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第三十五話 戦いの後

俺たちはヴェルスでの戦いの後ロンドへと戻り傷を癒やした。幸いにも冒険者や騎士団からは死者が出なかった。俺たちは傷を癒やしたあと王都まで帰ってきたのだ。ヴェルス帝国でカルロスからの報告を受けた師匠やエレナは向こうで治療をしてからこちらに帰ってくるそうなのでもう少しっかかるだろう。そこで俺たちは先に王へ今回の事を報告しにきたのだが…。


「うーむ、どうしたものか…。」

「ふわぁ…むにゃむにゃ。」

「私、もう帰ってもいいですか?」

「今はお前の処分を決めてんだよ!」


このドラゴンまったく反省をしていないのである。まあ実際“信仰”のグレモリーという魔族の幹部に操られており、しかもその時の記憶がないのだから仕方がないのかもしれない。とはいえ何も責任を取らせないというのも冒険者や騎士団は納得しないだろう。


「では王よ、この者は私に任せてもらえませんか?」

「シャーロットよ、何か良い案でもあるのか?」

「はい、今は人型ですがドラゴンなのは間違いありません。戦力として手綱を握るべきだと考えております。」

「なるほどのぅ。では此度の報酬としてドラゴンの所有権をそなたに預けるとしよう。」

「ありがとうございます。」


こうしてドラゴンはシャーロットが引き取ることになった。こちらが良くても彼女が言うことを聞くかどうかは別の話だ。こちらとしては戦力増強にはなるが無効にはメリットがないしな。


「はい、いいですよ。」

「いいのかよ!」


クリス団長のツッコミが入る。でも思っていたよりもあっさりOKしてくれたな。


「どうしてそんなにあっさりOKするの?」

「実は私家族以外のドラゴンに会ったことがないんです。その家族も魔族に殺されてしまい、それからは仲間を探しながらずっと1人で生きてきました。」

「そうだったんだ…。」

「いつかは死ぬ運命ですから別に魔族を恨んでるわけではありません。ですが今回自分が操られて皆さんに迷惑をかけたので借りを返したいのと、自分以外のドラゴンを探すためには《勇者》様達と一緒にいた方がいいような気がしました。」

「それじゃあ、これからよろしくね。そういえば君の名前何ていうの?」

「私の名前はルミナライゼ、ルミって呼んでください!」


こうして俺たちはドラゴンのルミナライゼを仲間に引き入れることにした。


「それとユーリ君だったかな?君に伝言がある。」

「えっと…俺、じゃないや私にですか?」


王様に急に話を振られて俺は普段の言葉遣いが出てしまった。相手は王様だ、きちんと気を付けなければ処罰を受けるかもしれない。


「シャーロットから大体の話は聞いているが、君はイヴァンに話をききたいのだろう。」

「はい。」


王様からの話はどうやらシャーロットに頼んでおいたイヴァン・アレストールのことのようだった。


「実はセドリックとイヴァンにはある任務を託しておる。」

「任務ですか?」

「実は新たに《勇者》に関する迷宮遺物(アーティファクト)が発見されたという情報が入ってな、それの調査をさせておるのじゃ。」

「そうだったんですね。」


《勇者》に関する迷宮遺物(アーティファクト)ね。一体どんな情報なんだろうか、もしかしたらこれからの戦いや《勇者》捜索に役に立つかもしれない。


「だからもし話を聞きたいなら、場所を教えるから直接会いに行ってもらえないだろうか。」

「わかりました。それでその場所というのは?」


俺が質問をすると王のもとに一人の老人が寄ってきて耳打ちで話をしている。どうやら緊急の用事のようだ。


「すまない、これから少し予定が入ってしまった。悪いがこれで解散とさせてもらおう。詳細はシャーロットに話しておこう。」

「はい、わかりました。それでは失礼いたします。」


詳細はまた改めて聞くことにして、今日は大人しく帰ることにしよう。家に帰るのも久々だなと考えながら、俺達は城を後にして自宅へと帰っていった。


◇◆◇◆


「今回は本当にありがとうございました。皆様のおかげで国を守ることが出来ました。」

「いえ、こちらこそ治療していただき助かりました。」


エレナとディアナの2人はヴェルスでの治療を終えセルベスタ王国へと旅立とうとしていた。戦いの後やってきたカルロスが言うには今回は死傷者は出ずに魔族を倒す事ができた。幹部の女には逃げられたようだが、それでもこちらの勝利と言ってもいいだろう。しかし今回の戦いでは死者が出なかっただけでヴェルス帝国は最初の侵攻の時点でかなり酷い有様だ。


「これから大変だとは思いますが、どうか皆さん頑張ってください。シャーロットも言っていましたが協力体制になったからには支援は惜しみません。魔族との戦いはまだ終わってませんから。」

「はい。今回の借りは必ず返させていただきます。」


そういってエレナとエーラ、バーンはお互いに握手を交わす。そのままエレナ達が歩きだそうとすると一人の男が追いかけてきた。


「えっと、あなたはたしか…」

「はい、この国の《勇者》…じゃなかった、ただのラックです。」


ラックは自分のことをヴェルス帝国の《勇者》だと思っていた。ラックだけじゃない、この国の人間は皆そう思っていた。しかし、《幸運の導き手》という能力者のラックは世で言われている伝説の《勇者》ではないのだ。閉鎖的なヴェルス帝国の《勇者》伝説では《幸運の導き手》の能力者こそが《勇者》だとされていたために起きてしまった大きな勘違いなのである。その事実は戦いの後に聞かされたのだが、ラックは意外にもすんなり受け入れていた。元々《勇者》の能力は自分の手に余る物だ、荷が重い。違ったのなら違ったで少し安心したというのがラックの本音であった。


「それでラックさん何か用でしたか?」

「はい。私の能力《幸運の導き手》は基本的に自分に対して幸運なことを引き寄せる能力なのですが、もう一つ他人に対して一種の占いのような幸運なことを引き寄せるお告げをすることができます。対象は私が今までに出会った人の中から無作為に選ばれてしまうのですが…」

「もしかして、私達の誰かにお告げが出た…ということですか?」

「はい。あの少年にです。魔族と戦ってくれた…」

「ユーリ君のことですね。それでユーリ君に大してどのようなお告げが出たのでしょうか?」

「東の国へ行けと。」

「東の国へですか。」


たった一言東の国へ行け…それが何を意味するかはエレナにはわからなかった。だがなんとなくこの人の言っていることは間違っていないと感じる、その根拠は彼の魔力である。エレナは魔力の流れを見ることである程度の実力や人柄を判断できる。この能力はユーリの話によるとおそらく《副技能(サイド・センス)》と呼ばれるものだろう。その《副技能(サイド・センス)》がこのラックという人物の能力を大丈夫だと評価しているのだ、エレナは自分を信じることにした。


(彼も私達《勇者》の様に、少し変わった魔力の流れを感じますが、特に悪い感じはしませんね。)

「わかりました。ユーリ君に伝えておきますね。」

「お願いします。私の能力ははっきりとはわからないことが多いです。幸運を引き寄せるとは言いますが、何が幸運なのかは人によって変わります。何が幸運と解釈されるのかは、わからないのでくれぐれもお気をつけください。」

「はい、注意しておきますね。それではまた。」

「ありがとうございました。」


エレナ、ディアナ、カルロス達はヴァルス帝国を後にした。

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