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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
冒険者騒乱編

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第二十六話 ギルド長の依頼

「実は皆さんが捉えた初心者狩りは最近起こっている初心者狩りの主犯でないようなのです。」

「えっ?そうなんですか。」

「彼らは草原の担当だったようで…。実際被害は迷宮(ダンジョン)の内部でも起こっています。」

「つまり初心者狩りをしているのは一部ではなく組織ぐるみの犯行というわけですね。」

「そういうことです。それでその連中の情報を掴んできて欲しいのです。」

「捕まえなくてもいいんですか?」

「可能であれば捕縛してほしいですが、危険な目には合わせたくないので情報だけでも構いません。ベテラン冒険者では警戒されてしまっているのか中々情報が掴めないのです。」

「そこで新人冒険者である程度実力がある俺達に依頼したいということですね。」

「そういうことです。」


俺はアリアとエレナとお互いの顔を見合わせる。冒険者ランクを早く上げることができるし、初心者狩りなんて魔族に比べれば可愛いものだろうし、受けない手はない。


「わかりました。その依頼受けます!」

「ありがとうございます。」

「それでは早速迷宮(ダンジョン)に向かいますね。」

「皆さんお気をつけてください。」

「「「はい!」」」


俺達は早速迷宮(ダンジョン)へと向かうことにした。セルベスタ王国には迷宮(ダンジョン)が3つある。それぞれ出現する魔物や迷宮遺物(アーティファクト)の違いがあり難易度も違う。王都の近くにある迷宮(ダンジョン)は比較的出現する魔物も弱く、難易度が低いなので初心者向けとも言える。それ故に初心者狩りに狙われているのだろう。だがわからないこともある。


「うーん。」

「どうしたのユーリ?」

「いやどうして急に初心者狩りの組織なんて出てきたのかなって。」

「元々冒険者にはそういう人達が多いんですよね?」

「それはそうなんだけど…。」


たしかに冒険者の悪行は多いが、組織ぐるみの犯行はしないだろう。こういってなんだが冒険者同士は互いに協力しようという考えが薄い。もちろんパーティーメンバーやギルドからの緊急依頼の場合は別であるが基本的には商売敵のようなものだからな。


「ま、それも会えばわかるかな。」

「ここが迷宮(ダンジョン)ですか…。」

「大きい洞窟ですね…。」


俺達は王都の近くにある洞窟型の迷宮(ダンジョン)に到着した。ここの迷宮(ダンジョン)は全部で5階層までしかなく比較的回数の少ない迷宮(ダンジョン)である。ただ1階層がかなり広いので隠れて犯行をするにはもってこいな場所だ。


「…?」

「どうかしたユーリ?」

「いや何でも無いよ。早速中に入ろう。」

「わかりました。」

「う、うん。」


視線を感じたような気がするが…気にせず先に進むことにした。アリアとエレナは迷宮(ダンジョン)に入るのが初めてなので、俺の後ろに張り付きながら恐る恐る足を進めている。入口は少し暗いが少しつづ進んでいくと開けた場所に出た。ここらへんで魔物狩りでもしよう。


「大分明るいですね。」

「ここらへんは道が整備されているから明かりもちゃんとあるんだよ。」

「だからこんなに明るいんだ。」


初心者向けということだけあって明かりもあるし、道もそれなりに整備されているので安心だ。せっかくの機会だし二人には初心者感を出すためにも修行をしてもらおう。


「『創造(クリエイト)(ソード)』×2!二人共、はいこれ。」

「剣ですか?」

「そう。せっかくだから俺が師匠とした修行をしてもらおうと思ってね。あんまり魔法をバンバン使っても警戒されちゃうでしょ?だから使っていいのはこの剣と『身体強化(フィジカル・ブースト)』だけね。もちろん『多重展開』も禁止。」

「そういうことね。たしかに私達が狙われないとダメだもんね。」

「俺は《拳闘士》のフリをして体術だけでいくから。二人は《剣士》ってことで。」

「わかりました。早速魔物が出たようですし行きましょう!」


洞窟に出現する魔物として有名なのがこの目の前にいるスライム。通常のスライムは攻撃力がほとんどなく核を破壊することで倒すことができる。しかし核を移動させることができるので慣れないうちは意外と倒すのが大変である。


「この!」

「中々倒せませんね…。」

「コツはよく見ることかな。よっと!こんな感じ。」


俺はスライムが核を移動させるより早く拳を繰り出し核を破壊した。単純だが一番効果的な方法である。


「ほっ!やったぁ!」

「はっ!倒せました。」

「そうそうその調子!」


アリアとエレナの二人も大分スライムを枯れるようになった。これなら次の階層に進んでもいいかもしれないな。


「そろそろ次の階層に行こうか。」

「そうだね。スライムはもう大丈夫そうだよ。」

「魔法なしの戦いも少し慣れてきました。」


俺達は次の階層へと続く階段へと向かっていった。…そろそろ仕掛けてくるだろうか?迷宮(ダンジョン)の入口付近からずっとこちらを見ている視線を感じているが、一向に手出ししてこない。もっと奥深くまで行くのを待っているのか?うーむ。あんまり長引かせるのも癪だしこちらから仕掛けるか。


