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第二百四十六話 龍の力

「ここは僕が倒すよ。シャーロットとアザミに本体は任せる。」

「ですが、アザミは…。」

「ううん。アザミも《勇者》だから、きっと僕よりも強くなってるはずだよ!もちろんシャーロットもね。」


デリラは巨人の相手を自分がすると決意を固めた。なぜならば二人は《勇者》で自分はそうでないから。何故だかはわからないが彼女の《副技能(サイドセンス)》である直感がそう告げているのだ。あの魔族を倒すことができるのはやはり《勇者》である二人であるのだと。それにシャーロットとデリラはどちらも近接タイプでありアザミの魔法支援との相性を考えればどちらかが引くべきなのだ。チリースという魔族がまだどんな魔法を残しているかわからない。それに悪魔の力も解放していないのだから。


「これが僕の全力だぁ!《龍の力(ドラゴン・フォース)》!」


◇◇◇◇


デリラは二ヶ月半クリスの元で修行をしていた。理由は二人の使う剣術が同じであるからだ。龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)に特化している技術。クリスはこれを能力からの独学で身に付けているが、デリラはそうではない。先祖であり龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)を成したバルムンクの技を代々受け継いでいる。


「デリラ調子はどうだい?」

「ウール。」


ウールもデリラと共にクリスの元で修行をしている。しかし二人ともこれといった物をまだ掴めていなかった。


「なんかクリス団長に勝てないんだよね。同じ技なのに。」

「まあ向こうは《龍の騎士》で君は龍殺しの血を継いでいるといっても能力自体は単純な身体強化だからね。それに同じ技でも向こうは我流というか能力の恩恵で君は家に伝わる本流だから微妙に違うから。まあ本流の方が弱いのか?って話だけど。」

「やっぱり抑えない方がいいのかな。」

「暴走した力のこと?」


デリラは以前自身の力を暴走させたことがある。デリラの能力である《戦闘狂(バトルジャンキー)》によって限界まで能力を引き出した結果、デリラに流れるバルムンクの血が暴走した。厳密に言えばバルムンクに混ざった龍の血である。そのために彼女は家に伝わる龍殺しの技を覚えてその暴走を抑えるという方法を生み出した。しかしそれは同時に自身の限界を抑えてしまっていることにも繋がっている。


「やっぱり全開でやらないと魔族は倒せる相手じゃないと思う。」

「それはそうだけどどうやって君を抑えればいいんだよ。」

「倒せば止まるよ?前もユーリたちがなんとかしてくれたし。」

「簡単に言うけど君ねぇ…」


デリラが前に暴走した時はユーリの機転により魔力を流出させると言う方法で暴走を押さえ込んだ。だかその魔法を使える者はここにはいない。デリラの暴走を抑えるには動けなくなるほど叩き潰す必要がある。だかそれでも止まるかどうかはわからないのだ。


「だったらそれこそ俺が適任じゃねぇか。」

「クリス団長。」

「龍殺しは成したことはないがお前一人抑えるくらいなら余裕だろ。」


ウールはたしかにありかもしれないと考えた。デリラの暴走は明らかに龍の血が原因である。龍殺しの技を使用することでその衝動を抑えているが、同じ技を使うクリスが相手であれば抑えられる可能性が高い。それにクリスなら実力的にも申し分ないだろう。


「クリス団長の言う通りかもしれません。デリラここはクリス団長に甘えよう。そしてその中で君の力を制御する方法を身に付けるんだ。」

「うん!お願いしますクリス団長!」

「俺は甘くねぇからな!」


こうしてクリスの手解きを受けたデリラは見事に自らの龍の力を制御することに成功した。それが形となったのが《龍の力(ドラゴン・フォース)》である。身体から魔力が溢れてデリラを包み込むように形取る。その姿はまるで小さな龍のようであった。


「これがデリラの力…。」

「ルミさんが龍の姿になっている時と似たような雰囲気を感じます。」


デリラは魔力の翼を羽ばたかせて飛翔した。魔力は放出されると身体から離れて行こうとする。魔力を纏わせる技術はレシア砂漠で習得している。しかしあの時は身体の表面を覆うだけでよかったので魔力操作難しいが消費魔力は少なく済んでいた。しかし今のデリラの状態は目に見えるほどわかりやすく龍の形を保っているのだ。


「魔力をあんなにも色濃く留めて置ける物なのでしょうか?」

「普通は無理です。ですがデリラの血がそうさせているのかも知れません。」


人間族は魔力の器があり魔力を内に留めており魔法を使用している。魔力の器から魔力がなくなれば当然魔法は使えなくなる。これは亜人族や魔物でも大きくは変わらない。しかし龍種だけは特別なのである。ルミナライゼは深く考えていないのでユーリ達の知るところではないのだが、本来龍種は魔力の器が存在しない。大気に存在する魔力すなわち精霊をそのまま使用しており、代わり気力や体力を大きく消費する。そのために身体に魔力纏わせるということは自分の魔力しか使えない龍種以外の種族よりも容易なのだ。ただ龍種にはそれを行う必要がないだけで。


