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第二百十七話 黒い甲冑の騎士

「落ち着けランマ!」

「ふっ!」


俺とマルクさんの二人掛かりでランマを押さえつける。明らかに正気ではないのもあるが、普段のランマの力ではない。呪いのせいで力もあがっているのだろうか?とはいえ俺とマルクさんの二人で抑えられないほどではない。今のうちにアリアに呪いを解呪してもらわなければ。


「アリア!」

「『聖なる光(ホーリー・ライト)』!」

「ウガァ……。」


ランマから黒い靄が取り払われたかと思うとその場で気を失う。どうやら解呪には成功したようだった。ランマはゆっくりと目を開ける。


「こ、ここは…」

「屋敷だよ。ランマ一体何があったんだ?」

「拙者ついに黒い甲冑の騎士を見つけたでござる。」

「本当か?!」


黒い甲冑の騎士、以前大和国の《遊郭》でランマが姉と慕っているハルさんに出会った。彼女は黒い甲冑の騎士に遭遇し呪いに苦しめられていた。幸いアリアがその時に戦闘の中で《聖》属性の魔法を手に入れることができたために呪いを解くことができた。それからランマは黒い甲冑の騎士を探していたのだがまさか逆に呪いにかかってくるとは。


「それでどこで見つけたんだ?」

「ヴェルス帝国でござる。」

「ヴェルス帝国か…。」


ヴェルス帝国、かつて魔族に襲われ《制限失薬リミットロスト》によって多くの者が能力を失ってしまった国である。しかし俺達も一緒に戦い魔族を倒し、今で第二王女であるエーラ・ヴェルスを中心に徐々に再建していっていると聞いた。


「それでランマが返り討ちにあうほど強かったのか?」

「いや、厳密には戦いにはなってないでござる。拙者が話しかけ刀を抜いたと思ったら意識を失って…気づいたらここにいたでござる。」

「じゃあここまでのことを覚えていないのか。」

「まったく…。」


黒い甲冑の騎士の目的はわからないが、ランマの力を恐れて戦闘になる前に呪いをかけたのだろうか?呪いは様々な条件があるほど強力な物になると聞く。しかし特別な何かをされたわけではないようだし。ハルさんの時もそうだったがよほど強力な呪いの使い手なのだろうか?


「とにかく今は安静にして休まんだ。」

「すまないでござる…。」


今はとにかくランマを休ませることが先だと考えベットへと運んだ。しかし黒い甲冑の騎士を野放しにしておくと何かよくないような気がする。そもそもハルさんの様に他にも呪いに掛かってしまっている人が他にもいるかもしれないしな。明日シャーロットに相談するか。


「復活したでござる!」

「元気になってよかったよ。とりあえず今日シャーロットに黒い甲冑の騎士のこと相談してくる。また一人で飛び出していくんじゃないぞ。」

「大人しくまってるでござるよ。」

「アリアちゃんと見張っててくれ。」


俺はアリアにランマを任せて城へと向かった。ついでにコーデリアとジェマにもそろそろ迷惑をかけないようお暇するように言いに行こう。二人は騎士団長達と戦っていないから、治療のために城へ騎士団長達が滞在している間二人も泊まっているのだ。そろそろ騎士団長達も自分の修行に入るだろうから戻るように言わなければ。


「というわけなんだよ。」

「そんなことがあったのですか。」

「黒い甲冑の騎士ですね。ランマ様に言われて以来、私共の方でも調査を進めておりましたが中々情報がありませんでした。」

「うーむ、それなのにどうしてランマは出会うことができたんだろう。」

「ランマ目当てだったという線はどうでしょうか?」

「そうだね。ないとは言い切れないけどどうしてという疑問の方が大きいかな。」


俺はシャーロットとカルロスにランマのことを話に来た。たしかにランマを狙って黒い甲冑の騎士が接触してきた可能性もあるが、目的がよくわからない。自分を狙っていることをどこかで聞いてやられる前にやったということなら考えられなくもないが。とはいえ今まで情報がなかったのだからこれまで通り身を隠して入れば済んだ話ではないだろうか。


「ちなみにヴェルス帝国の方は?」

「特に変わりないと報告を受けていますね。復興は順調に進んで今では元通りとまで言わないまでも活気のある国に戻っていますよ。軍は潰れてしまいましたが今は冒険者がたくさん集まるのでギルドを利用して魔物退治や護衛任務を請け負っています。セルベスタ王国からも依頼を出したりしていますよ。」

「へぇーそうなんだ。」

「逆に言えばそれだけ人が多く集まれば隠れやすいとも言えますが。」

「そうは言っても冒険者だってちゃんと身分を証明されているわけだし、明らかな不審者であれば衛兵に止められるだろうし。」

「なんらかの方法で紛れ込んでいるのでしょうか。」


いくらヴェルス帝国に多くの冒険者がいるからといってそう簡単に不審者が出入りできるわけではない。となると黒い甲冑の騎士は冒険者である可能性が高い。もしそうなのであればカルロスの調査で見つけられないはずはないと思うが。


