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第三十七話 手がかり

俺達は授業が終わった後、シャーロットに呼び出されていた。内容はもちろんこの前の続きであるイヴァン達の居場所についてだろう。直接会うことができればシロを奴隷紋から開放するための手がかりが掴めるかもしれない。城の客間にて待たされる、城に来るのももう慣れてきた所だ。


「皆さんお待たせいたしました。」

「シャーロット、久しぶりだねってどうしたのその顔。大丈夫?」


シャーロットと会うのはヴェルス帝国から帰ってきてから実に2週間振りであったが、その顔は目の下に隈ができあきらかに疲労している様子が見て取れた。


「ええ…。」

「やっぱりヴェルス帝国の後処理は大変なの?」

「それもあるんですが…一番は…」

「いた!!!シャーロット!!!」


やつれたシャーロットの後ろから部屋に入ってきたのはルミナライゼことドラゴンのルミだった。彼女はシャーロットが面倒を見ながら、我が国の戦力として期待されているのだが…。


「彼女が原因です…。なんというか何をするにも元気いっぱいで物は壊しますし、言うことは聞かないですし手を焼いています。カルロスもご覧の通り。」

「うわぁ!びっくりした。カルロスいつからそこにいたの?!」

「皆様が入ってこられたときからずっといましたよ。」


部屋の隅っこにはすでに生気が薄れて明後日の方向を向いているカルロスが居た。この部屋に入ってきたときからいたのか、全然気づかなかった。あのカルロスがここまでになっているなんて、ドラゴンという生物のパワーは恐ろしい。当の本人はぽかんとした表情でこちらを見ている。


「やぁルミ。今日も元気そうだね。」

「お陰様でね!お腹の調子も良くなったし、元気だよ!」


以前あった時の落ち着いた振る舞いはどこにいってしまったんだろうか?傷が治って全快になったからなのか、人間との生活に慣れてきたのかはわからない。元気いっぱいなのはいいことだが、これでは少々元気すぎるな。シャーロットやカルロスが振り回されてしまうのも無理はない。


「さて気を取り直して、本題に入りましょう。セドリックとイヴァンの居場所ですが、レシア砂漠にある迷宮(ダンジョン)に調査に行っているようです。」

「レシア砂漠?」

「たしかセルベスタの東側に位置する砂漠ですよね?砂漠特有の魔物が出て通行する際は慣れた冒険者を雇わないと横断できないとか…。」


そういったエレナが俺の方を見る。東…ラックの言っていた占いのことを思い出したのだろう。もちろんこのことを言っているのかどうか確証はないが、ここまでタイミングが良いと疑ってしまいたくなる。


「でそこに行けば会えるってことね。」

「はい。」

「シャーロット情報ありがとう、じゃあ会いに行ってくるよ。」

「ただ一つ問題があって砂漠での案内役の冒険者を確保できなくて…。」

「普通に俺達だけじゃだめなの?」

「行けなくはないのですが、慣れていないと砂漠が発する魔力の影響で迷ってしまうんですよ。短くて一週間長くて三ヶ月迷った方がいるそうです。なので歩きであれば、慣れた冒険者を雇うのが定石なのですが、今は人手不足で冒険者が調達できないんです。」

「どうして人手不足に?」

「《勇者》に関する迷宮遺物(アーティファクト)の調査依頼をしたと言いましたよね?その情報を聞きつけた各国の冒険者達が新たな迷宮遺物(アーティファクト)があるんじゃないかって殺到しているようなんですよ。」

「なるほど、そういうことか。」


多くの冒険者はお宝目当てってわけね。そりゃ《勇者》に関する迷宮遺物(アーティファクト)なんて出たら国に高く買い取ってもらえるだろうし、一攫千金というわけだ。しかし困ったな、砂漠では多かれ少なかれ魔力が発生している。魔物が多く地中に生息しているから、迷宮(ダンジョン)が存在するからなど色々な説があるが魔力発生原因の究明には至っていない。その魔力が方向感覚を失わせたり、外観などを変化させてしまう作用が働いているということなのだろう。だからそういうのに強い《能力者》かその土地に長く住んでる案内役なんかが必要だが確保できないということか。


「うーん、どうしよう。」

「困りましたね…。」

「だったら私が乗せようか?」


俺達が頭を抱えて悩んでいるとルミが横から提案してきた。


「乗るって空を飛ぶってことですか?!」

「たしかにそれなら魔力の影響を受けずに砂漠を移動できるかもしれません。」

「それは良い提案ですね。それにユーリ君達なら安心して任せることが出来ます!」


シャーロット随分グイグイくるな。もしかして俺達にルミのこと押し付けようって魂胆か。だけど実際砂漠を渡るにはルミの背中に乗っていくのがいいようだし、ここは提案に乗るしかなさそうだな。


