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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
7人の勇者編

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第二百五十話 真の姿

蜃気楼(ミラージュ)現実(リアリティー)』はただ魔法を再現するだけではない。通常の『蜃気楼(ミラージュ)』に合わせて分身体が同じように魔法を放つということ。つまり分身は本物と見分けがつかないことにある。本物と見分けがつかない分身体が本物と同じように魔法を放つ。理解していてもそれに対処してしまっている時点で本物を見失ってしまうのだ。コータとディランはウールが時間を稼いでいる間に現在の二人で出せる最高の魔法を準備していた。『悪魔解放ディアボリカル・リベレイション』が残っている間は奥の手を使うわけにはいかない。とはいえ、これでダメージを与えられなければ使用するしかないと二人は考えていた。


「『風精霊の大嵐シルフ・グランストーム』!」

「『雷帝の電撃イヴァン・ライトニングストライク』!」

「『合体魔法(シンクロ・キャスト)風雷精帝(ふうらいせいてい)大雷嵐(スーパーセル)』!」


風精霊の大嵐シルフ・グランストーム』はコータの中で最も大きな事象を起こせる魔法である。風精霊(シルフ)の力を借り、周囲の天候を変えるほどの大魔法である。『雷帝の電撃イヴァン・ライトニングストライク』はディランが父であるイヴァンの固有魔法『雷帝の一撃イヴァン・ライトニングブロー』を再現した魔法である。ディランでは本来の『雷帝の一撃イヴァン・ライトニングブロー』のように能力で緻密な操作が不要な状態で自然の力を利用することはできない。逆に言えば緻密な操作さえできれば利用することができる。もちろんそれは簡単なことではないが、今のディランはそれが可能である。そんな二つの天候を操る大魔法を『合体魔法(シンクロ・キャスト)』したのだ。


「グワァァァァァ!!!!!」


龍の身体と言えど街一つを破壊できる規模且つ威力の魔法を受けて無事でいられるはずがない。ヴァイスの前身は引きちぎられ焼け焦げ元の姿がわからないほどにバラバラになった。だが三人はこれで終わったと油断はしない、すぐに集まりヴァイスだった物を見つめている。魔力は感じないが、嫌な感じを三人とも感じ取っていた。


「…我をここまで傷付けたものは随分久しいな。」

「これだけやってリセットか。」

「わかってはいたけど結構来るものがあるね。」


ヴァイスは一瞬で身体を元に戻す。周囲の地形は抉れ、そこにどれだけ大きな魔法が放たれたのか魔力を持たない者でも理解できるほどだったかそれを受けたヴァイス本人はまるで何もなかったかのようだ。元の魔力がまったく変動していないこともあり、本当にダメージがあるのかわからない。三人は少なからず消耗しており、精神的にやられていた。


「ふむ…貴様達ならばこの姿を見せることができる。」


ヴァイスの魔力がさらに大きく膨れ上がる。先程までは大きいまでもどこか静かな魔力であったが、荒々しく背筋がチリチリとするような魔力へと変わる。


「『龍化(ドラゴン・シフト)』」


空高くヴァイスが飛び上がると人型の姿から龍の姿へと変える。大きな4つの翼に黒々しく逆立っている鱗。手足から鋭く生えている爪はそこらの名剣よ呼ばれる物よりも鋭く光り輝いている。そしてなによりもそのサイズである。ルミが龍の姿に変化した時よりも二回りほど大きい。


「これが…」

「雷龍ヴァイス…!」

「我が龍の姿に戻るのは実に魔族へと変化した時以来だ。」


《魔王》によって初めて魔族へと変えられたあの時から龍の姿には戻っていなかった。ヴァイスはいつでも元の姿に戻れたのだが、《魔王》に魔族という種族に変えられたことからその姿で生きることを決めていた。そして自分の中で元に戻るために必要な条件を課していた。それは自分の命を脅かされそうになったときだけである。ヴァイスはここまでの戦闘で一度も追い込まれてはいない、それどころか傷すら本当の意味では負っていないのだが三人に龍の姿を見せてもいいと思えるほど彼らの力を認めていた。


「さぁ、もっと我を楽しませてみろ!」

「早い!」

「ウール!」

「わかっている!」


その巨体からは考えられないほどのスピードで真っすぐこちらに向かってくる。ヴァイスが飛んでいる衝撃で周囲の土地が抉れている。ウールはすぐに『蜃気楼(ミラージュ)』の発動を準備する。だがそれを発動するよりも早くヴァイスは突っ込んで来た。三人と騎士団員達は吹き飛ばされていた。


「ぐはぁ!」

「うわぁぁぁ!!!」


周囲の景色は変わり果て何も残らない。三人も騎士団員達も魔道具のおかげで即死は免れたが、騎士団員たちはもう戦闘には復帰できない。ディランは傷を魔道具で治療しながら思考していた。ヴァイスはまだ悪魔の力は解放していない。だが素の龍の力でこの規模である。このまま奥の手を出し惜しみしていては倒すどころの話ではなくなってしまう。魔力を集中させある魔法を使おうとしたその時、ウールが吹き飛ばされた方向から魔力が膨れ上がるのを感じた。