「《龍の力(ドラゴン・フォース)》は長くは持たなから一気に片を付けさせてもらうよ!」


デリラは空を飛びながら距離を取ったかと思うと加速しながら『悪魔の巨人ディアボリカル・ギガント』によって作り出された巨大な《土人形(ゴーレム)》に向かって真正面から突っ込んでいく。デリラを包む魔力はどんどんと大きくなりルミに勝るとも劣らない本物の龍種のサイズになっていた。


「喰らえ!これが僕の全力!『龍による龍殺しの新星バルムンク・ドラゴンスレイ・ノヴァ』!」


巨人は跡形もなく消し飛んだ。巨人だけでなく周囲の《土人形(ゴーレム)》を、木々を、地面を全てを消し去っていた。シャーロットの《魔眼》でもその全てを観測しきることができなかった。辛うじて見えたのは巨人の中に潜む悪魔も消し飛んでいたということ。周囲も消し飛ばしたためにチリースも核を移動させることができなかった。チリースは消し飛ばされた地面から右半分が消し飛んだ状態で這い上がってきた。


「………まさか、龍種と遜色ない攻撃を受けるとは思わなかった。だが流石にそう何度もできる技じゃないようだね。」


デリラは元の姿に戻り気絶している。全身は傷だらけでこのまま放置すれば間違いなく出血多量で死ぬ。身に着けていたはずの魔道具も先程の攻撃で壊れてしまっていた。


「君達相手に使う事になるとは…『悪魔解放ディアボリカル・リベレイション・パイモン』」


チリースの身体が膨大な魔力に包まれたかと思うとその姿を大きく変化させていた。頭の角はまるで冠のような形に変化し、下半身は動物のように毛で覆われている。


「あ、あれが…」

「悪魔を解放した姿…」

「この姿は僕としては醜いからあまり見せたくはなかったけどね。まあどうせ君達はここで死ぬのだからいいんだけど。」


チリースが地面に拳を叩きつけるとデリラによって破壊された大地が一瞬で元に戻る。戦いによって荒れた木々も全て元通りになった。シャーロットとアザミはその力に恐怖を覚えた。大地が戻った瞬間を二人には観測できなかったからだ。魔法を発動した瞬間どころか魔力の流れさえ掴めなかった。これまでに戦ってきた魔族とは明らかにレベルが違う。勝てそうだというビジョンがまるで見えなかった。しかしそれで折れるわけにはいかなかった、なぜならば彼女達は仲間に託されたことを《勇者》として逃げるわけにはいかないのだから。


「『剣神の突き』!」

「『雷帝の一撃イヴァン・ライトニングブロー』!」


シャーロットは現在使用できる中でもっとも最速に繰り出せる技を。アザミはディランの父親であるイヴァンの固有魔法『雷帝の一撃イヴァン・ライトニングブロー』をそれぞれ繰り出す。『雷帝の一撃イヴァン・ライトニングブロー』は自然の雷を利用する魔法でありその真骨頂は発動スピードとその破壊力である。本来天候を操る魔法は緻密な魔力操作が必要になる。だがイヴァンはその能力によってそれらを必要とせずに固有魔法として形にしている。アザミは《雷霆の勇者》ということもあるがその才能でそれを再現している。二人の攻撃をチリースは回避しなかった。否、回避する必要がなかったからだ。


「…!?たしかに攻撃は当たったはず!」

「手応えも感じました!」


チリースは二人の攻撃を真正面から受けて身体の半分が吹き飛んだように見えた。だが今はまったくの無傷になっている。身体が再生する瞬間をシャーロットの《魔眼》でも捉えることができなかった。


「これが僕の本来の能力だ。草花から大地から僕は魔力とは別にエネルギーを得て回復することができる。僕は魔族の割にはあまり防御が固い方ではないけど、僕を本当の意味で傷付けたことがある者はこの世に存在しない。」


チリースの能力は周囲からエネルギーを集めて自身を回復させることである。最初に見せた大地を元に戻したのはこの能力を使用したものである。自身にエネルギーを集めることもできるし逆に大地に与えることもできる。与える時のエネルギー源は悪魔であるが、その悪魔を召喚する能力はパイモン由来の能力で賄っている。つまり自身は自然からのエネルギーを供給できその自然はパイモンの悪魔を召喚する能力で供給できるという無限の循環を行っている。限界はなく、チリースを傷付けることはできるが傷やダメージを残すことはできないのだ。


「そ、そんなことって…。」

「どうやって攻略すれば…。」


二人がその事実を前に一瞬だけ狼狽えてしまった。その隙をチリースは見逃さなかった。


「『悪魔の大地震ディアボリカル・ランド・クエイク』」

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