって手に入れた?」

「お、お抱えの職人がいましてある程度数は用意してございます。」

「なるほどなぁ。万華鏡は値段が高くてこの国じゃ地位のある役人か、そいつらが入れ込んでる《遊郭》の遊女くらいしか持ってないからな。量産できるならいい商売できるぜ。」


俺は適当にその場で嘘を付く。どうやらこの国では万華鏡は存在はしているが、値段が高く広く出回っている物ではないようだ。それならば…


「それでしたらそちら一つ差し上げましょう。」

「いいのか?子供が喜ぶよ。」

「その代わりと言ってはなんですが…」

「通行許可証を発行しろって言うんだろ?いいだろう。ったく商売人てのはちゃっかりしてるぜ。」

「ありがとうございます。」

「ほらよ。それと他国の人間はよく間違えるが、正式名称は大和国(ヤマトノクニ)だ。覚えておきな。」


門番に通行許可証を貰いヤマト国改め大和国(ヤマトノクニ)へと足を踏み入れたのだった。


「一時はどうなることかと思いましたが、なんとか入国することができましたね。」

「うん。万華鏡のこと知ってるってなった時は焦ったよ。」

「そう?ユーリがペラペラ嘘付くから結構余裕なのかと思ったよ。」

「ユーリ君は人を騙すのが上手なだけですよ。」

「人聞き悪いなぁ。」


そんなに俺は人を騙すようなことはしていない!…と思ったが俺は自身の《7人目の勇者》という能力を秘密にしていたことを思い出し、あながち間違いでもないと思ってしまった。気を取り直し、ここからはどうやって皆を探すのか考えなければならない。


「侵入できたのはいいけど、どうやって皆を探すかだね」

「そうですね。あまり目立つようなことをすると向こうに気付かれるかもしれませんし。」

「でも急がないと皆が心配だよ。」

「幸いこの国はもの凄く大きいわけじゃなさそうだ。手分けをして情報を集めつつ、『魔力探知マジック・ディテクション』で皆の魔力を探そう。くれぐれも認識阻害のローブは脱がないように気をつけて。一時間後にまたここに集まろう。」

「うん!」

「わかりました!」


俺達はそれぞれ手分けして捜索に当たることにした。この国の大きさはセルベスタ王国の王都より少し大きいくらいだ。三人で探せば一日で全て回りきることができるだろう。この国はどうやら木造の建築物の方が多いようだ。現地人は変わった服装をしているから一目で見分けがつく。他国から来た者も多いようで出店がたくさん並んでいる。


「この辺りにはいないか。他を探すか。」

「おいおい、婆さんぶつかっといて治療費もなしとはどういうことだぁ?」

「私はそんなつもりでは…それにぶつかってきたのはあなたの方では…」

「なんだぁババァ!兄貴に文句あるってのかぁ!?」


どこの国でもこういう輩は変わらないな。急いでいるが、この場面を見過ごすほうが皆に怒られてしまいそうだ。


「おい、そのくらいにしとけよ。」

「なんだぁこのガキは!?兄貴のこと知らねぇとは言わせねぇぞ。」

「知らないよ、格好を見ればわかるだろ俺は他国から来た。まそうじゃなくてもアンタの兄貴とやらのことは知らないと思うけど。」

「何だと!泣く子も黙る大五郎親分とはウッ…」


俺は子分の男が喋っている途中で鳩尾に一発拳を入れる。気絶した男はその場で倒れ込んだ。


「それで大五郎親分はどうする?」

「ふん!お前がただのガキじゃないのはわかってる、そんな相手に挑むほど俺は馬鹿じゃねぇ。」

「あっそう。」


大五郎親分とやらはそこまで聞き分けが悪い方ではないらしい。何だか最初の頃のガイウスとザイルの関係を思い出すな。大五郎親分は子分を抱えるとその場を立ち去った。さて俺も急がないと。


「あの、助けていただきありがとうございました。何かお礼を…」

「いえ、構いません。それでは俺は急いでいるので!」

「せめてお名前だけでも。」

「通りすがりの学生ですよ。それでは!」


俺は女性のお礼を断り、その場を後にした。その足で皆の魔力を探し続けるが見つけることができないまま時間になってしまったので、一度待ち合わせ場所に戻ることにした。二人はすでに戻ってきていた。


「二人共どうだった?」

「すみません。皆さんの魔力は見つけることが出来ませんでした。ですが怪しい所は見つけました。」

「私もエレナと同じで皆の居場所はわからなかったけどで怪しい所を見つけたよ。」

「俺は何も見つけられなかったよ。それで二人が見つけた怪しい所っていうのは?」

「私が見つけたのはこの国の城なのですが、どうやら外敵対策用の魔法のせいでかなり近づかないと城自体見えないようなんです。」

「なるほどということは?」

「そうです。もちろん中の魔力も探知できませんでした。なのでいる可能性はありますね。」


仮に城にいたとしたらかなり厄介だ。外敵対策は他にもあるだろうから簡単に侵入することはできない。


「私は街の外れの方にある門番の人が言っていた《遊郭》っていう場所を見てきたんだけどそこにも対策されていて『魔力探知マジック・ディテクション』ではわからなかったよ。」

「そうなんだ。」


門番はたしか《遊郭》の遊女がどうのこうのって言っていたな。一体どんな所かわからないが城よりは侵入しやすそうだ。


「でもそこには居ないかも。」

「どうしてそう思うの?」

「なんていうか全然人の気配がなくて逆に怪しすぎるというか。」

「なるほど。たしかに怪しいですね。」

「それは多分、まだやっていないからじゃないかしら?」


急に俺達の会話に参加してきた人物がいた。声の方に振り返ってみると、そこには先程チンピラから助けた女性がいた。


「あなたはさっきの。」

「ユーリ君、知っている人ですか?」

「うん。さっきチンピラに襲われてて助けたんだよ。」

「見つけることができてよかったわ。先程の会話少し聞かせてもらったわ。あなた達どうやらこの国にあまり詳しくないようだからお手伝いさせていただけないかしら?」


女性の提案に驚いた。たしかに俺達はこの大和国(ヤマトノクニ)にあまり詳しくない、協力者になってくれるならありがたい話ではある、どうする…俺が考えこんでいると女性は言葉を続ける。


「困っているんでしょう、私にお手伝いさせて?こう見ても私結構顔が広いのよ。」

「わかりました。それじゃあよろしくお願いします。」

「まかせて頂戴。」


皆のことが心配だ、一刻も早く見つけたい。手がかりがない以上協力してもらう方がいいだろう。俺達は女性の提案に乗ることにした。


「自己紹介がまだだったわね。私の名前はキク・ハミルトン。」

「ハミルトン?」

「ハミルトンってもしかして…。」


俺達はキク・ハミルトンと名乗った女性の聞き覚えのある姓に驚きを隠せなかった。


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