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第二百二十三話 魔人作成

俺はコンバットに続いて歩いていくそろそろ煙が晴れてしまうがこのままだとアリア達が追いかけてくる。一体どうするのだろうと考えているとコンバットは地面をまさぐる。すると地面から取っての様な物が出てくる。コンバットがそれを引くと地面は割れ下から階段が出てきた。この下が研究所に続いているということだろうか。


「さぁ、付いて来い。」

「あぁ。」


再び俺はコンバットに付いて階段を下りていく。すると再び地面は閉じられた。薄暗い中を歩いていくとだんだんと明かりが点灯していく。彼らが作ったかどうかはわからないが、凄く洗練されているように思う。これだけの技術力はセルベスタ王国にもないのではなかろうか。


「何をきょろきょろしている?」

「この研究所はお前達が作ったのか?」

「いやここは我々が魔族から逃げた時偶然見つけた迷宮(ダンジョン)だ。」

迷宮(ダンジョン)だと?」


迷宮(ダンジョン)は全て管理されているものだと勝手に思っていた。というのも迷宮(ダンジョン)といえば基本的に入り口は大きくわかりやすくなっているものだ。だから見つけられないということはほぼない。ほぼというのは以前セルベスタ王国の城に出現した迷宮(ダンジョン)という事例があるからだ。イオ・エヴォリュートが残した迷宮遺物(アーティファクト)が見つかったという点からあれはかなり特殊な例だという認識だった。というかあれ以外に同じような迷宮(ダンジョン)があるとは聞いたことがない。しかしこの研究所と呼ばれている場所もその例外の可能性はある。なにか《勇者》に関係する物があるのかもしれないな。


「ここだ。」


コンバットが立ち止まったところは戦闘場の様に見える。ここは研究所というより実験施設というような位置づけなのだろうか。もしそうならば尚更これまでの迷宮(ダンジョン)とは違うということだ。たまたまとはいえこれは大きな収穫になるかもしれない。まずはコンバット達との因縁を解決する必要があるし、ザザのことも気になる。全てを解決した後になるだろう。


「それで魔人にするという話は一体なんだ?ザザは一体どういう状態なんだ?」

「慌てるな。我々は隊長に魔族から逃がしてもらった。しかし深手を負っていたためにあのままでは危険な状態であった。しかし偶然にもこの施設を見つけた。回復には時間を要したが幸いここには多くの治療施設が整っていたために生きながらえることができた。」

「なるほど偶然に助けられたということか。」


現時点で判明していない迷宮(ダンジョン)を見つけることができたのは本当に偶然だろう。しかもその施設に治療用の設備も整っていたのはさらに幸運だったというほかない。しかしこれまで見つかっていなかったはずなのにどうして見つかったのだろうか。何か特別な条件でもあって偶然それをコンバット達が満たしていたのかもしれないな。


「傷を癒した我々は魔族への復讐を考えた。だが我々では魔族に勝てる実力はない。そこで魔族に対抗できる魔人の力に目を付けたのだ。」

「だが魔人の力なんて体系化されているわけじゃないだろ?出現こそ確認されているが、どうやって魔人になるのかというのはわかっていないはずだ。」


魔人になる方法はわかっていない。ザイルの場合は魔族に魔人になる薬を渡されていたからであるが、これは一般には公表されていない。理由は二つある、一つはこのような被害があったということを大きく知られたくないということ。当時はこれが公になるとセルベスタ王国への不信が募り同盟を組めない可能性があると判断したからだ。今なら公表しても問題はないと思うが。そして二つ目はの理由は、これが再現性のある物ではないという理由だ。魔人になる薬というのも魔族によってもたらされた物である。つまり魔族の作った薬であるためにそれを悪事に使おうにも生産できる物ではないという見解である。実際薬を調べたわけではないし、それ以降そんな話は聞いていないからわざわざ言う必要がないというのが理由だ。コンバット達と同じように魔人の力を悪事に使おうと考える者が現れるかもしれないからな。


「ああ。ある人物から魔人になるための薬を手に入れたのだ。」

「なるほどな。その相手は恐らく魔族だぞ。」

「何だと?」

「俺達は似たような状況になったことがある。魔人になれる薬は魔族しか持ちえない。だからお前達が誰かから魔人になる薬を貰ったのであればそれは魔族しか考えられない。」

「ふん、例えそうだったとしても魔族はバカなことをしたという他ないな。我々に知識を提供してしまったのだから!」


コンバット達に魔人になれる薬を提供したのは恐らく魔族だ。また奴らの仕業である。それはともかくコンバットの口振りから察するに魔人になれる薬の原理を解明したというのだろうか?もしそれが本当ならばザザはその研究結果によって魔人になったということなのだろう。


「それで研究の実験のためにザザを魔人にしたのか?」

「ああ、完璧にな。彼女は魔族に襲われた時に両親が殺された孤児で我々には都合が良かった。まず我々は少ない薬を増やそうと考え、薬を分析した。その結果主成分は魔族の血液だということがわかった。」

