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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
冒険者騒乱編

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第三十六話 戻ってきた日常

ヴェルス帝国での冒険者達を巻き込んだ騒動から一週間が経った。エレナ達も無事に帰ってきて、俺達は今まで通り平穏な日常を送っていた。あの後シャーロットはヴェルス帝国とのいざこざの後始末に追われており中々時間が作れずにイヴァンの件は聞けていない。まあ第一王女であるし、仕方のないことだろう。それにしてもなんだか学校に通うのも久しぶりだな。座って大人しく授業を受けているのもすごく疲れる。


「なんだか久しぶりに受ける授業はすごく疲れたよ。」

「うん、本当そうだね。」

「そうですね。ではこの後は甘い物でも食べに行くのはどうですか?」

「「賛成!」」


エレナの提案に俺とアリアは喜んで返事をした。やはり疲れたときは糖分補給が大事だ。俺もこの2人に付き合う内に甘い物を欲する体になっている。これは体感的な話だが魔力も糖分を取ると回復するのが早い気がするのだ。俺達はいつものカフェへと向かっていた。


「おっ、ユーリ君!エレナちゃんもアリアちゃんも!」

「やぁ皆、久しぶりだね!」


カフェに行く道中に声をかけてきたのはフルーだった。一緒にいるのはいつものメンバーである、ウール、マーク、ディラン、デリラ、コータの5人だった。


「聞いたよ、君達また魔族と戦って挙げ句ドラゴン退治までしたんだって?」

「それで勝っちゃうんだもん凄いよね!また僕と手合わせして欲しいな!」

「毎度、よくトラブルに巻き込まれるな。君呪われてるんじゃないのかい?」

「ウール君…それは酷いよ…」

「はいはい。皆話したいことはあるだろうからこれから一緒にお茶でもどうだい?」

「「「「「「行く(よ)!」」」」」」


こうして大所帯になった俺達はカフェで今回の騒動を詳しく皆に話した。


「“信仰”のグレモリーね、またそんな魔族が出てきたのか。」

「あぁ、魔族側の戦力は底しれない。正直《勇者》だけじゃダメなんじゃないかって俺は思うんだ。」

「実際騎士団長達でもかなり手こずるんだもんね…。」

「うん、この国最強の騎士団長クリスさんでも勝てなかったから。」


クリスは決して負けたわけではない、片腕も取られたが命に別状はない。だが相手にほとんどダメージを与えることができなかったのも事実。変わった能力というか魔法?を使っていたという話だった。これから魔族との戦いに備えてもっと敵の情報も集めないといけないな。


「でもでもユーリはドラゴンも魔族も倒したんでしょ?やっぱり《英雄》だね!」

「本当の英雄は僕だけど今回はよくやったと褒めてあげよう!」

「あはは、ありがとうコータ。でも俺だけの力じゃないよ、皆がいたから勝てたんだ。」

「さすが《英雄》は言うことが違う!」

「それにしてもまさかシャーロット様が《勇者》だったとは驚いたよ。」


シャーロットは今回の件以降自分が《勇者》であることを公にしている。たくさんの冒険者や騎士団に現場にいることは見られているし、ヴェルス帝国と正式に同盟を結ぶこともあり隠すのを辞めることにしたのだ。元々《勇者》を探す際に活動しやすくするために正体を隠していたが、今後は俺達にそれは任せるとのことなのでその必要がなくなったこともある。


「これでエレナを抜いたら《勇者》はあと4人ってことだね。」

「うーん、他の《勇者》はどこにいるんだろう。」

「ヴェルスにはコータみたいな勘違い《勇者》がいたんでしょ?」

「ラックさんの場合は国中が勘違いしていたということなので仕方ないですよ。」

「そういえば、ラックさんといえばユーリ君に伝言があるんでした!」


エレナはラックの話から俺に伝言があったということを思い出したようだった。一体何なんだろうか。


「それで伝言って?」

「ラックさんの能力《幸運の導き手》のお告げらしいのですが、“東へ行け”だそうですよ。」

「それだけ?」

「はい。それだけです。」


“東へ行け”か…全然何のことかわからないな。東というとセルベスタ王国の東は砂漠が広がっているはずだ、さらに遠くへ行くと東の国、ユキさんの出身である。《幸運の導き手》ヴェルス帝国では《勇者》と呼ばれていたわけだし、そんなに悪い能力ではないとは思うんだけどわからないことが多いな…。


「ありがとうエレナ。とりあえず覚えておくよ。」

「いえ。ただ何が幸運なのかは人にもよるから注意してほしいとのことでしたよ。」

「そうなんだ気を付けたほうがいいのかな。」

「しばらくは気にした方がいいかもしれません。」


何があるかわからないし、とりあえず頭の隅には留めておこう。こうして俺達はカフェでの談笑を終えて自宅へと帰宅した。


「ただいま。」

「おかえりなさいませ!アリア様、ユーリ様!」


シロが元気に俺達を出迎えてくれる。しばらく家を開けていたがすっかりここでの生活にも慣れたようで今では元気よく出迎えてくれる。何はともあれここまで元気になってくれてよかったと心底思う。彼女の境遇を考えれば尚更だ。あとは奴隷紋だけなんとかしてやりたいが…。


「シャーロット、まだ忙しいのかな。」

「どうしました?」

「いや、何でもないよ。」


焦ってもしょうがない。今は色々大変だし、俺の個人的な理由を優先させるのも悪いしな。


「早く中に入りましょ!」

「はいはい。」

「ふふふ。なんだか妹みたいだね。」


シロに連れられ、俺達は家へと入る。すでにマルクさんとユキさんが夕食の準備をしてくれていたようだ。こうやって家で食事を取れるのも嬉しいことだ。


「やっぱり家で食べるご飯は温かくて美味しいよね!」

「本当そうだね。」

「しばらくは家にいたいよ〜。」


魔族との戦いが終わればこんな平和もずっと続く。そのためにも《勇者》を見つけ俺自身ももっと強くなる必要がある。


「マルクさん、ユキさんまたしばらく修行お願いします!」

「私もお願いします!」

「はい、もちろんでございます。」

「私でお役に立てることであればなんなりと。」


俺達はさらに強くなることを誓った。

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