(ウール、まさか…)


別の場所に吹き飛ばされていたコータもディランと同じように奥の手を解放しようとしていたが、ウールの膨れ上がる魔力を感じて思いとどまった。三人はお互いの奥の手についてある程度情報を共有している。三人は修行によって能力の進化を目指していたが、《勇者》達やデリラの様な力の強化ではない。文字通り三人は能力を進化させている。


◇◇◇◇


ウールの能力は《水の奇術師》でこれ自体は水魔法に適正があるという程度の物だったかその能力と本人の資質によって固有魔法『蜃気楼(ミラージュ)』を使用できるに至った。これまでは固有魔法である『蜃気楼(ミラージュ)』を強化することに注力していたが、それだけでは魔族との戦いにはついていけないと考えていた。


「まあ正直な話専門外だな。」

「専門外ですか…。」


ウールはデリラと同じようにクリスの元で能力の強化へと励んでいた。しかし基礎的な能力を上げるばかりで能力の進化についての解答は出せないでいた。そこでクリスに相談をしてみたものの専門外だと言われてしまったのである。


「《水の奇術師》自体は少ないとはいえ特別珍しい能力じゃない。だからこそわかるがその能力者で今のお前よりも強い人間はいなし、固有魔法を持っているという話しも聞いたことない。強化をする上で同じ系統の能力者がいれば参考にする方が効率はいいが、今のお前ならむしろ相談される側だな。」

「そもそも能力の進化ってのもよくわからないよねー。」


《進化の勇者》の迷宮遺物(アーティファクト)の意味の解釈に戸惑っていたウールははっきりいって限界を感じていた。そもそも能力の進化などということはこれまでに前例は存在しない。ウールはユーリ達の中で最もまともな頭をしている。逆に言えば柔軟性や発想力に乏しいと自分では思っている。しかし能力を拡大解釈し固有魔法まで使用できるようになったということは明らかに普通ではない。そんなウールの姿を見てクリスは何の気なしにアドバイスをした。


「文字通り能力を変化させることができるってことだろ。」

「それをどうやってやるのかって話なんですよ。」

「固有魔法みたいに作っちまえばいいじゃないか。」

「そうほいほい固有魔法を作れるわけ…」


ここでウールはあることを思いついた。固有魔法は自身の能力を最大限に活かして産み出したものである。同じように能力その物を変化させるということができるのではないかと思ったのだ。進化とは不変できな能力の状態を指すわけではなく一時的に能力の変化状態を維持する。


「何かわかったかもしれない…。」

「本当!よかったじゃん!」

「さぁ、そうと決まれば修行だ!」


ウールはこの二人との修行の中で必ず明確な解を出すことを目指した。


◇◇◇◇


ウールは修行の中で身に付けた奥の手、能力の進化を行おうとしていた。能力の進化を実現させるためにウールの《水の奇術師》という能力は最も解釈しやすかったといっても過言ではない。奇術師は人を騙す能力だ、他人を騙し自分を騙す。


「行くぞ!『水の剣(ウォーターソード)』!」

「ふん、今更この程度の魔法でどうにかなるわけがない。」


ヴァイスは決して油断していたわけではなかった。だがこれまでの魔法と違い明らかにレベルの低い魔法。自分の身体に傷を付けるのに精一杯であった敵がこの程度の魔法で傷を付けられるわけがない。だがヴァイスの考えとは裏腹にウールの使用した『水の剣(ウォーターソード)』はヴァイスの強固な鱗を砕いた。


「何っ!」

「まだまだぁ!」


再びヴァイスの鱗をウールは斬りつける。ヴァイスは再びその体に受けた。今度は回避できたが先程起こったことを確かめるためにわざと受けたのだ。だが再びヴァイスの鱗は砕かれた。なぜこんなことが起こっているのかヴァイスには理解できていなかったがディランとコータには何が起こっているのかがわかっていた。わかっていたというよりもあらかじめ説明されていたという方が正しい。


「まさか本当に能力を変化させるとは。」

「俺達とは違う解釈ではあるが進化させたということなのだろう。」


ウールが行っているのは能力の変化である。本来の彼の能力は《水の奇術師》であるが今の彼は別の能力に変化させているのだ。魔力を注ぎ込み一時的ではあるが能力を変化させる。水魔法の適性にある能力に限るが、他人の能力を再現できるとうことである。今、ウールが変化させているのは青薔薇聖騎士団長 セシリア・グランベールの《水聖の騎士》である。《水聖の騎士》は本来水属性魔法の攻撃力を底上げし、特に剣を扱うことに関して大幅な強化がされる。


「うぉぉぉ!!!」


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