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第四十ニ話 下層へと続く道

俺達は隠し部屋の土人形(ゴーレム)と戦った後、大きな地震により部屋が崩れ落下していた。このままでは確実に死ぬ。


「うわぁぁぁ!死ぬぅぅぅ!!!」

「落ち着けコータ!ユーリ何かないか!このままでは死ぬぞ!」

「さっきからやってるけど魔法が発動できない!」

「何だって!」


先程から魔法が使えない。このままでは本当に落下死してしまうと思ったその瞬間、急に体がふわりと空中に浮いた。ディランとコータも同様に浮いている、ひとまずは心配いらなそうだ。そのままゆっくりと下の方まで下がっていく。


「どうなってるんだ…」

「これが僕の真の力ってことか。」

「それは違うと思うけど、でもとにかく助かったみたいだ。そろそろ下みたいだよ。」


ゆっくりと床に着地する、周りは暗くてよく見えない。かなり下の階層まで降りてきたようだ。そこで俺はイヴァンからもらった魔道具のことを思い出す。


「とりあえず、一度これで皆と連絡を取ろう。」


俺は赤い玉の魔道具に魔力を込める、これで玉を持つ者同士は通信ができるはずなのだが…何も反応しないな。その様子を見たディランとコータも同じ様に玉に魔力を込めるがどうやら反応はしていない。


「ダメだ。何も反応しない。」

「5階層よりかなり下の階層に来てしまったせいで距離があるからかもしれないな。」

「だけどここから元の階層に戻る方法はなさそうだね。先に進む道はあるけど。」

「これは僕達に先に進めって言ってるようだね!ならば進もうじゃないか!」


5階層に進む方法がない以上、コータの言う通り先に進むしか道は残されていない。危険はあるが、どの道迷宮(ダンジョン)から出るには入口に戻るか最下層まで行くしか方法はないからだ。


「『発光(ルミナス)』、どうやら魔法はもう使えるようだな。よし、俺が先頭を行こう。ユーリは後方を警戒、コータは戦闘に備えておいてくれ。」

「僕に任せたまえ!」

「わかった、任せて。」


発光(ルミナス)』はライトの様に狭い範囲だが明るく照らすことのできる魔法である。少ない魔力でも持続時間が長いので洞窟などで重宝する魔法だ。ディランを先頭にコータ、俺の順番に奥の道へと進んでいく。


◇◆◇◆


ユーリ達が隠し部屋を見つける少し前―――。


「隠し部屋はどこだー!魔物もどこだー!」

「デリラ落ち着いて。しかし中々隠し部屋見つかりませんね。」

「ふむ。隠し部屋はそう簡単に見つかるものでもないからね。魔力の流れに違和感がある部分を見つけるんだ。それと魔物の方は、恐らく私達の前にここを通った冒険者が狩って行ったんだろう。」

「えーつまんないー!」

「子供みたいなワガママ言わない!」


イヴァン達も隠し部屋を探しているが中々見つからない。デリラはこういった地道な作業は苦手ですでに飽きてしまっていた。そんな会話していると突然地震が起こった。


「きゃー!」

「ぐっ、どうなっているんだ!」

「二人共、伏せてその場でじっとしているんだ!」


しばらくすると揺れは治まった。イヴァンは2人の無事を確認すると少し安心した。


「今のは一体何だったんだ…。」

迷宮(ダンジョン)って地震が起こるんですか?」

「いやこんなことは始めてだ。嫌な予感がする。とにかく一度皆と合流しよう。」


そう言ってイヴァンが赤い玉の魔道具を使おうと思った瞬間、再び大きな地震があった。先程よりも揺れが大きく立っていられない。


「これは尋常じゃない!二人共近くに来るんだ!」

「うぅ…立っていられないよ!」

「本当に何が起こっているんだ!」


しばらくすると揺れが治まった。一刻も早く全員を連れてこの迷宮(ダンジョン)から出なければ危険であるとイヴァンは感じていた。魔道具に魔力を込める、しかし何も反応がない。


「非常に不味いな。ユーリ君達と連絡が取れない。」

「もしかしてさっきの地震で何かあったんでしょうか?」

「可能性はある。」

「だったらとりあえずこの階を探してみる?」

「いや、闇雲に探すのは危険だ。あの魔道具は私の魔力を込めて作ったものだから位置くらいは把握できるはずだ。」


そう言うとイヴァンは目を閉じ、魔道具に込められた自分の魔力を探る。しかしこの階層にはない、さらに広範囲に渡って調べる。10階層…30階層…50階層…だが見つからない。さらに下の階層に意識を集中させる。すると微かに自分の魔力を感じることができた。


