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第二十五話 初心者狩り

次の日、学園が休みだった俺達は朝から冒険者ギルドに来ていた。冒険者ランクを上げるためには2つの方法がある。キルドにある依頼をいくつか達成させて昇給試験を受ける方法と緊急の依頼をこなし達成することでギルドに昇格を認めてもらうことである。ただ後者の方法は狙って出来る物ではないので基本的には前者がメインになる。


「二人は最低ランクのFからスタートだから、まずはここの掲示板からFの依頼書を探そうか。」

「わかったよ!それにしても依頼ってたくさん、あるんだね。」

「はい。思っていたよりも多いです。」

「依頼は毎日更新されてるからね。迷宮(ダンジョン)での依頼はもちろん、他国への護衛とか移送とかそういった依頼もあるんだよ。」

「へぇーそうなんだ。」


そんな話をしていると横にいた二人組が大きな声で相槌を打つ。俺は気になってその二人組の方に目線をやる。


「あ、ごめん。俺はアイク、こっちはルイスって言うんだ。俺達も冒険者になったばかりでさ全然冒険者のことわからなくて。」

「俺はユーリ、全然構わないよ。それにこのくらいのことならあそこにいるリゼさんっていう受付のお姉さんに聞くと色々教えてくれるよ。」

「そうなのか。親切にありがとう!また縁があればよろしく頼む!」

「よろしくお願いします。」

「うん、お互い気をつけて頑張ろう。」


二人組の少年少女はアイクとルイスと名乗った、年齢は俺達とそんなに違わないように見える。どうやら二人共冒険者になったばかりの初心者でまだまだ知らないことが多いようだ。本当は冒険者登録する時に説明があるはずなんだけど…。まあ冒険者になれたという喜びからかあまり説明を受けない初心者も多いとリゼさんが嘆いていたしな、仕方ないのかもしれない。とはいえ情報は時に命取りになることもある、特に初心者は。だから彼らにも気を付けてほしい。


「ユーリ、この依頼はどうかな?」

「ユーリ君これはどうでしょうか?」

「うん、二人共ちょうどよさそうだね。これにしよう!」


俺達は薬草採取と《ホーン・ラビット》の依頼を受けることにした。2つとも場所は王都を出てすぐの草原なので比較的近場で同時にこなせるため効率も良さそうである。


「ここが草原だよ。」

「改めて自分の足で出ると広いね。」

「私も道が整備されていないところは初めてです。」

「ここからは魔物も普通に出るから気をつけてね。まあそんなに強い魔物はいないし、成人した大人だったら通れるレベルだから命の危険はないと思うけどね。」


王都に来てから二人は道が整備されていない草原に立つのは初めてである。まあ魔物が出るから冒険者でもなければ整備されていない道に出ることはできないしな。とはいえ草原の魔物くらいは大丈夫だろう。二人共優秀であるし、能力も申し分ない。それに魔族との戦闘経験もあるからそこら辺の魔物にやられることはないだろう。


「ユーリこれ薬草かな?」

「うーん、それはただの草かな。この図鑑に書いてあるから見比べてみて。」

「見分け付かないよ〜」

「アリアさんならそういう判別魔法使えるんじゃないですか?」

「あっ!そうだね。ちょっと考えてみる。」


アリアの能力《大賢者》は使いたいと考えた魔法を頭に思い描くことでその魔法が使えるようになる能力だ。だが自分がある程度理屈や想像するものがはっきりしていないとその魔法を使うことができない。今回は薬草を見分けるためのギルドにある初心者向けの本があるので、簡単に想像ができたようだ。


「『植物探索(プラント・サーチ)』!」

「アリアも大分《大賢者》の能力に慣れてきたよね。」

「そうかな?でも二人には負けちゃうよ。あ、あそこに薬草いっぱいあるよ!」


アリアの魔法のおかげで薬草の群生地を見つけることができたようだ。これなら依頼以上にたくさん収穫できそうだ。こういったアイテムはギルドや街の店でも買い取ってもらうことができるので多くとっても悪いことはない。


「でもこれだけの薬草どうやって持って帰るの?」

「これを使うんだよ。」

「それは魔法袋(マジックポーチ)ですか?そんな高価な物一体どこで?」

「師匠に貰ったんだ。弟子になった記念にって。」


魔法袋(マジックポーチ)とは魔法道具の一種で袋の中に広い空間が広がっており限度はあるが中に何でも収納することができる。作成自体は難しくはないらしいのだが作れる人物が少ないため非常に高価である。


「それがあればどれだけ物があっても持って帰れない心配はなさそうだね。」

「そうだね。さ、次は《ホーン・ラビット》を狩りに行こうか。」

「はい。あれがそうですか?」


ちょうど草原を《ホーン・ラビット》が走っている。《ホーン・ラビット》は比較的穏やかな部類の魔物だ。近づくと角を使って突進してくるが遠くから攻撃すれば簡単に倒すことができる。


「『風の刃(エア・カッター)』!」

「『炎の球(フレイム・ボール)』!」

「キィィィィィ!!!」


真っ二つと真っ黒焦げの《ホーン・ラビット》の死体が大量にできあがる。なんだかやりすぎなような気もするが、とりあえずこれで討伐は完了だ。討伐の証拠として魔物のいち部を切り取りギルドに持っていかなかればいけないので俺達は角を回収する。


