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第二十九話 開戦準備

初心者狩りもといヴェルス帝国軍の団長バーンと第ニ王女様エーラを連れてロンドの冒険者ギルドまで戻る。このまま無策でヴェルス帝国に乗り込んでも魔族に勝てるわけではない。軍が壊滅状態である以上ある程度戦力を整える必要がある。


「とはいえもうあまり時間がありませんよね。今から騎士団を連れてヴェルス帝国に行こうにも時間的に間に合わないですし。」

「カルロス、急いで一番近い紫龍聖騎士団長のところへ応援の要請を。」

「はっ。」


カルロスが急いで出ていく。それでも魔族との戦いには間に合わない。ヴェルス帝国にいる師匠を入れても俺達だけでやるしかないのか………。師匠?そうか!これなら行けるかもしれない。


「いや…戦力ならあるじゃないか、この街に!」

「ユーリ君、それはどういう?」

「ここは国境付近で冒険者が集まる街でしょ?ということはいるじゃないか冒険者が!」

「なるほど。この街であれば冒険者ランクD以上の者が多いですし、ヴェルス帝国に行くのも問題ではありませんね。」

「でもどうやって説得するの?魔族との戦いなんて来てくれる人いるのかな…。」

「そこは冒険者の性ってやつにかけよう。緊急クエストを出すんだ、参加だけでも多額の報酬を出して。その資金は国の方から出すことってできないかな?」

「そういうことですか。それは問題ないでしょう。緊急事態ですし、背に腹は代えられません。」

「そうと決まれば早速、ギルド長さんお願いします!」

「わかりました。」


これで冒険者達の協力を仰ぐことができる。ヴェルス帝国軍と合わせればそこそこの戦力になるはずだ。騎士団が来るまでの時間稼ぎさえできればあとはなんとかなるだろう。


「我々は急ぎ戦闘準備に取り掛かりましょう。出発は明朝です!」

「「「はい!」」」


俺達はバーンとエーラと共にギルド長に付いて冒険者達に緊急クエストの発令の手伝いをする。ギルド長は緊急クエストの内容とこれまでの経緯を簡潔に説明する。


「以上だ、皆協力して欲しい。」

「どうかお力をお貸しください!」


エーラとバーンが頭を下げる。皆協力してくれそうな雰囲気だ。だが…


「…魔族との戦いだと?そんなもん俺はゴメンだね。」


1人の冒険者がそういった。彼は見た感じ猛者だと感じる、年齢もかなり高齢だろうそれなのに現役ということは冒険者ランクも相当上だろうな。そんな彼の一言に若い冒険者が突っかかる。


「何でだよ!助けてやりたいと思わないのか!」

「お前は魔族を見たことがないからそんなことが言えるんだ。それに魔族の使役している魔物は迷宮(ダンジョン)の魔物とはワケが違う。悪いが俺も自分の命は惜しいんだ。」


熟練冒険者の言うことは正しい。実際に戦ったことあれば尚更そう感じるだろう。先程までは皆参加するといった感じがあったが、現実を知って暗い雰囲気になる。だがここで皆の協力を得られなければそれこそ多くの命が奪われることになる。


「たしかにそこの冒険者の言う通り、魔族との戦いは厳しいものがあると思う。でもだからこそ皆で協力することが大事なんだ。」

「フン!ガキに何がわかる。」

「俺達は魔族と戦って討伐している。」

「何だと?じゃあお前が《英雄》だっていうのか?」

「そうだ。俺が魔族と戦った《英雄》だ。」


自分から認めるのは恥ずかしいがこんな状況だ仕方ない。これで少しでも希望を持ってくれるといいのだが。


「魔族が手強いのは確かだ、実際俺も死にかけたしな。だが俺は戦いに勝ち生き残っている、今度の戦いもそうだ。でもそれには皆の力が必要なんだ!頼む!」

「あんな少年にあそこまで言われて何もしないほどあんたも腐ってないだろ?」

「…わかった。だが命の危険を感じたらすぐ逃げさせてもらうぜ。」

「それでいい。皆も自分の命を大事にしてくれ。」

「「「「おう!!!」」」」


なんとか冒険者達の協力を得ることができそうだ。バーンとエーラも安堵している。あとは魔族の情報を知りたいところだ、バリオンクラスの魔族だったら正直俺達だけでは勝てない、師匠がいるからなんとかなるかもしれないが…それでもどうなるかはわからない。


「バーンさん、ヴェルス帝国を襲った魔族はどんな奴ですか?」

「多数の魔物と人形の魔族の二人組ということはわかってるんだが、あまり情報がなくてすまない。」

「いえそれだけでも充分ですよ。」

「それと魔族の2人組は剣を使っていたと…。」


魔族が剣か…おそらく《魔剣》だろう。バリオンの配下である魔族も使っていたことを思い出す。だが《魔剣》をわざわざ使うレベルなのであればおそらく四天王と呼ばれる部類ではない気がするな。《魔剣》は所詮誰にでも使えるレベルだし代償もあることから真に実力のある者は使わない。《聖剣》だって使い手を選ぶだけで魔族が使えないことはないのだから。


「今日はもう休みましょう。シャーロットさんが宿を用意してくれてるようですよ。」

「それは助かるね。明日も朝早いし休もう。」


俺達はシャーロットに取ってもらったロンドの宿で休むことにした。よくよく考えたら村から王都に来てからというもの外で寝るのは始めてのことだな。まさかこんなことになるとは思わなかったしな。明日も早い今日は寝よう…。