「見つけたが…これは…」

「それでユーリ達は今どこに?」

「恐らくだが、50階層のさらに奥深くだろう。正確な位置まではわからないが…。」

「それってかなり不味いんじゃ…」

「急いで戻って団長達に知らせなければ。」


今現在この迷宮(ダンジョン)の最高到達階層は50階である。それよりも下の階層にいるということは自分達だけでは救援に行くことすらできない。下手をすれば自分達の方もタダでは済まないからだ。だからこそ一度戻る必要があるとイヴァンは考えていた。


「急ごう!」

「「はい!」」


イヴァン達は迷宮(ダンジョン)を後にし、セドリック達の元へと急ぐのであった。一方その頃セドリック達はルミの魔法に古代魔法、ひいては魔法無効へのヒントがあるのではないかと考え外で実験をしていた。


「うーん、ルミのドラゴンになる魔法って魔法陣も出てないしよくわからないよね。」

「魔力の質が変わって大きさも変わるというのは感じるのですが…。」

「どういうプロセスでそうなっているのかというのか全然わからないですね…。」

「アリア君どうですか?何か得られるものはありましたか?」

「いえ、まだ何も掴めていなくて…。」


ルミにドラゴンや人型になる魔法を繰り返し使用してもらい、皆でその分析をしているがまだ詳しいことはわかっていなかった。


「ちょっと休憩させてください〜。」

「ルミ君もお疲れ。それじゃあここからは座学の時間にしようか。資料をかき集めてきたから、皆に古代魔法について勉強してもらおう。」

「わかりました。」


外から邸に戻ろうとしたその瞬間、猛スピードでこちらへ向かってくるイヴァン達の姿が見えた。体に纏っている電気で少し発光しているところを見ると雷系の『身体強化(フィジカル・ブースト)』を使っていることがわかる。よほど急いでいるということは何かあったのかもしれないとセドリックは考えた。


「セドリック団長!」

迷宮(ダンジョン)で何があった?それに全員の姿が見えないが…。」

「それが…」


イヴァンはこれまでの経緯を軽く話す。迷宮(ダンジョン)の隠し部屋を見つけるために二手に分かれたこと。分かれた後に2階大きな地震があり、異常事態だと考えすぐに持たせた魔道具で連絡を取ろうと試みたが反応がないこと。そしてそれは50階層よりもさらに下の階層にいるからだということ。


「なるほど。非常に厄介だなすぐに私達も向かおう。イヴァン、君は冒険者ギルドに緊急依頼を出し応援を呼んできてくれないか?」

「承知いたしました。」

「それと君達はここで待つように。」

「どうしてですか?!」

「私達にも探しに行かせてください!」

「君達では危険だからだ。50階層よりも下の階層は正直私でもどうなるかわからない未知の領域だ。そんなところに君達を連れていくわけにはいかない。」


アリア達は言葉に詰まった、頭では理解できている。セドリック団長でも危険だと感じるような場所に自分達がいったところでどうなるわけでもない、いやむしろ足手まといだということくらい。しかし、尚更そんな場所にユーリ達がいると聞いて、心配でいても居ても立ってもいられないのだ。そんなアリア達を見てセドリックは言葉を掛ける。


「これは断定はできないことだが、おそらくユーリ君達は隠し部屋を見つけたのだと思う。」

「隠し部屋…ですか?」

「そう、でなければ5階層からいきなり50階層よりも下の階層に辿り着けないと思う。なんらかの仕掛けによって下の階層に飛ばされたのだろう。隠し部屋には基本的に迷宮遺物(アーティファクト)しかない、そこまで危険はないはずだ。だからそう悲観することはない、必ず私が皆を連れて帰ってくるよ。」

「は、はい…。」


セドリックの言っている推測は概ね当たっている、ただ一つだけ外している部分があった。隠し部屋には“基本的に迷宮遺物(アーティファクト)しかない”という部分だ。ユーリ達は5階層の時点で番人とも呼ぶべき土人形(ゴーレム)と戦闘をしている、しかもその時点では迷宮遺物(アーティファクト)は入手していないのだ。これは前例がないことだが、まだセドリック達はこの異常事態に気づいていない。それ故にセドリックには推測することができなかった。


「『身体強化(フィジカル・ブースト)』!それでは!」 

 ビュン!!!

「凄い、なんて速さなんだ。」

「アリアちゃん、きっと大丈夫だよ。」

「そうですね。今はユーリ君達を信じて待ちましょう。」

「うん。ユーリ無事でいて…。」


セドリックは『身体強化(フィジカル・ブースト)』を発動し、迷宮(ダンジョン)のある方へと向かっていった。その速さ流石は宮廷魔道士団長だともいうべきか、セドリックの桁違いな実力を知るには十分だった。今はただセドリックと信じるしか無い。アリア達はユーリ達の無事を祈るのであった。

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