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伝説では6人しかいないはずの勇者なのになぜか俺は7人目の勇者  作者: 銀颯
7人の勇者編

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第二百四十四話 墓場

エレナが放った『神が与えし聖なる槍(ロンゴミニアド)』はブレイズを捉えていた地面を消し飛ばした。三人は魔力を使い切り、《勇者の未来(ブレイブ・フォース)》の反動でダメージが元に戻ったことによりその場に倒れた。エレナだけはまだ意識を保っており、自らが穿った穴を見ていた。ブレイズの魔力は感じない、確実に滅ぼしたはずだった。だがそれは穴の淵に手を掛け這い上がって来た。残っているのは片腕と上半身、それすらも半分は消し飛んでいる。


「ま…まだ…生きているのですね…。」

「俺も…驚いてるくれぇだ…自分がここまで…しぶてぇとはな…。」


ブレイズには魔力は残っていない。それはエレナ《副技能(サイドセンス)》でもわかった。だがなぜかエレナはよからぬ何かを感じ取っていた。魔力はなくなっていても引き出せないわけではない。その代わり命を変換する必要がある。本来であるならばそれを行うことは容易ではない。なぜならば寿命が縮むようなことを身体が拒否するからである。これは気持ちの問題ではなく本能なのだ。ではなぜ変換できることがわかっているかというとある条件を満たせばそれが可能であるからだ。


「もう…魔力は…ねぇが…最後の…技を…見せてやる!」

「まさか?!」


ブレイズが発動しようとしている、魔法は自らを犠牲にすることで強制的に魔力を作り出す魔法。命が尽きかけている今だからこそ自分の命を魔力に変換することができる。簡単にいってしまえば自爆技である。だがすでに満身創痍且つ、魔力も少ない命を削った物なのであまり意味のある威力はだすことができない。本来のエレナなら普通の魔法で防ぐことは容易だろう。しかし今は全員が瀕死の重態で唯一会話のできるエレナですら満足に動くことができない。これではブレイズの魔法を防ぐことができない。


「くたばれ!『悪魔の破爆ディアボリカル・デストラクション』」


ブレイズを中心として爆風が徐々に広がっていく。エレナにはその光景がとてもゆっくりに見えていた。このまま自分達は死んでしまうのか…ユーリ達との約束は果たせないのか…そう考えた時、声が聞こえた気がした。


(諦めんのか?)

(いえ…ですが身体が動きません…。)

(ここで戦ってたのは偶然だったかもしれないが、運が良かったな。)


エレナの目の前には死んでいるはずの《戦の勇者》ヴィクトリア・アークの亡霊が佇んでいた。ヴィクトリアは手を上げると倒れている騎士団の元から剣を引き寄せる。軽く振ると満足をしたのか構え魔力を込め始める。


(今のアタシでもこれぐらいはいけるだろ。『断魔斬』!)


ヴィクトリアが剣を振った瞬間、剣は砕け散った。何かが放たれたわけではないが、ブレイズの爆発は見る見るうちに小さくなりブレイズの身体は崩壊していた。エレナがその光景を見届けているとヴィクトリアはこちらに振り返りエレナの身体に手を向ける。すると魔力が少しだが戻ってくるのがエレナにはわかった。


(ここはアタシが死んだ場所だ。厳密に言えば封印を行った場所だがな。)

(そう…だったんですか…。おかげで助かりました。)

(魔力を少しだが渡せた。回復したら全員助けてやれ。特にあいつら二人はヤバいぜ。)


ヴィクトリアがここにいたのは本当に偶然であり、その理由はここがヴィクトリアの墓場であるからだ。《魔王》の封印は《6人の伝説の勇者》が魔大陸に散って行った。そして《魔王》封印の影響でこの魔大陸には辿り着けないようになっていたのだった。


(はい。ありがとうございます。)

(頑張れよ!)


エレナは礼を言うとゆっくりと立ち上がった。ヴィクトリアは満足そうに笑うと消えていった。エレナはゆっくりと治療のためにコーデリアのジェマの元へと歩いていくのであった。


◇◇◇◇


六の扉へと入っていく、シャーロット、デリラ、アザミと騎士団の面々。扉を抜けた先は川が流れ林が生い茂っている状態である。とても同じ魔大陸とは思えないその光景に逆に不気味さを感じていた。それに先程から隠せていない魔力があるにも関わらずどこに魔族がいるのかが全く分からないのも騎士団の精神を削っていた。


「シャーロット、どう思う?」

「ここは魔力が満ちています。恐らく魔力をわざと充満させているのでしょう。」

「どういうことでしょうか?」

「魔力を充満させることで自身の居場所を隠蔽しているということです。」

「なるほど。ジェマとかランマの技と似たような物だね。」


ジェマは常に魔力が回復し続けているために魔力が満ちている場所ではその居場所を感知しづらい。ランマの技にも自身の魔力を放出し、自身の魔力を使い切ることで姿を消す技がある。恐らく魔族は自身の姿を感知されないように魔力をこの辺りに充満させているのだとシャーロットは考えた。しかしそれならばシャーロットに通用しない。