「なら行ってみればいいじゃねぇか。」

「私も…そう思う。」

「ジェマ、コーデリア。それにアザミ。」

「こんにちは。」


俺達の会話を遮り部屋の中に入ってきたのはジェマとコーデリアであった。それと二人の後ろにはアザミが付いてきていた。二人の言う通り俺も同じことを考えていた。いっそのことヴェルス帝国に行ってみるしかないか。魔族との戦いもあるがこのまま放置しておく方が何かよくない気がする。それにランマも気が気ではないだろう。貴重な戦力であるのだから魔族との戦いに集中できるようこの問題をなんとかしてあげたい。


「よし!ちょっと行ってみるか!」

「そうこなくっちゃな!もちろんアタシは行くぜ!」

「私も…行く…。」

「私も同行させていただいていいでしょうか?」

「良いけどアザミ大丈夫か?」

「はい!この間の魔族との戦いから少しづつ力が溢れるのを感じるんです!皆さんの力になれると思います!」

「それは心強いな。」


ワメリとの戦闘の中で俺はアザミの《雷霆の勇者》の力を引き出しバリオンの幻影を倒すことができた。その影響からかどうやらアザミは《雷霆の勇者》としての能力が覚醒したようだ。たしかにアザミからはこれまでとは違った雰囲気の魔力を感じる。魔力そのものが変わったわけではないが力に満ち溢れているという感じだ。


「とりあえず一旦俺の屋敷まで行こう。それじゃあシャーロット、ヴェルス帝国の方に連絡よろしく。」

「はい、気を付けてください。」

「大丈夫大丈夫。そうそう魔族と戦うことにはならないよ。」

「こういう展開だといつも何か起こるのですが…。」


最後にシャーロットが何か言っていた気がするがまあ気にしないでおこう。俺とジェマ、それにコーデリアとアザミあとはアリアくらいだろうか。ランマには休んでいて欲しいが付いていくといいそうだな。俺は皆を連れて屋敷へと戻った。


「黒い甲冑の騎士を探しにヴェルス帝国まで行ってきます。」

「そういうことでしたら留守はお任せください。」

「アリアももしもの時のために《聖》属性が俺意外にも必要だから頼むよ。」

「うん、わかったよ。ランマはどうするの?」

「できたらこのまま寝ていて欲しいけど…。」

「ちょっと待つでござる!!!」


マルクさんにヴェルス帝国に向かうことを伝えアリアにも了承を得たところでランマに黙って出ていこうとしたがいつの間にか盗み聞きされていたようだった。


「拙者は全然元気でござる!今度はやられないでござるから!」

「わかった。その代わり無茶はなしだぞ。ここのところいつものランマらしくなかったぞ。」

「す、済まないでござる。仇を見つけたと思ったらいてもたってもいられなくて…。」

「仇ってハルさんのこと?」

「実はまだ皆に喋っていなかったことが一つだけあるでござる。」


たしかにランマは呪いを受けただけで特に怪我をしたわけではないから元気ではある。しかしここのところのランマの様子はおかしかった。黒い甲冑の騎士の情報があったからだろう。結果的に見つけることができたのは間違いないが一度やられた手前余計に躍起になっているのではないかと俺は思った。だがランマ曰くまだ俺達に話していないことが何かあるらしい。


「黒い甲冑の騎士はハル姉のことだけじゃなくて、拙者の育ての親である山田浅右衛門を殺した相手かもしれないのでござる。」

「たしかランマは幼いころに捨てられて将軍家の処刑人として働く前までハルさんと過ごしていたんだっけ。」

「そうでござる。その後拙者の剣の腕を見込んで山田浅右衛門、義理の父上に拾ってもらったでござる。そうすればハル姉に楽をさせてあげられると考えたからでござる。」


育ての親、山田浅右衛門か。ランマはツネヨシ将軍の前の将軍の元で処刑人として罪人を殺していた。元々その仕事はその親である山田浅右衛門から教えられたことだろう。でもよくよく考えてみればランマがいかに剣の腕があるからといって処刑人をやらせていたのは疑問があった。


「拙者は剣の腕を磨きつつ、処刑人としての仕事も教えてもらっていたでござる。しかしある時突然父上は姿を消したでござる。拙者は父上の後を継いで処刑人の仕事を任されたでござるよ。」

「そうだったのか。うん?姿を消したんだったら殺されたというわけじゃないんじゃないか?」

「前将軍は幼い拙者のために姿を消したという嘘をつき処刑人の仕事に専念させたのでござるよ。仕事をすればいつか帰ってくると。だけど最近山田浅右衛門の死は呪いによるものだったという記録が見つかったとツネヨシ殿から教えてもらったでござる。」


話が見えてきた。つまりこれまで山田浅右衛門は行方不明ということにされていたが本当は呪いにかかって死んでいた。しかしランマを上手く扱うために前将軍リューマはそれを黙っていたのか。ジュウベエといいドウマといい操られていたから仕方がないが少しやりすぎではないだろうか。いや彼らも魔族の被害者であるか仕方ないか彼らが悪いわけではないのだ。呪いということは黒い甲冑の騎士が関わっている可能性もあるということ、だからランマはあんなに必死になっていたのだな。義理とはいえ育ての親を殺したかもしれない相手だ。

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