「魔族の血液?」

「魔族の血液は限りなく人間に近い。だが決定的に違う部分がある。それは意思を持っているということだ。」

「意思を持っているとは一体どういうことだ?」


魔族の血液が魔人になる薬だったとは。まったく想像していなかった、それに意思を持っているというのはどういう意味なのだろうか。


「魔族の血液が人間の体内に入ると血液全てを魔族の血液に変えてしまうのだ。これを我々は意思を持っていると形容している。もちろん血液量によって馴染む時間は変化するがな。だが少量投与しただけで半年も経てば立派な魔人となる。私はその量をはじき出すのには随分苦労した。何せ薬は一つだけしかなかったし魔族の血液など手に入る物ではないからな。」

「だがどうしてそれが魔族の血液だとわかった?魔族の血液なんてこれまでに採取できたことなどなかったはずだが。」

「二年前ヴェルス帝国に来た魔族、あの時残っていた物を採取したのだ。」


ヴェルス帝国に来た魔族というと俺と師匠が戦った時の魔族のことだろう。俺は『煉獄門(パーガトリー・ゲート)』を使用してルシェという魔族を《魔剣フルンティング》と共に消し去った。たしか師匠が戦った方の魔族は自爆をしたということを聞いた。だから血液などは残っていないと思っていたが確証があるわけではない。


「なるほど、魔人に関することはわかった。それでどうやって人間に戻すんだ?」

「簡単な話、血液を全て人間の物に戻せばいい。時間はかかるが人間に戻ることはできる。さてお話はここまでにしよう。」

「そうだな。すでにお友達も準備ができているようだ。」


俺達が会話をしている間に周りを取り囲むように人が集まっていた。人数は19人コンバットを含めれば20人ということだ。バーンの言っていた死体の見つかっていない軍人達の人数と一致している。それに全員魔人と遜色ない様な不自然な魔力を感じる。これはザザに感じた物と同じ物だ、ザザで実験した後に自分達にも施したというわけか。だがザザほど魔人に近いという感じではない。一人でこの人数を相手にするのは流石に骨が折れるが。


「仕方がない。この研究所、いや迷宮(ダンジョン)も解放してもらわなければな。」


◇◇◇◇


アリア達はユーリがどこかへ消えてしまった後、何か痕跡は残っていないかと周辺を探す。戦闘を行っていないため魔法的な痕跡は何も残っていない。ユーリが意図的に何かを残していない限りは。


「ユーリなら絶対に何かの痕跡を残しているはず。」

「だが魔力は何も感じねぇ。」

「では目印でもつけているのでしょうか?」

「そこまでわかりやすいと相手に気付かれる可能性があるでござるよ。」


わかりやすく目印をつけるとコンバットにもそれを気付かれてしまう。とすれば自分達にしかわからないように痕跡を残しているはずだ。アリアは頭を働かせる。そしてふとあることを思いつく。


「コーデリア《副技能(サイドセンス)》を!」

「わかった…。」


コーデリアは自身の《副技能(サイドセンス)》を発動し集中する。するとわずかではあるがこの辺りに転々と水滴が地面にしみ込んでいることがわかった。しかし偶然この辺りに水滴が落ちたかもしれない。コーデリアの《副技能(サイドセンス)》では魔法を使用して出た水か雨が降ったことによる水かの判断は明確にできる。それは魔法を使用していれば魔力の痕跡が残るからである。しかし飲み水を零したかどうかと自然な雨の違いは明確には判断できないのだ。水の量から判断しているだけで水そのものの違いまではわからない。あくまでも魔力探知に近い《副技能(サイドセンス)》ということである。


「水の…跡が…ある。でも…。」

「ユーリが残したものかどうかはわからないってことか。」

「昨夜雨が降ってましたもんね。今日は晴れていますが、乾ききってなかったという可能性もあるということですか。」

「どうするでござる?」


このままではユーリを追えなくなってしまうと思ったアリアだが、あることに気付く。転々と散っている水の中に少しだけ乾ききっておらず濃い部分があった。そして微かだが薬品の様な匂いを感じた。


「コーデリアここ!これ水じゃないんじゃないかな?」

「たしかに…これは…水じゃない…。恐らく…《回復薬(ポーション)》。」

「なるほど。ってことはこれは間違いなくユーリが残したものだな。じゃなければこんなところに新しめの《回復薬(ポーション)》なんて零れてるわけねぇ。」

「この後を辿れば…!」

「ユーリの居場所がわかるはず!」


零れていたものはユーリがわざと零した《回復薬(ポーション)》であった。これならば昨日振った雨で湿った地面の部分と見分けがつかないしコンバットに気付かれないだろう。そうユーリが考え残した物であった。


「ランマ。この中で一番早いのはランマだから急いでエーラ達のところに戻ってこのことを伝えて来て。私達の魔力を追えば居場所はわかるはずだから。」

「了解したでござる!」

「それじゃあ行こう!」


アリア達はユーリをランマは援軍をとそれぞれ別れて先へと進むのであった。


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