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第二百十五話 亜属性

アッシュは元々魔力が少なかった。故に旧種魔族であるにも関わらず、得意としている魔法が存在しなかった。だが元来より努力を苦と思わない性格からか肉体と技術のみを鍛え続けていた。ある時、そんな自分に合うのではないかと授けられた剣があった。それが《亜剣レブナント・ブレード》であった。


「はっ!」

「おらぁ!」

「ふにゃ!」

「ふっ!」


クリス、セシリア、ブランシェ、オリバーは魔法・魔力なしでアッシュへと飛び掛かる。しかしアッシュはそれらを全て斬り伏せる。そしてセシリアの《聖剣ガラティーン》を警戒してか執拗にセシリアを狙い続ける。セシリアは防御の姿勢を取るので精一杯だ。魔法が無駄であるとわかっていても、アッシュの動きを制限させることができると考えアルフレッドとセドリックは魔法を放つ。


「『地獄炎の斧ヘルフレイム・アックス』!」

「『水の球(ウォーター・ボール)十重(ディカプル)』!!!!!!!!!!」

「『断魔・十字斬』」


アッシュに二人の放った魔法が襲い掛かる。セシリアに攻撃するのを辞めてその場に立ち止まり、《亜剣レブナント・ブレード》を十字に斬る。二人の魔法はそこに吸い込まれるように導かれると消滅した。そしてその衝撃はアルフレッドとセドリック二人に襲い掛かる。


「ぐわぁ!」

「うぉ!」

「アルフレッド団長!セドリック団長!」

「『ダーク・ブレード・バースト』」


さらにアッシュが《亜剣レブナント・ブレード》を空中で振ると黒い塊の様な物がセシリア以外の三人に襲いかかった。セシリアは今のは魔法であると感じた。それも良く知っている自分が好きではない相手の属性だ。最近も同じような感情をユーリに対して感じたところである。


「今のは闇属性の魔法か?!」

「…俺は魔法が使えない。今の技は《亜剣レブナント・ブレード》自身の魔力を使用した技だ。闇属性の中でも《亜》属性と呼ばれる魔法のな。」

「《亜》属性だと…?」


《亜》属性という物の存在は知らなかったセシリアだが、自分の《聖剣ガラティーン》もユーリの《聖剣クラレント》も《聖》属性が付与される。それと同じようにアッシュの剣にも《亜》属性という物が付与されるのだろうということが理解できた。セシリア以外の騎士団長達は気絶している。そしてどんどん魔力がなくなっているのがわかった。意識を失うと魔力がなくなるペースが尋常じゃなく早くなっている。魔力を全て失ったからといってすぐに命の危険があるわけではないが、これから先魔法を発動する際に障害が残り魔法を使用できなくなる可能性すらあるのだ。セシリアは出し惜しみはなしで全力を出さなければいけない相手だと覚悟した。《聖剣ガラティーン》に魔力を込めるそして自身の最大の技を放つ。


「うぉぉぉ!!!『聖剣(ガラティーン)雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』!」

「『無影無踪』」


セシリアの《聖剣ガラティーン》と《亜剣レブナント・ブレード》が激しくぶつかり合う。だがセシリアの方が徐々に押され始めている。《聖》属性は《亜》属性と拮抗出来ているが攻撃力を上げている『雷撃一閃ライトニング・ストラッシュ』の方は無力化されてしまい完全に負けてしまった。セシリアは後方へと吹き飛ばされる。もう魔力が残っていない、万事休すかと思ったその時ある一人の魔法使いが現れた。魔女ともいえるその様相はよく覚えのある相手であった。


「待ちなさい!」

「ディ…ディアナ…。」

「お前が《魔王》様の衣服を持っているな。返してもらおう。」


アッシュがそういうとディアナに向かって襲い掛かる。ディアナはすぐさま距離を取る。アッシュも相当な速さではあるがディアナはそれを上回っている。セシリアはそれを見て驚いたがすぐにその正体がわかった。あれは影を使って瞬間移動をしているのだ。短い距離ではあるが影に自分を引っ張らせることで疑似的な瞬間移動を可能としているのだ。


「そう慌てないの。あなた達の目的はこれでしょ。」

「………。」

「な…何を…。」


ディアナは魔法袋(マジック・ポーチ)から《迷い人》の衣服つまり《魔王》の衣服を取り出しアッシュの前へと差し出す。セシリアはなぜディアナがそんなことをしたのか理解できなかったが今の状態では動くこともできないためどうすることもできなかった。アッシュはそれを見て少し考えたあと《亜剣レブナント・ブレード》を構える。


「『ダーク・ブレード・バースト』。」

「きゃぁぁぁ!!!」

「…これは貰っていく。」


アッシュもまたディアナの狙いがわからずともとにかく《魔王》の衣服を回収できれば良いと考えディアナを戦闘不能にさせ《魔王》の衣服を掴む。そこにリーモを倒したシャーロット達が駆けつけてきた。