次の日、朝早く俺達は出発した。ロンドからヴェルス帝国の中心街までは大体3日ほど魔族の襲撃予告があった日の4日前には間に合うのでかなり余裕があるだろう。俺達はいち早く馬車でヴェルス帝国に向かい、冒険者組全員分は馬車が用意できなかったので徒歩であるが、それでもギリギリ襲撃には間に合うだろう。ヴェルス帝国までの2日間は特に何事もなく順調であった。


「そろそろヴェルス帝国だ。まずは我々の軍と《勇者》に会おう。」

「そうですね。作戦も立てておかないといけないですし。」


ヴェルス帝国の外壁が見えてきた。だが何か様子がおかしい、外壁にある門が空いているのだ。それに門を守る衛兵のような人影も見られない。


「バーンさん。門が開いてるようだけど衛兵とかいないの?」

「いや…そんなはずは…。何かがおかしい、急いで中心街にある城へ行こう!」

「うん、急ごう!」


俺達は中心街まで急いで向かった。だが門だけではなく街も不気味なほど静かで、まるで人の気配を感じない。いくら以前魔族に襲撃されたからといってここまで街は静かなものなのか?嫌な予感がする。何もないと良いんだが…。


「ここが城だ!中に入ろう!」

「待て!バーン!」


バーンは冷静ではなかった。明らかに異常な街の姿を見て居ても立っても居られないのだろう。俺達のことを気にも止めず走っていく。バーンは玉座がある部屋らしき扉を勢いよく開く。


「皇帝よ!、…!!!」

「バーン、どうした?」


俺達がバーンに続いて部屋に入るとそこには玉座に皇帝らしき人物が座っていたが、その姿は悲惨なものだった。出血はしていないが腕や足が本来曲がるはずのない方向に曲がっており、すでに息はしていないようだった。


「お父様!!!」


エーラが皇帝の死体に駆け寄る。一瞬何かが光った…何かおかしい!俺は急いでエーラの後を追いかける。すると何もない空間から黒い穴が空き中から剣が振り下ろされる。


「『身体強化(フィジカルブースト)』!!!」

「きゃあああああああ!!!」


俺はエーラの身体を抱きかかえてギリギリのところで剣を回避する。エーラに怪我はないようだ。


「あれ?外れちゃったかぁ。」

「まったくルシェは爪が甘いんですから。」


黒い穴から出てきたのは二人組の魔族だった。聖騎士祭でバリオンが出てきた所をみていたおかげで異変に気付くことができた。


「貴様らどうしてここに!襲撃までは時間があるはず…!」

「あんなの嘘に決まってんじゃーん。魔族のこと信じるなんておじさんバカだねー。」

「ルシェ早く全員始末しなさい。早く帰らないとグレモリー様に怒られてしまいますよ。」

「もう、リリスはうるさいんだから。」


魔族はふざけた態度で質問に答える。俺達は失念していた。魔族が約束を守る道理はないし、自分の仲間でも殺すような連中であることを。ルシェと呼ばれた少年の様な魔族、もう一体の秘書の様な格好をした女魔族はリリスと呼ばれていたな。俺は今にも飛びかかりそうなバーンを落ち着かせるために魔族に話しかける。


「お前達どうして俺達がここに入ってきたのがわかった?」

「この街にはすでに結界が張ってあるからねぇー侵入者くらいすぐわかるんだよ。」

「なるほど。それで王をこんな風にしたのはお前らか?」

「やったのはグレモリー様だけどねー。君たちそんなお喋りしている暇あるのかい?」

「何?」

「今頃たーくさんの魔物達がお隣の国に向かってるよ?」

「ルシェ!お喋りはその辺で。」

「はーい。そういうことだから行かせてもらう…よ!」


ルシェと呼ばれた魔族は一気に俺との距離を詰める。


「『身体強化(フィジカルブースト)三重(トリプル)』!!!」

「おぉ〜早いねぇ〜。」


エーラを抱えながらは避けるのが精一杯だ。俺は攻撃を躱して皆のところまで戻る。6対2ではあるがシャーロット、エーラ、バーンは魔族と戦ったことがない。それに俺達も勝ったとは言っても一対一でだ。状況はあまり良くない、どうするべきか…そう考えていると俺は魔族の後ろに異変を感じた。あれは…どうやらなんとかなるかもしれない。


「さて、そろs…ぶっ!!!」

「ユーリ!!!後は任せる!!!」

「はい!!!」


女の魔族の後ろから現れたのは師匠だった。師匠は魔族の顔面を素手で掴むと窓の外に向かってぶん投げた。師匠は魔族の後を追って飛び出す。これで魔族はあと一人、魔物の方に向かわせることができる。


「アリア!バーンとエーラを連れて急いで戻るんだ。冒険者達に魔物のことを伝えて!」

「うん!わかったよ!」

「ここは俺とエレナとシャーロットで片付ける!」

「すまない。恩に着る。」

「お気をつけて。」

「逃さないよー!」


ルシェの剣をシャーロットが細剣で押さえる。その隙に三人が出ていく。


「あらら、逃しちゃった。まあ君達を殺してすぐに追いかければいっか。」

「そう簡単にはいかせません。」

「私達を突破できると思わないことですね。」

「俺達は三人共《勇者》だからな!!!」

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