「わかったよ。ルミ頼めるかな?」

「はい!任せてください!」

「それで誰が行くんですか?」

「俺はもちろん、エレナとアリア。」

「私とカルロスはまだこちらでやることが残っていますのですみません。」

「いや構わないさ。あとはそうだな…ディランにも聞いてみるか。あいつが居たほうが息子だし、話が早いかもしれない。」


イヴァンがどう思っているかはわからないが、魔族のせいとはいえ迷惑をかけた俺達に会うのは気まずいかもしれない。息子のディランがいれば少しは話しやすいだろう。


「それじゃあ早速誘ってくるよ。ルミ行くよ。」

「わかりました。出発の日までにはできる限りの準備はこちらで整えておきますね。」


俺達は城を後にしてディランに会いに行った。聖騎士祭での事件以降、ディランは学校が終わったあとは森で修行している。本人的には内緒にしていることらしいが、俺達を含めたいつものメンバーは皆知っている。


「おーいディランってあれ皆どうしたの?」

「あれ、ユーリ君達じゃん。」


森で修行していたのはディランだけでなく、いつもの6人が勢揃いしていた。


「こないだの話を聞いてね。私達も強くならなくちゃと思って、ディラン君に頼んでここで修行してたんだよ。」

「ユーリ君達を抜いたらこの中で一番強いのはディラン君だからね。」

「皆は何しにここに?」

「あぁ、実は…」


俺はここまでの経緯を軽く皆に説明した。シロの奴隷紋をどうにかするためにディランの父親であるイヴァン・アレストールに会いにレシア砂漠に行くことになったこと。父親と会話するのであれば息子のディランを連れて行くほうがいいと考えたこと。


「そういうことか。わかった引き受けよう。それでレシア砂漠まではどうやって行くんだ?」

「彼女の背中に乗って飛んでいきます。」

「彼女というのは…?」

「ほら、ルミ皆に挨拶して。」

「ル、ルミナライゼです…。」


先程までの威勢の良さはどこにいったのかルミは借りてきた猫のように大人しく、俺の服の裾を掴んで隠れていた。するとフルーが俺の目の前いやルミの目の前に立った。


「もしかして、この子がドラゴンの子かな?始めまして!私はフルー・フルーラ、フルーって呼んでね。」

「私のことはルミって呼んでね、よろしくフルー!」


フルーの明るさのおかげか、ルミは緊張もほぐれ皆と打ち解けることができたようだった。


「ねぇユーリ君、砂漠って魔物がいるんだよね?」

「そうみたいだね。まさかデリラ…」

「うん!そのまさか!私達も一緒に行くよ!」

「皆も行くんですか?!」

「ルミちゃんの背中にも乗ってみたいし、砂漠の魔物との戦いは修行になりそうだしね!」

「それにレシア砂漠には《勇者》に関する迷宮遺物(アーティファクト)が出た迷宮(ダンジョン)もあるんだろ?他にもお宝が狙えるかもしれないぞ。」

「僕のための修行編ってわけだね!喜んで同行しよう!」

「でも皆、国を越えるためには冒険者ライセンスがDクラスじゃないと…」


そう俺が言い切る前に皆はポケットから冒険者ライセンスを取り出した。


「僕達皆、冒険者ライセンス取ったんだよ!」

「しかもDランク!」

「驚きました。いつの間に取ってたんですか。」

「もともとライセンスは持ってたんだけどね、最近修行ついでに依頼をたくさんこなしてたら自然と。」

「それなら皆行ける資格はあるんだね。」


一応国外に出れる準備は整っているようだ。まあたしかにいい修行にはなりそうだ、それにウールの言う通りお宝を狙えるというのもある。ルミを人間に慣れさせるという意味でもいいかもしれない、シャーロットに頼んでみるか。


「わかった、シャーロットに頼んでみよう。皆がいるほうが楽しいしね。」

「やったぁー!」

「…。」

「どうした?マーク。」

「ううん、何でもないよ。」

「そうか。」


皆が喜んでいる中でマークは一人不安を感じていた。もちろん修行はしたいし、付いていくつもりではある。ただ心配なことが一つだけあった。


(皆気づいてないのかもしれないけど、ユーリ君達に付いていくと必ず何かに巻き込まれるんだよ。だっていつも何か問題に巻き込まれているじゃないか。不安だ…何もありませんように。)


マークはトラブルメーカーのユーリ達がまた何か問題を起こし、自分達も巻き込まれていしまうのではないかと考えていた。だが行くと決まった以上は行くしかないのだ。マークは何も起こらないようにとただただ心の中で静かに願うのだった。



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