「これは一体?」

「騎士団長達が全員やられている?!」

「あ、あいつ…。」


騎士団長達の元に駆け付けたシャーロット達は驚いていた。セルベスタ王国の最高戦力である騎士団長達が全員やられている。それに魔力をほとんど感じない。このままでは危険な状態である。早く何とかしなければと思いそれぞれ戦闘態勢に入ろうとするが力が抜ける。全員その場に倒れてしまった。


「こ、これは…」

「魔力が吸われている?」


アッシュの持つ《亜剣レブナント・ブレード》、それに《魔王》の衣服の効果によって魔力が消失させられ吸収されるという二十苦になっていた。リーモとの戦闘で消耗している状態でなければここまですぐに倒れることはなかっただろうがどちらにせよ長くは持たなかっただろう。そこにワメリがやってくる。


「アッシュ様。どうやら目的の物は回収できたようですね。」

「ああ、リーモはやられたようだな。」

「ええ、戻りましょう。」

「皆さん!」


そこにワメリと先程まで戦っていたユーリ達が駆けつけてきた。ユーリ達も騎士団長や皆の異変に気付きすぐに追いかけてきた。しかしこの状況は一体どういうことなのか理解するのには少し時間がかかった。その間にアッシュとワメリは再び黒い穴を出現させて今にも帰ろうとしている。


「それではまた会いましょう。ユーリ・ヴァイオレット。」

「ワメリ・ミーム!待て!」


そういうとワメリとアッシュは黒い穴の中へと消えていった。だが脅威はさったのだとにかく今はここにいる皆の治療を一刻も早くしなければいけない。


「アリア、皆に『治療魔法(ヒール)』を!ジェマは俺を通して魔力の供給を皆にしよう。」

「わかった!」

「任せろ!」


ユーリは魔力切れになってしまっている皆のために『魔力供給(マジック・フィード)』で魔力を供給した。通常ジェマの無尽蔵の魔力は他人に譲渡することができないが、《大地の勇者》の力を扱うことが出来るユーリであれば変換することが出来る。応急処置がすめば危険な状態を脱することができるだろう。その後ユーリ達は皆を王城へと運んだ。幸いなことにジェンナとディーテさんがいることもあり速やかに治療は行われた。あれから三日ほど経ち、騎士団長達シャーロット達も無事に意識を取り戻した。


「《亜》属性ですか…。」

「ああ。《聖》属性でしか対抗することができない属性らしい。」

「おまけにこっちは魔力も奪われるだなんて。」

「全員生きていたのが奇跡だな。まああいつらの目的は達成されてしまったが。」


俺が後から聞いた話によると途中で師匠が現れて奴らの目的であった《魔王》の衣服を差し出したらしい。なぜそんなことをしたのかというと《魔王》の衣服にある物を仕込んでいてそれを魔族に渡すことが目的だったとか。その詳細を聞くためにこうして皆が目覚めるのを待っていたのだ。俺達は師匠たちのいる部屋まで移動する。シャーロット達は魔力を奪われただけだが騎士団長達と師匠は負傷をしていたので同じ部屋で治療を受けている。部屋の前まで行くと中からなにやら揉めている声が聞こえてくる。俺は扉を開けて中に入る。声の主はセシリアさんと師匠であった。


「だからなぜみすみす魔族にあれを渡したのかと聞いているんだ!」

「うるさいわねぇ!ユーリ達が来てから話すって言ってんでしょ!」


二人は争っていた。実際にはただの口喧嘩なのだが二人共病み上がりだというのによくやる。他の騎士団長達は皆耳を塞いでいる。なぜ二人はこうも犬猿の仲なのだろうか。学生時代からこうだったというがここまでなるものなのだろうか?まあそれは置いておいてそろそろ本題に入らなければ。


「二人ともそこまでで!俺達は全員集まったので経緯を話してもらっていいですか師匠。」

「「ちっ!」」

「あれにはディミスが作った特殊な発信機が付けてあるの。だから魔族の居場所がわかるかもしれないと思ってわざと渡したのよ。あれは存在するだけで人の魔力を奪い続けるということがわかったからどこに保存していても誰かが影響を受けてしまう可能性があるしね。私の魔法でもそれを抑えることはできなかったから。」

「そういうこと。」


師匠が話し終えるといつの間にかディミスさんが部屋の中に入って来ていた。要するにわざとあれを渡すことで魔族の居場所を突き止めることができるということだ。これで魔族に攻め入ることができる。


「まあ結局無駄だったみたいだけどね。発信機はどこにあるのかわからないんだ。」

「は?」

「いやだからわからないんだよね。ハハハ。」


セシリアさんは今にも怒り狂いそうな顔をしている。また怒鳴り声をあげるつもりだろうがその前に俺の疑問を聞いておきたい。


「その発信機はどの程度の距離まで効果があるんですか?」

「そうだね。おそらくこの大陸全土は余裕だよ。」

「では大陸外ならわからないということですね?例えば海の向こうとか。」

「なるほど、そういうことか。」


あくまでも仮設ではあったが魚人族に聞いた話を参考に建てた仮説である海の向こう側。そこに魔族はいるのではないかというものだがもしかしたら本当にそうなのかもしれない。


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