表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
224/257

第二百二十四話 力の統合

「ウォォォ!!!」

「『五角(ペンタゴン)(チェーン)』!」


コンバットの仲間たちは次々に襲い掛かってくる。俺はそれらを躱しつつ拘束をする魔法を放つ。彼らはザイルと違って薬によって魔人になったわけではない。ザザだけでなく彼らも元に戻したいと考えているがザイルの様に時間がないというわけではない。意識も保てているし、完全なという表現が適切かどうかはわからないが魔人として不安定であるということではない。ならば彼らを殺さずに拘束して人間に戻すことを狙う。だが…。


「グォ!」

「この魔法では拘束できないか。」

「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」

「なっ!?『水の壁(ウォーター・ウォール)』!」


俺は向こうが魔法を使ってきたことに驚くが、咄嗟にガードをする。魔人が魔法を使えないということはない。むしろザイルの時は魔法の力が増幅した。だがコンバット達は《制限失薬(リミットロスト)》によって能力を失っているはず。だから魔法が使えるという事実に俺は驚いてしまったのだ。しかし使えるのだからそれも考慮しながら戦わないといけない。思えばコンバットと戦った時も魔力を感じたのはこのせいだったのかもしれないな。


「『五角(ペンタゴン)(チェーン)三重(トリプル)』!!!」

「こんな鎖!」

「ウォォォ!!!」

「『風の牙(エア・ファング)』!」


五角(ペンタゴン)(チェーン)』では魔人となった彼らを一瞬止めるくらいにしかならない。肉体的なパワーが上がっているためにこの程度の魔法では拘束して抑えておくことはできない。少々手荒になるがここは殺す気で行くしかない。


「『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「グワァァァ!!!」

「ウォォォ!!!」


雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』によって三人は無力化できた。あと十七人。


「『炎の矢(フレイム・アロー)』!」

「『水の弾丸(ウォーター・ブレッド)三重(トリプル)』!!!」

「グワァァァ!!!」

「ウォォォ!!!」


俺は次々と魔法を放ち無力化していく。このまま戦えば問題なくこの場は制圧できる。しかしこのまま終わるとは考えにくい。何か仕掛けてくるに違いない。そう考えていたら俺はあることに気付く。先程倒した三人と今倒した二人の姿が見えない。さっきまでそこに倒れていたはずなのに跡形もなく消え去っている。その代わりにコンバットの魔力が増大しているように思う。まさかとは思うが…。


「っ!まさか!」

「そうだ。お前の考えている通り、我々は合体したのだ。同じ魔族の血液から魔人になっている我々はこうやって一つの存在になるということもできると確信していた。」

「コンバットお前の魔力の禍々しさが増している。わかっているのか!そんなことしたらもう元には戻れないかもしれないんだぞ!」

「この期に及んで我々を元に戻そうなどと考えているいるのがおこがましいのだ!《勇者》よ!」


コンバットは戦闘不能になった仲間達を吸収していた。吸収という表現が正しいのかがわからないがとにかくコンバットを主に合体していた。同じ魔族の血液から魔人になっているから体は適応しているということなのだろうか。だがそんなことをしたらもう戻ることはできないだろう。


「だがネタが割れてしまってはもう意味はないな。皆の者集まれ!」

「何をする気だ!?」

「ウォォォォォ!!!!!」


残りの仲間達がコンバットの元に集まっていく。そうして次々に吸収されていくと、コンバットの身体は徐々に変化していく。身体つきだけではない、魔力も魔人から人間の部分が失われていっている。これではまるで魔族のようだ。


「フッフッフッ。これで我らは完全体となった。本当はもう少し貴様を消耗させてから行う手段であったがまぁいいだろう。さぁ続きを始めよう。」

「なんてことを。」


俺が驚きを隠せないでいるとコンバットは目の前から一瞬で姿を消した。背後に回り込んでいたのだ。俺はすぐに距離を取るとコンバットもそれに続いて追いかけてくる。先程までとは比べ物にならないくらいの速さになっている。


「『炎の拳(フレイム・フィスト)』!」

「うわぁ!」


コンバットに殴り飛ばされ俺は吹き飛ぶ。魔法のレベルはそこまで高くないものの、人間に出せる力ではない威力の拳であった。本当に本気で戦わなければこちらもやられる。そう思い俺は《紅蓮の勇者》の力を解放する。