「さっきから付いてきてるそこの二人、そろそろ出てきたらどうかな?」

「…おや気付いていたのかい?」

「そんなに熱い視線で見つめられたら流石に気づくさ。」


俺が話しかけると男女の二人組が岩の影から姿を現した。


「初心者の割に勘は鋭いみたいだな。可愛がってやるよ!」

「そうやって舐めてるから足元掬われるんだよ!」


男が俺に向かって突進してくる。武器を持ってない所を見ると拳闘士かなにかの能力だろう。俺は男の突進を片手で受け止める。


「な、何だと!?」

「自分の力を過信しすぎるのは良くないってことさ。」

「うわぁ!!!」

「きゃぁ!!!」


男の身体を掴んでもうひとりの女に向かって投げ飛ばす。女の方は男に潰されたせいで気絶しているようだ。まあ1人残っていればいいか。二人を縄で縛り付け、情報を聞き出す。


「さてあんた達の組織について話してもらおうか。お仲間3人もすでに捕まえてるよ。」

「ふん、そんな下っ端しったこっちゃねえし、誰がお前らみたいなガキに喋るかよ。」

「まあ、素直に喋ったら苦労はしないよね。じゃあこれを飲ませてっと。」

「ユーリ君何ですかそれ?」

「ギルド長から貰ったんだけど自白する作用のある薬なんだって。」

「それを使って捕まえた3人から情報を聞き出したんだね。」


俺達が捕まえた3人にもこの薬を使って自白させたようだが、担当場所や組織ぐるみの犯行ということしか聞き出せなかったのでこうして俺達を迷宮(ダンジョン)へ調査するように頼んだわけだ。俺はギルド長に貰った自白作用のある薬を男に無理やり飲ませると、先程まで抵抗していたが怠そうな顔付きになりぽつりぽつりと話し始めた。


「組織のことについて喋ってもらおうか。」

「俺達はこの迷宮(ダンジョン)5階のアジトを根城にしている、構成員は俺達を含めて15人だ。」

迷宮(ダンジョン)の5階だって?あそこは一本道のはずだろう。」

「隠し扉があってその先に洞窟が続いているんだ。」

「なるほどな。隠し扉はどこにある?それと構成員の能力について知ってる範囲で教えろ。」

「隠し扉は5階層の階段の途中にある。壁に触れながら歩けば違和感に気付くはずだ。構成員の能力は俺達と捕まった奴らを除いて《剣士》が4人、《拳闘士》が2人、《魔術師》が2人だ。」

「残りの2人の《能力》は?」

「リーダーと副リーダーの能力はわからない。俺達下っ端の前には知らされていない。噂では他国の軍隊にいた経験があるらしいが…。」


他国の軍隊…?そんな奴がどうしてこの国にいるんだろうか。初心者狩りをする趣味があったにしてもわざわざ他国まで来て行うことなのか?謎が深まる一方だな。あとは直接本人に聞くとしよう。


「これからどうしましょう。一度報告にギルドに戻りますか?」

「いや、これ以上被害を出さないためにも先に進もう。危険かもしれないけど3人いればなんとかなると思う。」

「うん。私もあの子達みたいな被害者は出したくない。」

「わかりました。ですが危険と判断したらすぐに逃げるようにしましょう。」

「それでいこう。」


俺達は迷宮(ダンジョン)の5階層を目指して進んでいった。そして4階層から5階層へと降りる階段に着く。


「階段に隠し扉があるって言ってたな。」

「壁に触れながら降りてみましょう。」


俺達はそれぞれ壁を触りながら、階段を下っていく。…特に違和感は感じない気もするが。


「…?」

「エレナさんどうかした?」

「ここの壁、少し変わった魔力の流れをしている気がします。」

「うーん。見た目は全然わからないな。」

「でも触った感じ確かに今までの壁とは少し違うかも。」

「『魔力探知マジック・ディテクション』!20mくらい先にいくつか魔力を感じるよ。」

「どうやらここみたいだね。でもどうやって入るんだろう。」


エレナが壁に触れて魔力を込める。すると扉が現れ開かれた。


「凄いエレナちゃん!どうしてわかったの?」

「幼い頃に祖父に聞いたことがあったのを思い出したんです。迷宮ダンジョンには魔力で出現する扉があるという話を。」

「そういえばエレナのお爺さんは凄い冒険者だったって言ってたね。よし、これで扉も空いたことだし先に進もう!」

「はい!」

「うん!」


俺達は隠し扉の先へ警戒しながら進んでいった。


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