「任せてください。」


シャーロットは目を瞑り、再び開くと別の世界を見る。《魔眼》の力によってシャーロットは人とは違う世界を見れるようになった。魔力を知覚することは能力や《副技能(サイドセンス)》によって感じ取れる者は多い。だがシャーロットが《魔眼》によって知覚しているのは魔力などではなく、《精霊》や《悪魔》が存在しているこの世界と同時に存在している別の世界を知覚している。魔族にも《悪魔》が付いているその存在をシャーロットは捕らえた。


「ここから100m先に魔族はいます。」

「それが《魔眼》の力なんだね。」

「行きましょう!」


全員で魔族のいる場所へと向かう。少し開けた場所にでるとそこには湖があった。湖の中心部には繭の様な形をした魔力に包まれた魔族が座っていた。正確に言えば湖の上に座禅を組んで浮いているという方が正しいだろう。不思議と他の魔族ほど禍々しい物は感じない。完全に自分の魔力を操作できているということなのだろうとシャーロットは考えた。魔族はゆっくりと目を開く。


「よく僕の居場所がわかったね。」

「私は人とは異なる世界を見れます。」

「なるほど隠蔽が通用しないわけだ。僕は《上位序列二位》“魔壌”チリース。初めまして《勇者》、そしてさようならだ。」


チリースが腕を一振りすると地面から《土人形(ゴーレム)》の様な物を作り出した。シャーロットの《魔眼》で見るとそれはただの《土人形(ゴーレム)》ではないことがわかる。だが何が違うのかそこまでははっきりとわからなかった。


「『落雷(サンダーボルト)』!」

「『龍の爪(ドラゴン・ネイル)』!」


アザミとデリラが《土人形(ゴーレム)》の様な物に攻撃を仕掛ける。アザミはこの二ヵ月半基礎的な部分の修行から始めていた。だがそれはたった三日ほどで終了した。コーデリアも魔法を覚えることに関して言えば天性の才能があったが、アザミもまた天性の才能の持ち主だった。だがコーデリアと違うのはアザミは魔法の天才なのではなく、学習能力の天才とでもいうことだろう。アザミが修行をつけてもらったのは 聖リディス騎士学園学園長のレリクス・ヴァーミリオンである。


二か月半前―――


「アザミ、君は魔法が何かをほとんど見たことがないと聞いた。」

「はい、戦闘魔法はもちろん。生活に使われる魔法や魔法道具もユーリさん達に会うまで知りませんでした。」


レリクスが選ばれたのは彼女が教育者として最も有能だからである。レリクスの能力《占星術師》は以前ユーリに使用した能力を調べる『心眼(マインドサイト)』という固有魔法を使用できるという物ともう一つ対象の人物を占うことができるという能力だ。占うというのは文字通り運勢を占うのとは違い、どのような人間性なのか才能があるのか考え方なのかという分析を行うというものである。そのため彼女は教育書の道を選んだ。この能力で人々を導く良き教育者として活躍し現在は学園長まで上り詰めたというのが彼女の経歴だ。ただこの能力は成人には使えない。なぜならば自我が成熟しきっている大人は中々素直に指摘されたことを受け入れることができないからだ。さらに《勇者》のように特別な能力者も能力に邪魔をされ占うことができない。だがアザミはまだ《勇者》を自覚してからの日が浅く、尚且つ魔法に触れてこなかったというのがレリクスの能力によって占うことができた理由である。


「ふむ。君は中々珍しい才能を持っていると思う。」

「才能ですか?それはどのようなものでしょうか?」

「魔法を再現する才能だよ。」

「再現?」


レリクスはユーリの話を聞いてアザミに関する不可解な点があると感じていた。それは魔法を見ただけで再現するということは不可能であるという点だ。初めてアリアやユーリが魔法を使った時、彼らは見たことがない魔法を再現したと思っている。しかし正確に言えば彼らは魔法や魔力を何度も観測したうえで発動させている。そのため《大賢者》と《7人目の勇者》の能力であると勘違いしてしまっているが、これは少し間違っている。魔法に全く触れていないという状態ではないからだ。レリクスのこれまでの教育経験から魔法に触れてこなかった者が魔法の技術を身に付けるのはそれなりに時間がかかってしまうことはわかっている。それは身近に触れてきた者とそうでない者の間には大きなイメージの差があるからだ。だがアザミはこれまで魔法という技術にほとんど触れていない、霊峰ベルベティスにある魔力のない人々の中で育ってきたのだから当然時間がかかるはずなのだが、少しユーリに指導されただけですぐに魔法を発動することができた。これは《雷霆の勇者》の力によるものではなくアザミ本人の才能なのである。


「いまいち実感がわかないようだな。」

「はい。」

「それでは試してみよう。」


こうしてレリクスによるアザミの修行が始まった。


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