「それが《勇者》力か。面白い。」

「『炎神の一撃(アグニ・ブロウ)』!」

「『炎の拳(フレイム・フィスト)』!」


お互いの拳がぶつかり合う。しかし《紅蓮の勇者》の力を使用した俺の力の方が上回り、コンバットの片腕を吹き飛ばした。


「グゥ…。」

「もう諦めろ。俺を殺すために魔族の様な姿になるのが、お前達の慕っていたウェイトさんが望んでいたことなのか?」

「黙れぇぇぇ!!!」

「お前のやっていることはそのウェイトさんを殺した魔族と同じことなんだぞ!」

「魔族など《勇者》など存在しなければあんなことにはならなかったんだぁぁぁ!!!」


コンバットが叫ぶと俺が吹き飛ばした片腕が再生し始めていた。魔族と同じように核を吹き飛ばさなければ倒すことはできないのだろう。それはつまりもう彼を人間に戻すことができないということなのだろうと俺は感じた。それにすでに正気を保っていない。恐らく複数人と合体してしまったが故に人格が壊れてしまったのだろう。


「ウォォォォォ!!!!!」

「ウェイトさん、すみません。俺にはもう彼らを救う手段がありません。」


俺は《紅蓮の勇者》の力から《雷霆の勇者》へと魔力を変える。コンバットはもう自我を失っている。せめて苦しまないように一撃で消し去ってやりたい。俺は《聖剣クラレント》を構え、魔力を貯める。こちらに真っすぐ向かってくるコンバットを迎え撃つ。


「行くぞ!」

「ガァァァ!!!」

「『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「ガァ………。」


コンバットは大きな光に包まれ、消滅した。彼らの様な人達を産んでしまったのは魔族のせいなのだろうか。それとも《勇者》という俺達の存在なのだろうか。彼の言う通り魔族、《魔王》や《勇者》などが存在しなければこのようなことは起きなかったかもしれない。


「ユーリ!」

「アリア!それに皆も!」


俺が一人で立ち尽くしているとアリア達が駆け寄って来た。どうやら俺がコンバットにバレないように《回復薬(ポーション)》を目印に零していたことに気付いてくれたようだ。遅れてランマがエーラ達を引き連れくれた。俺はコンバット達が魔族へと変貌し、もう人間に戻すことが出来ずに消滅させたこと。この研究所は恐らく迷宮(ダンジョン)であることなどを説明した。


「それでエーラに頼みがあるんだけど。」

「何でしょうか?」

「ここを俺達に先に調べさせて欲しいんだ。この迷宮(ダンジョン)は普通じゃないから俺達《勇者》に関連する物があるかもしれなくて。」

「もちろん構いませんよ。」

「ありがとう。」


俺達は先に迷宮(ダンジョン)の中を調べさせてもらえることになり、エーラ達は周辺を封鎖し迷宮(ダンジョン)の全体像を把握するために外から調査することになった。俺達は戦闘場からさらに奥へと進み研究用に使われていた設備などを見て回った。


「しかしこんな迷宮(ダンジョン)もあるんだな。」

「城に出現した迷宮(ダンジョン)も特殊だったしこういうこともあるのかもね。」

「でも不思議ですね。あの方達は魔人の研究をなさっていたんですよね?どうしてそのような設備が整っていたのでしょう。」

「多分だけど魔族を研究するための施設だったんじゃないかな。」


俺の考えではここはかつての《勇者》及びその仲間が残した魔族を研究するための施設だったのではないかと思う。これまでの話が本当だったとしたら《魔王》は慕っていた亜人族を連れ今の魔族達が住む大陸に移動したということになっている。しかしここでふと疑問が浮かんだ。魔族という種族はどこから出てきたのか?《伝説の6人の勇者》達は《魔王》を止めるために《女神様》が力を与えて現れたわけだが、魔族に関してはいつからいてどこから来たのか謎である。元々《魔王》が渡った大陸に住んでいて《魔王》に忠誠を誓ったという可能性もないわけではないが、それならば《魔王》が初代《勇者》の頃に魔族の住む大陸で国を作ることができるのだろうか。これは俺の仮説だが魔族というのは《魔王》が産み出していると考えている。


「ユーリこれ見て。」

「魔族に関する考察。著者はリカーナ・アーク。」

「アークってたしか《戦の勇者》と同じ名前だったよね?」

「じゃあその家族かなんかってことか?」

「可能性はありそうでござるな。」


リカーナ・アーク。アークと言えば《戦の勇者》ヴィクトリア・アークの名前を思い浮かべる。もしかしたら親族か何かなのだろうか?俺は魔族に関する考察という本を読む。中には魔族に関してのことが書かれてあった。魔族は元々存在している種族ではないこと。繁殖を行わずに増えること。魔族は悪魔を使った魔法を使用することなどが書かれていた。


「ざっくりと目を通しただけだけど、あまり新しい情報はないね。」

「だけどこの本によれば魔族は元々存在してた種族じゃないんだろ?じゃあどうやって生まれたんだよ。」

「あっ、最後のところに何か書いてあるよ。」

「本当ですね。これは私の考察に過ぎないが、魔族は《魔王》が産み出しているのではないかと考えるって書いてありますね。」


なるほど、このリカーナさんと言う人もおよそ俺と同じようなことを考えているようだ。

少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!

皆さまの応援が励みになりますので、ぜひ下部よりブックマーク・評価等お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