「よし、これで依頼完了だね。」

「そうですね。」

「この調子ならすぐに昇格試験受けれるかもしれないよ。」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「今の叫び声は?」

「あっちの方だ行ってみよう!」


叫び声が聞こえた方に向かうとそこには冒険者ギルドであったアイクが大男に掴まれている。ルイスは以前俺達が絡まれていたガラの悪い冒険者に今にも襲われそうであった。俺は走りながら手を前に出し魔法陣を展開する。


「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます。」


俺はガラの悪い冒険者二人を『炎の矢(フレイム・アロー)』で倒し、アイクを掴んでいる大男に向かって突っ込む。大男はアイクを投げ飛ばし俺の突進を回避する。


「あんた、あいつらのボスか何か?」

「お前があいつらの言ってた【真夜中の魔女】のメンバーの弟子か。冒険者ランクは?」

「なぜそんなことを聞く。」

「俺は弱い奴を虐めるのが好きでなぁ、こいつらみたいな冒険者になりたての初心者狩りをしてるんだよ。」

「ふーん。あまりいい趣味とはいえないな。」

「それで、冒険者ランクは?」

「Eだよ!」

「それはいい!」


俺と大男はお互いに向かって走り出す。相手は大きな斧を持ってそれを振りかぶっている。俺も対抗して武器を作り出す。


「『創造(クリエイト)贋聖剣(オルタエクスカリバー)』!」

「そんな細ぇ剣じゃ俺の斧は止められないぜ!おらぁ!」


ガキィン!!!


大男の持っていた斧は粉々に砕け散る。


「それはこっちの台詞だよ。」

「ば、馬鹿な…。お前本当にEランクなのか?」

「本当だよ。ほら。」


俺は大男に向かって冒険者ライセンスを見せつける。大男は信じられないと言った様子でこちらを見ている。まあ学園の生徒でちょっと魔族は倒したことあるEランクだけどね。ガラの悪い方の冒険者はアリアとエレナが拘束してくれたようだ。アイクとルイスも大きなケガはなさそうだ。


「ユーリ君、助かったわ。アリアちゃんとエレナちゃんも。」

「いえいえ、大事にならなくてよかったです。」


俺達は拘束した大男たちを連れて冒険者ギルドに来ていた。リゼさんにお願いして彼らの処分と後始末をお願いするためだ。


「最近初心者狩りの被害が多くてね。ギルドの方でも注意はしていたんだけど中々足取りが掴めなくて。」

「そうだったんですか。」

「だから本当に助かったわ。それとねギルド長が今回の件について直々にお話したいそうなんだけどいいかしら?」

「別に構いませんよ。」

「よかった。じゃあ皆こっちに付いてきてくれるかしら。」


リゼさんに連れられて冒険者ギルドの2階に案内される。ギルド長ってどんな人なんだろうか、初めて会うな。師匠とは面識があるみたいだけど。


「ギルド長失礼します。」

「うむ。」

「初心者狩りの犯人を捉えた子たちをお連れしましたよ。」

「やあ。始めまして。私はこのセルベスタ王国冒険者ギルドの長をやっているライラ・エヴァールだ。」


この人がギルド長か、まさか女性だったとは。なんというか貫禄があるな、それにあの耳…


「エルフ族を見るのは初めてかい?」

「すみません。ジロジロ見てしまって…。」

「別に構わないよ。人間族の街で過ごすエルフは珍しいだろうからね。」


エルフ族は人里離れた森の集落で暮らしており、寿命も人間より長い種族と聞く。だがライラさんを見ていると見た目では年齢はわからないな。果たしていくつくらいだろうか。


「女性に対して年齢を想像するのは無粋だよ。」

「す、すみません。ていうか何でわかるんですか?」

「年の功ってやつさ。」

「もうユーリ、失礼だよ!」

「本当ですよ!まったく。」


俺の周りの年上のお姉さん達はどうも年齢を聞かれるのが嫌らしい。師匠然り、ギルド長しかり。女性心というのはわからない。


「まあ、それはさておき今回は君達のおかげで初心者狩りの犯人を捉えることができた。本当にありがとう。」

「いえ、当然のことをしたまでです。」

「流石は“英雄”かな。」

「何で知ってるんですか?!」

「ディアナが嬉しそうに自慢していてね。もう3回は聞いたよ。」


なるほど師匠経由か。師匠もどこで聞いてきたんだか、恥ずかしいので辞めてほしい。


「そこで今回の件の報酬だが、君達全員のランクを一つ上げよう。」

「えっ、私達もですか?」

「ほとんど何もしていないのですが…。」

「君達の実力はある程度知っているし、依頼は達成したんだ。昇格試験は合格ということにしておくよ。」


おお。手間が省けてよかった。これで俺はDランク、アリアとエレナはEランクだからあと一つだ。


「これで二人はあと一ランクだね。」

「なるほどDランクということは国外への移動を目標にしているのかい?」

「はい。」

「ふむ。ではDランクにしてあげようか?」

「えっ、良いんですか?」

「ああ。その代わりにお願いがあるのだが。」


ギルド長が直々にお願いする依頼とは一体どんなことなのだろうか。

少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

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